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雑誌目次

論文

臨床検査65巻6号

2021年06月発行

雑誌目次

今月の特集 典型例の臨床検査を学ぶ

著者: 山田俊幸

ページ範囲:P.597 - P.597

 臨床検査の領域でよく知られた教育手法にRCPC(reversed clinico-pathological conference)があります.検査データと限られた情報のみから病態を推測することによって,それぞれの検査の理解を深める優れた教育手法です.RCPCは病名を当てることが主たる目的ではありませんが,そこまで迫れれば,それはそれで楽しいものです.この時,いくつかの代表的な疾患についての知識があると大変,役に立ちます.

 本特集では,病名からデータという,あえてRCPCと逆のベクトルを採用しました.臨床医に,典型的な疾患がどのような検査値を示すかという観点から,症例を提示しながら基本となる知識を解説いただきました.提示例から臨床医がどのように診断にたどりつくかのプロセスについて学んでいただければ幸いです.

 提示例のデータは典型的ですが,当然,患者ごとに多様なデータが示されるはずです.それぞれの疾患の一般的な特徴も解説いただいたので,さらに理解を深めてください.

急性心筋梗塞

著者: 井上健司

ページ範囲:P.598 - P.601

初診(診察)時症状・所見

 患者は60歳代,男性.午前5時ごろに喉の違和感を自覚した.水分をとったが違和感は改善しなかった.指を喉に入れたら,吐いてしまった.その後も喉の違和感は消えなかったため,耳鼻科を受診した.咽頭ファイバー検査が行われたが,特に異常所見は認められなかった.その日は仕事を休み,自宅で安静を保っていたが,症状が改善しないため順天堂大学医学部附属練馬病院の救急外来を受診した.

 数年前から健康診断で脂質異常と高血圧を指摘されていたが,自覚症状がないため受診歴はなかった.喫煙歴は,以前は20本/日であったが,5年ほど前から禁煙している.アルコールは,毎日,瓶ビール1本を飲んでいた.診察では咽頭所見は軽度に発赤していたが,頸部リンパ腫は触知しなかった.甲状腺も触れなかった.胸部所見は駆出性雑音を聴取するがラ音はなかった.腹部所見や四肢には異常は特にみられなかった.

慢性心不全

著者: 佐藤直樹

ページ範囲:P.602 - P.605

初診(診察)時症状・所見

 患者は50歳代,男性.家族歴に特記すべきことなし.既往として,3年前からかかりつけ医で高血圧に対する加療がされていた.1カ月前から動悸があり,その後,息切れが生じたため近医を受診したところ,当科を紹介され来院した.外来では脈拍数118/分,不整であった.血圧は128/96mmHg,経皮的動脈血酸素飽和度(oxygen saturation of peripheral artery:SpO2)は94%(室気)であった.頸静脈には軽度に怒張があり,下腿浮腫は足背部の両側に軽度に認めた.肝臓は一横指蝕知した.胸部聴診では胸骨左縁第5肋間で中等度の汎収縮期雑音を聴取した.下肺野で軽度のcoarse crackleを聴取した.甲状腺は蝕知しなかった.

細菌性肺炎

著者: 福山一

ページ範囲:P.606 - P.609

初診(診察)時症状・所見

 患者は82歳,女性.基礎疾患に脳梗塞後遺症とAlzheimer型認知症があり,介護老人保健施設に入所していた.前日から38℃台の発熱と右胸痛があり,苦しそうな呼吸をするようになったため当院へ救急搬送された.

 来院時の意識レベルは日本昏睡尺度(Japan Coma Scale:JCS)Ⅱ-10で,血圧110/72mmHg,心拍数110回/分(整),呼吸数28回/分,経皮的動脈血酸素飽和度(oxygen saturation of peripheral artery:SpO2)88%(室内気),体温38.5℃であった.胸部聴診で右肺にcoarse crackles(水泡音)を聴取した.

HIV感染症

著者: 外島正樹

ページ範囲:P.610 - P.613

初診(診察)時症状・所見

 患者は30歳代,男性.既往にうつ病,痔瘻がある.最近,−5kgの体重減少があった.3カ月に及ぶ発熱,咳嗽と呼吸困難感を認めたため近医を受診した.抗菌薬を処方されたが改善せず,夜間に当院の救急外来を受診した.施行した胸部CT検査で両側スリガラス様陰影(図1)を認めたため入院となった.

 血圧120/75mmHg,脈拍95回/分,呼吸数20回,体温38.9℃,酸素飽和度(SatO2)93%.心肺異常なし.リンパ節腫大や肝脾腫大なし.口腔内に白苔を認めた.緊急で施行された喀痰塗抹抗酸菌染色は陰性,新型コロナウイルス(COVID-19) LAMP(loop-mediated isothermal amplification)法も陰性であった.

急性ウイルス性肝炎

著者: 井上貴子 ,   田中靖人

ページ範囲:P.614 - P.618

初診(診察)時症状・所見

 患者は40歳代,男性.既往歴・家族歴に特記すべき事項はなかった.10日ほど前に37℃台の微熱と頭痛を自覚し,近医を受診した.感冒薬を処方されたが症状はさらに悪化し,徐々に食欲がなくなった.数日前から尿の色が濃くなり,今朝会った人から“目が黄色い”と指摘されたため心配になり,当院を受診した.

 診察では,意識清明,体温37.8℃,眼球結膜に黄染あり,皮膚に軽度の黄染ありであった.腹部触診では肝を右肋骨弓下に2横指触知した.

肝硬変

著者: 政木隆博

ページ範囲:P.619 - P.623

初診(診察)時症状・所見

 患者は54歳,女性.全身倦怠感と腹部膨満感があり東京慈恵会医科大学附属病院に来院した.最近の1週間で3kgの体重増加があった.既往歴に高血圧と糖尿病があった.家族歴に特記すべきことはなかった.

 身体所見は,眼球結膜に軽度の黄染があり,腹壁は膨隆しているが,硬度は軟で圧痛を認めなかった.両側下腿と足背に圧痕性浮腫を認めた.羽ばたき振戦は認めなかった.

慢性膵炎

著者: 山﨑正晴

ページ範囲:P.624 - P.627

初診(診察)時症状・所見

 患者は60歳代,男性.既往歴・家族歴に特記すべきことなし.アルコール摂取歴は20歳時から日本酒3合/日であった.喫煙歴は20〜30歳まで30本/日.3年前から食後の心窩部痛,下痢と脂肪便が出現していた.食事摂取量に変わりはないが,3年前から現在までに10kgの体重減少を認めていた.

 診察では,眼瞼結膜に貧血なし.球結膜に黄染なし.表在リンパ節を触知しなかった.腹部は平たん,軟で圧痛はなかった.腸音に異常を認めなかった.

閉塞性黄疸

著者: 多田大和

ページ範囲:P.628 - P.632

初診(診察)時症状・所見

 患者は60歳代,女性.既往歴・家族歴に特記すべきことなし.飲酒歴はなく,内服薬やアレルギーもなかった.1週間前から全身倦怠感が続いており,2日前に腹部の黄染と灰白色便が出現した.症状が改善しないため近医を受診すると,黄疸があるからすぐに大きな病院へ行くようにいわれ,自治医科大学附属病院を紹介された.患者は,いわれてみれば尿が濃いような気がしていた.受診まで発熱や腹痛はなかった.

 診察では眼球結膜および顔面に黄染を認めた.腹部に圧痛はなく腫瘤も触れないが,瘙痒感があるようで,ひっかき傷を多数認めた.灰白色便と無痛性黄疸ということで,まずは癌による閉塞性黄疸を疑った.血液検査をオーダーし,結果が出るまでの間に腹部超音波検査を行うと肝内外胆管の拡張を確認できた.

原発性胆汁性胆管炎および自己免疫性肝炎

著者: 八木みなみ ,   田中篤

ページ範囲:P.634 - P.637

初診(診察)時症状・所見

 患者は60歳代,女性.既往歴・家族歴に特記すべきことなし.自覚症状は特に認めない.健康診断で肝障害を指摘され,受診した.飲酒歴,服薬歴,家族歴にも特記すべき点は認めなかった.体容積指数(body mass index:BMI)は22であった.

悪性貧血

著者: 藤原亨

ページ範囲:P.638 - P.641

初診(診察)時症状・所見

 患者は75歳,男性.食思不振および倦怠感を主訴に来院した.既往歴として2型糖尿病があった(無治療).家族歴・生活歴に特記すべきことはなかった.

 診察上,眼瞼結膜は貧血様,眼球結膜に黄染があり.また,アキレス腱反射の遅延と,足指の感覚の低下を認めた.家族の話によると,白髪は以前から認めており,認知機能に大きな変化はなかった.

急性白血病

著者: 西川真子

ページ範囲:P.642 - P.645

初診(診察)時症状・所見

 患者は40歳代,男性.既往歴・家族歴に特記すべきことなし.2週間前から咽頭痛,37℃台の発熱,四肢体幹の紫斑を認めたため近医を受診した.血液検査で白血球減少および血小板減少を指摘され,東京大学医学部附属病院(以下,当院)を紹介され受診した.

 診察時は意識清明で,発熱や呼吸困難は認めなかった.右上腕,左膝に紫斑,眼瞼結膜に貧血を認めた.表在リンパ節,肝臓,脾臓は触知しなかった.明らかな神経所見は認めなかった.

多発性骨髄腫

著者: 和泉透

ページ範囲:P.646 - P.649

初診(診察)時症状・所見

 患者は60歳代,男性.既往歴・家族歴に特記すべきことなし.ある日の夜間に右膝痛を自覚した.就寝後に激痛となったので,独立行政法人国立病院機構仙台医療センター(以下,当センター)の救急外来を受診した.受診時に39℃の発熱を認めたため,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のPCR検査を行ったが陰性であった.右膝関節炎の診断で当センターの整形外科に入院した.

 ヘモグロビン(hemoglobin:Hb)9.3の貧血(正球性正色素性貧血)を認めた.白血球数(white blood cell count:WBC)は基準範囲内で,C反応性蛋白質(C-reactive protein:CRP)は軽度に高値であった.アルブミン(albumin:Alb)は3.0と低値であった.腎障害はなかった(表1).

DIC

著者: 川杉和夫

ページ範囲:P.650 - P.655

症例1

■症例1の初診(診察)時症状・所見

 患者は70歳代,女性.家族歴,既往歴に特記すべき所見はなかった.2日前から38℃台の発熱と咳嗽が出現したため,昨日,近医を受診した.風邪の診断を受けて解熱剤などを処方された.薬によって一時的に解熱したものの,発熱や咳は持続した.そのため,昨夜遅くに帝京大学医学部附属病院(以下,当院)の救急外来を受診したところ,肺炎が疑われ入院となった.

 入院時は身長155cm,体重54kg,体温38.5℃,血圧122/70mmHg,脈拍96/分(整),呼吸数25/分であった.胸部聴診上,右上肺にコース・クラックル(coarse crackles.肺炎などで聞かれる水泡音)を聴取したが,腹部所見には異常なく,神経学的な所見にも特記すべき所見はなかった.

2型糖尿病

著者: 羽立登志美 ,   大澤春彦

ページ範囲:P.656 - P.660

初診(診察)時症状・所見

 患者は53歳,男性.先月の健診で尿糖陽性を指摘され受診した.自覚症状はなかった.1年前から単身赴任となり,外食の頻度が増え,半年で体重が5kg増加していた.仕事は事務職.喫煙は20本/日,アルコールは機会飲酒程度で,運動習慣はない.高血圧症と脂質異常症があり治療中である.父親に糖尿病がある.身長170cm,体重80kg,血圧145/90mmHg,脈拍65回/分・整,身体所見に特記すべきことはない.

原発性高脂血症(原発性脂質異常症)

著者: 石神眞人

ページ範囲:P.661 - P.667

初診(診察)時症状・所見

 本稿では,多岐にわたる原発性高脂血症(脂質異常症)のうち,典型的な3疾患を扱うこととする.

バセドウ病(Basedow病)

著者: 日高洋

ページ範囲:P.668 - P.671

初診(診察)時症状・所見

 患者は30歳代,女性.既往歴に小児喘息があり,家族歴に特記すべきことはなかった.2週間前から体調不良,動悸,発汗過多,下痢,手指振戦,微熱を認めており,受診した.診察では,びまん性の甲状腺腫大,眼球突出,頻脈(104/分,整)を認めた.

慢性甲状腺炎(橋本病)

著者: 甲賀裕希子 ,   海老原健

ページ範囲:P.672 - P.674

初診(診察)時症状・所見

 患者は25歳,女性.2カ月前から頸部の腫脹を自覚しており,その後,足の重さ,肩こり,集中力の低下が生じていた.この2カ月間で2kgの体重増加がみられていた.既往歴に特記すべきことはなく,家族歴としては母に甲状腺疾患があった.

 診察では,頸部に甲状腺がびまん性にやや硬く触れ,自発痛や圧痛は認めなかった.明らかな腫瘤性病変は触れなかった.両側下腿に軽度の非圧痕性浮腫を認めた.

急性糸球体腎炎

著者: 岡林佑典 ,   横尾隆

ページ範囲:P.676 - P.679

初診(診察)時症状・所見

 患者は37歳,男性.既往歴,家族歴に特記すべきことなし.2週間ほど前に39℃台の発熱,咽頭痛などの感冒様症状が出現し,近医から総合感冒薬と抗菌薬が処方された.症状は一度軽快したが,3日前から全身倦怠感と肉眼的血尿が出現した.また,排尿回数と1回尿量の減少,下腿浮腫も自覚し,3日間で約5kgの体重増加を認めたことから東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科(以下,当科)を紹介され受診した.

 診察では血圧184/108mmHgと高血圧を認めた.また,眼瞼は浮腫状で下腿には圧痕性浮腫も認め,心音でⅢ音,呼吸音で下肺野に湿性ラ音を聴取した.胸部CTでは心拡大と胸腹水貯留を認めた.

急性腎障害

著者: 小丸陽平 ,   土井研人

ページ範囲:P.680 - P.684

初診(診察)時症状・所見

 患者は60歳代,男性.冬季にマンションの裏庭で呼び掛けに反応なく倒れているところを発見され救急搬送された.高血圧と不眠症で近医のクリニックを受診して内服治療していた.腎障害を指摘されたことはなく,搬送1カ月前の血清クレアチニン値は0.77mg/dLであった.

 診察時は意識レベル(Japan Coma Scale:JCS)200,体温30.0℃と低体温があり,心拍数50回/分,血圧132/60mmHg,経皮的動脈血酸素飽和度(oxygen saturation of peripheral artery:SpO2)96%(室内気)であった.右側を中心に体幹と四肢に圧挫痕があり,左側と比較して右上下肢の筋力低下があった.

腎盂腎炎または尿路感染症

著者: 小川拓

ページ範囲:P.686 - P.689

初診(診察)時症状・所見

■現病歴

 患者は40歳代後半,女性.高血圧症と高コレステロール血症のため,普段はスタチン系高脂血症治療薬とカルシウム拮抗薬(降圧薬)の合剤を処方されていた.来院の3日前から排尿時痛と残尿感を自覚していた.来院前日の夜間に突然,39℃台後半の悪寒戦慄を伴った発熱と,腰背部の鈍痛を自覚するようになったため,かかりつけ病院の内科外来を受診した.

全身性エリテマトーデス(SLE)

著者: 黒田毅

ページ範囲:P.690 - P.694

初診(診察)時症状・所見

 患者は54歳,女性.48歳時に子宮筋腫のため子宮を全摘された.子どもは2人で,自然分娩で流産の既往はなかった.51歳時に検診で蛋白尿(1+),血尿なしを指摘され,近医を受診して経過観察されていた.

 52歳時に新潟大学医歯学総合病院(以下,当院)を紹介され受診した.検査の結果,尿蛋白0.8g/Cr,クレアチニンクリアランス109mL/分であった.この際に高血圧を指摘され,アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬(angiotensin Ⅱ receptor antagonist blocker:ARB)の処方を開始された.その後,近医で経過を観察していた.近医へ通院中に両手関節痛が出現し,増強したため,腱鞘炎,手根管症候群の診断で消炎鎮痛薬の処方を受けた.

リウマチ性多発筋痛症

著者: 茂久田翔

ページ範囲:P.696 - P.699

初診(診察)時症状・所見

 患者は70歳代,男性.既往歴として,20年前に大腸癌の治療を受け,再発は認めていなかった.受診する1カ月前から両肩痛が出現した.近医を受診したが,原因の特定に至らず,ロキソプロフェンを処方されて経過観察となっていた.

 当院での初診時,発熱,咳,頭痛,顎破行などは認めなかった.1カ月に2kg程度の体重減少,臥位保持困難なレベルで夜間に増悪する肩痛・腰痛,全身倦怠感,手足の動かしにくさ(こわばり感),起居動作(立ち上がり)困難などの訴えを認めた.診察では肩関節の外転は90°までに制限されており(受動的には挙上可能),両側の三角筋部や上腕二頭筋腱の腫脹・圧痛および右膝関節の腫脹も認めた.一方で,手指や足趾の関節には関節腫脹を認めなかった.浅側頭動脈の拍動は両側とも触知可能であった.

認定・資格取得でスキルを磨こう・10

博士号

著者: 菱木光太郎

ページ範囲:P.702 - P.707

はじめに

 2019年から流行している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によってPCR検査の検査数は増加しており,臨床検査技師の認知度が向上している.医療の目覚ましい発展とともに臨床検査技師の知識や技術の向上,そして高度教育の必要性が高まっており,臨床検査技師養成校は3年制から4年制への改組が進んでいる1,2).さらに,教育協議会に加盟している4年制大学54校のうち81%の44校が大学院を設置しており3),さらなる高度教育を受ける門戸が開かれつつある.

 上記のように環境が整う一方で,意欲的に学ぶ学生がいないことには優れた人材を創出することはできない.また,意を決して大学院で学ぼうと思ってインターネットで検索しても,概要のみが示されているだけであり,大学院生活の実態はみえてこない.

 本稿では,筆者が社会人を継続しながら博士号を取得した過程における経験や実情を述べる.

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目次

ページ範囲:P.594 - P.595

「検査と技術」6月号のお知らせ

ページ範囲:P.596 - P.596

バックナンバー「今月の特集」一覧

ページ範囲:P.618 - P.618

書評

著者: 二木芳人

ページ範囲:P.645 - P.645

書評

著者: 稲垣暢也

ページ範囲:P.649 - P.649

書評

著者: 内海桃絵

ページ範囲:P.695 - P.695

書評

著者: 小谷敦志

ページ範囲:P.700 - P.700

書評

著者: 藤原康弘

ページ範囲:P.708 - P.708

次号予告

ページ範囲:P.709 - P.709

あとがき

著者: 涌井昌俊

ページ範囲:P.712 - P.712

 本稿を執筆している時点での最大のトピックは,約2カ月半続いた首都圏1都3県の2回目の緊急事態宣言の解除です.しかし,まだ楽観視はできず,解除の直前にオリンピック・パラリンピックの海外観客の受け入れが正式に断念されました.株価が変動するほど,ある意味過剰なまでに期待されているワクチンも,日本での供給体制はまだ十分ではありません.本号が発行される5月のCOVID-19をめぐる情勢を先見できない今,“検査による社会介入”について少し考えてみたいと思います.

 国内でパンデミックが始まった昨年の春先は,PCR検査については抑制的な方針が採られていました.重症以外にPCR検査を積極的に行うことに対して慎重に(あえていえば否定的に)臨むべきであるとされていたのです.他国と比べて機器や検査要員の確保が遅れていた当時のことを思い返せば,これはやむを得なかったかもしれません.ただ,重症以外にPCR検査の適応がないとするのは,医学的理由からなのか,医療周辺の事情のためなのか,これらの違いが曖昧なままにもろもろが発信され,大なり小なり混乱もあったと記憶しています.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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