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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査64巻2号

2020年02月発行

雑誌目次

今月の特集1 検査でわかる二次性高血圧

著者: 山田俊幸

ページ範囲:P.109 - P.109

 本特集は2019年12月号の第2特集「高血圧の臨床—生理検査を中心に」の第2弾の位置付けとして企画されました.第1弾では,新しい高血圧診療ガイドラインが紹介され,診療の基本となる生理検査が取り上げられています.今回は,まず血圧調節の基礎を学んでいただきます.そして,高血圧といえば原因を特定できない本態性高血圧が多いわけですが,臨床検査がその診断に大きな役割を果たす二次性高血圧を特集しました.

 二次性高血圧のなかでは最も多く,慢性腎臓病を予防,治療するうえで標的となる腎実質性高血圧,検体検査とともに画像診断が診断に必須となる腎血管性高血圧,原発性アルドステロン症・Cushing症候群・褐色細胞腫が代表的なものとなる内分泌性高血圧,肥満における高血圧の機序が注目されているメタボリックシンドロームを解説していただきます.最後に,検査技術の進歩により今後普及が見込まれるアルドステロンのnon RIA測定法を取り上げました.

 高血圧はcommon diseaseの代表格です.検査異常とともにその病態をしっかりと理解しましょう.

血圧調節因子

著者: 下澤達雄

ページ範囲:P.110 - P.116

Point

●血圧調節は血管抵抗を制御する因子と体液量を制御する因子からなる.

●短期の血圧調節と長期の血圧調節にかかわる因子がある.

●人間の進化の歴史,生存と密接に関連し,現代社会生活からすると高血圧発症因子となるものもある.

腎実質性高血圧

著者: 柿添豊 ,   向山政志

ページ範囲:P.118 - P.123

Point

●腎臓は生体内のナトリウム(Na)バランスや血圧の調整に重要な臓器であり,その機能異常により腎実質性高血圧を生じる.

●腎実質性高血圧は高血圧全体の2〜5%を占めるとされており,本態性高血圧を除く二次性高血圧のなかでは頻度が高い.

●わが国では成人の8人に1人が慢性腎臓病(CKD)に罹患しており,これらは進行すると腎実質性高血圧の原因となる.

●CKD患者では高血圧,血圧の日内リズムの異常などの脳心血管病(CVD)の危険因子が高率に存在し,CVD発症のリスクが高い.CKDの早期発見・治療は末期腎不全への進行抑制のみならず,CVD,全死亡の抑制において極めて重要である.

●CKDの早期発見のため,全ての高血圧患者で検尿と腎機能評価を行う必要がある.

腎血管性高血圧

著者: 熊谷裕生 ,   福永継実 ,   佐藤博基 ,   森和真

ページ範囲:P.124 - P.129

Point

●腎動脈の狭窄によってその末梢の糸球体の入口からレニンという酵素が分泌されて,血漿レニン活性(PRA)が増加する.血漿活性型レニン濃度(ARC)という,迅速に結果が出る測定法もある.

●レニン増加によりアンジオテンシンⅡ(AngⅡ)が産生されて,全身の血管を収縮させて高血圧となる.血漿アルドステロン濃度も上昇して,血清ナトリウム(Na)濃度は上昇し,血清カリウム(K)濃度は低下する.

●このレニン-アンジオテンシン-アルドステロン(RAA)系の亢進による血圧上昇機序は,片側性の腎動脈狭窄症例でみられる.一方,両側性の腎動脈狭窄による腎血管性高血圧では,有効循環血漿量が増加してPRAや血漿アルドステロン濃度が高くない症例もあるので,注意が必要である.

●腎血管性高血圧の診断には腎機能障害患者が多いので,ヨード剤を必要としないMRアンギオグラフィと腎動脈ドップラーエコーが有用である.

内分泌性高血圧

著者: 佐藤敦久

ページ範囲:P.130 - P.138

Point

●内分泌性高血圧は代表的な二次性高血圧であり,内分泌器官からホルモンが過剰に分泌され高血圧を呈する.見逃して漫然と治療を行っていると,血管合併症が進行する.

●原発性アルドステロン症(PA)は頻度が高く,年齢,血圧が同等の本態性高血圧患者に比べ,脳心血管系の合併症が3〜5倍多いことが問題である.

●Cushing症候群(CS)はまず臨床症候から疑うが,高血圧,糖尿病(CSの非特異的症候)などの診察時に,本症の特異的症候を見逃さないようにすることが大切である.

●褐色細胞腫,パラガングリオーマは,遺伝子異常を認める例が30〜40%もあることが明らかにされた.常に悪性の可能性を考え治療をするが,悪性褐色細胞腫,パラガングリオーマの治療は極めて困難である.

メタボリックシンドロームと高血圧

著者: 齋藤重幸

ページ範囲:P.140 - P.145

Point

●メタボリックシンドローム(Mets)は内臓脂肪蓄積型肥満(腹部肥満)を起点として血圧上昇,耐糖能異常,脂質代謝異常が集積する病態であり,易動脈硬化惹起状態を示す.

●腹部肥満では脂肪細胞より分泌される生理活性物質などによりインスリン抵抗性が惹起され,代償性の高インスリン血症が生じる.

●インスリン抵抗性は直接,あるいは高インスリン血症を介して耐糖能障害,血圧上昇,脂質代謝異常〔高トリグリセライド(TG)血症,低HDLコレステロール血症〕をもたらす.

●高インスリン血症では交感神経活性亢進などの血管抵抗増加と腎ナトリウム(Na)再吸収亢進を介する体液量の増加から血圧上昇が起こると考えられる.

レニン,アルドステロンのnon RIA測定

著者: 櫓曜 ,   松田真次郎 ,   伊逹睦廣

ページ範囲:P.146 - P.151

Point

●化学発光酵素免疫測定(CLEIA)法を原理とし,全自動,迅速(約10分)で測定可能な活性型レニン濃度(ARC),アルドステロン測定法が開発された.

●「高血圧治療ガイドライン2019」の原発性アルドステロン症診療の手順にARCが併記された.

●検査時間の迅速化に伴い病院内測定が可能になることで,通院回数の低減など,患者の医療の質を高めることが期待される.

今月の特集2 標準採血法アップデート

著者: 河合昭人

ページ範囲:P.153 - P.153

 採血のガイドラインである「標準採血法ガイドライン」が採血に関連する近年のエビデンスの蓄積や,採血器具などの採血法をめぐるわが国の状況の変化に対応した結果,いくつかの重要な部分について今般2019年に改訂されました.この機会に読者の施設で実施している採血方法に誤り(準拠していない部分)はないか,ガイドラインに沿って確認できるよう提示しました.そして,ガイドラインでは詳細に記述できていない実際のテクニカルな部分についても,執筆者の先生方の経験を生かし,図や写真を多く配置した内容となっています.また,採血時に起こりうるさまざまな緊急時の対応について,血管迷走神経反応(VVR)を中心に患者の観察のポイントを解説しました.

 採血に従事している方はもちろんですが,そうでない方も知識のアップデートとしてご一読いただければと思います.皆さんのスキルアップの一助となれば幸いです.

GP4-A2からGP4-A3になって

著者: 柴田綾子

ページ範囲:P.154 - P.158

Point

●「標準採血法ガイドライン(GP4-A3)」では,推奨の強い順に①“〜しなければならない”,“〜してはならない”,②“〜する”,③“〜するのが望ましい”という表現になっている.

●ホルダー採血法と注射器採血法の選択基準が明確になり,ホルダー採血(翼状針採血)のメリットがエビデンスとともに明記されている.

●採血時の患者観察と緊急時の対応について,考えられる採血合併症が追記され,わかりやすく解説されている.

●採血合併症の具体的な予防法の例や採血手技が血液検査の測定値に与える影響について,データに基づいて解説されている

採血方法の選択の実際

著者: 井本清美

ページ範囲:P.159 - P.167

Point

●採血による合併症には,神経損傷や血管迷走神経反応(VVR)などが挙げられる.

●正中神経損傷は,感覚障害と運動障害を生じて重症化する可能性がある.

●解剖学的な理解に努めることは,安全な採血を行ううえで大切である.

●安全な採血を行うために,刺入角度を大きくしすぎないことが大切である.

採血手順

著者: 佐々木泰信

ページ範囲:P.168 - P.172

Point

●翼状針の持ち方は,針先端の刀面を真上に向けることと,穿刺後血液の逆流が確認できることの両立をさせる必要がある.

●チューブ内の容量(デッドスペース)が採血量に影響することを念頭に置いておく.

●針刺し防止機能を熟知して使用する.

採血手技に関する諸注意

著者: 荒木秀夫

ページ範囲:P.174 - P.179

Point

●採血管の順序は検査値に影響を及ぼすことがないように注意すべきであり,検査項目と抗凝固剤の組み合わせを考慮して採血管の順序を決めることが重要である.

●溶血の防止は注射器(シリンジ)採血で円筒(押し子)を強く押して,血清分離剤に血液を当てることで発生するケースが多い.分注は,陰圧に任せて行うことで回避できる.

●採血手技が血液検査の測定値に与える影響は,通常とは異なる操作を実施した場合に検査値に影響を及ぼすことがある.イレギュラーな事象の発生時には,検査担当者へ申し送ることが重要である.

患者の観察と緊急時の対応

著者: 五十嵐岳

ページ範囲:P.180 - P.188

Point

●採血副作用は100人に1人生じている.

●採血副作用のうち,最も多いのは血管迷走神経反応(VVR)である.

●VVRには重症,軽症,遅発性がある.

●採血時神経損傷は訴訟になりやすい.

●過換気症候群はまず不安を取り除くことが必要である.

海外の採血事情

著者: 後藤英一

ページ範囲:P.190 - P.195

Point

●2019年5月に,米国臨床検査標準協会(CLSI)から,ガイドライン「GP33 Accuracy in Patient and Specimen Identification」の改訂版が発行され,2019年3月に改訂された国内の「標準採血法ガイドライン(GP4-A3)」と同様に,採血手順,患者/検体照合における順守事項の表現が見直されて詳述されている.

●海外でも,患者/検体照合に関して,バーコード,RFID(radio frequency identification),生体認証技術が広く用いられている.

検査説明Q&A・47

トレッドミル運動負荷試験について,評価方法や注意点を教えてください

著者: 飯田圭

ページ範囲:P.196 - P.200

■運動負荷試験の意義

 人間は絶えず行動しており,心臓に関する臨床症状の多くは運動に伴って惹起される.冠動脈疾患はもちろんであるが,心不全・不整脈も運動と密接に関係しているため,運動負荷試験の重要性は論をまたない.

学会印象記

第57回大韓臨床病理士協会総合学術大会・国際カンファレンス(57th KAMT Congress)—韓国での邂逅

著者: 鈴木敦夫

ページ範囲:P.202 - P.204

 本大会は,大韓臨床病理士協会(Korean Association of Medical Technologists:KAMT)が主催する,年に一度の学術集会です.日本における日本臨床衛生検査技師会(Japanese Association of Medical Technologists:JAMT,以下,日臨技)主催の日本医学検査学会に該当します.本大会では,年次学術集会に合わせて,アジア各国を中心とした臨床検査技師(に該当する医療職)を招聘し,国際カンファレンスも同時開催されました.

 日本からは,日臨技の全面的なバックアップをいただき,総勢50名の会員が参加しました(写真1).2019年度の本大会の総参加者数は3,024名で,このうち94名が日本をはじめとした台湾やシンガポール,フィリピンからの海外参加者であり,日本の参加者は海外参加者の半数以上を占めていたことになります.2019年は日韓交流40周年となる記念の年でもあったことから,来賓として歓迎していただきました.

INFORMATION

第20回自動呼吸機能検査研究会関東部会講習会

ページ範囲:P.116 - P.116

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目次

ページ範囲:P.106 - P.107

書評

著者: 光嶋勲

ページ範囲:P.152 - P.152

書評

著者: 門田淳一

ページ範囲:P.201 - P.201

「検査と技術」2月号のお知らせ

ページ範囲:P.108 - P.108

バックナンバー「今月の特集」一覧

ページ範囲:P.188 - P.188

次号予告

ページ範囲:P.205 - P.205

あとがき

著者: 佐藤尚武

ページ範囲:P.208 - P.208

 読者の皆さまが本号を手にするのは,令和になって初めて迎えたお正月から一月が経過した頃だと思いますが,この原稿は令和元年が残り1カ月となった時期に書いています.令和元年の秋は“即位の礼”が執り行われたことで人々の記憶に残ると思われます.“即位の礼”と書きましたが,正しくは“即位礼正殿の儀”です.即位の礼は“剣璽等承継の儀(けんじとうしょうけいのぎ)”,“即位後朝見の儀(そくいごちょうけんのぎ)”,“即位礼正殿の儀(そくいれいせいでんのぎ)”,“祝賀御列の儀(しゅくがおんれつのぎ)”および“饗宴の儀(きょうえんのぎ)”からなり,なかでも“即位礼正殿の儀”は即位の礼の中心といえる儀式で,戴冠式や即位式に相当するとされています.

 一方で,令和元年の秋は雨天が非常に多く,台風被害が甚大だった季節としても記憶に残りそうです.即位礼正殿の儀も雨天でしたし,祝賀御列の儀は台風被害に配慮され,3週間ほど延期になりました(そのおかげで晴天に恵まれましたが).本誌の編集委員のなかにも,台風と大雨の被害に遭われた方がいました.北陸新幹線も大きな被害を受け,完全なダイヤの再開は令和2年に入ってからになるようです.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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