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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査65巻9号

2021年09月発行

雑誌目次

今月の特集 スポーツを支える臨床検査

著者: 山田俊幸

ページ範囲:P.899 - P.899

 臨床検査の使命は医療における診療支援ですが,その技術・経験は他分野にも貢献できる可能性を秘めていて,スポーツはその1つと考えられます.おりしも東京オリンピック・パラリンピックの開催に当たってスポーツに関心が高まっている今,本特集はスポーツにおける臨床検査の応用について多角的に学ぶことを目的として企画しました.

 アスリートや運動愛好家の障害や疾病に関することだけではなく,運動能力向上への貢献も取り上げています.総論ではまず,健康増進,診療の場面でスポーツや運動がどのような意義をもつのか,次にアスリートの競技能力の向上のための支援としての医学を総論的にoverviewしていただきました.各論ではアスリートに独特な話題として循環機能検査,運動機エコー,ドーピング,乳酸センシングなどが紹介されています.研究ツールとしての臨床検査の応用性も考えられています.そして最後に,スポーツや運動と関連の深い病態を取り上げました.日常業務とは少し離れた視点で,楽しみつつ精読をいただければ幸いです.

医学・医療におけるスポーツの位置付け

健康維持,疾患管理における運動の意義と実践方法

著者: 濱田泰伸

ページ範囲:P.900 - P.905

Point

●定期的な運動のメリットは,心血管系,呼吸器系の機能の向上,心血管疾患のリスク因子の減少,有病率,死亡率の減少などである.

●健康維持,疾患管理のための運動では有酸素運動とレジスタンス運動を併用する.有酸素運動は有酸素運動能力を向上させる効果と心血管疾患のリスク因子を減少させる効果が高く,レジスタンス運動は筋肥大と筋力増強効果が高い.

●安全に運動を行うため,事前に血液検査,生化学検査,尿検査,胸部X線写真,安静心電図によるメディカルチェックや運動負荷試験を行う.

アスリートにおけるパフォーマンス向上へのアプローチ

著者: 笠原政志

ページ範囲:P.906 - P.913

Point

●アスリートにはパフォーマンスの向上が求められる.そのため,スポーツ外傷・障害および疾病予防の観点からのスポーツ医・科学サポートが求められている.

●アスリートへのスポーツ医・科学アプローチは,競技ごとに運動様式や動作特徴などが違うため,競技特性に応じてその内容が異なる.

●スポーツ医学的アプローチは主に,スポーツ外傷・障害および疾病予防,およびその改善に向けた身体運動の力学的および生理学的アプローチとなる.

●スポーツ科学的アプローチは主に,パフォーマンス向上に向けた身体運動の力学的および生理学的アプローチとなる.

スポーツ医学・スポーツ医療における臨床検査

スポーツ選手の臨床検査値とその見方

著者: 原知之

ページ範囲:P.914 - P.919

Point

●アスリートに潜む貧血に関して,実際の症例を交えて読み解いていく.

●アスリートの栄養状態や利用可能エネルギー不足(REDs)に関して,採血結果を参照しながら考える.

●細胞障害の考え方に関して理解し,溶血の理解へとつなげる.

●アスリートに潜む溶血に関して,実際の症例を交えて読み解いていく.

●スポーツ内科外来で経験した偽性高カリウム(K)血症を認めた症例に関して,受診から診断への流れを解説し,臨床検査知識の重要性を再認識する.

スポーツと心電図

著者: 礒良崇 ,   市森恵子 ,   北井仁美

ページ範囲:P.920 - P.926

Point

●アスリートのメディカルチェックにおける安静時12誘導心電図検査の目的は,潜在性心疾患の同定と心臓性突然死を予防することである.

●国際判定基準におけるアスリートの正常・境界・異常所見を把握し,疾患の判定とともに偽陽性を避けることが重要である.

●アスリートにおける正常所見として,スポーツ活動による心電図変化を理解する.

●突然死に関連する不整脈や心筋症を高精度に早期診断することが求められる.

スポーツ診療における超音波の活用

著者: 山田唯一 ,   岩本航

ページ範囲:P.928 - P.933

Point

●スポーツ診療においてエコーの有用性は高い.

●エコーは軟部組織損傷の評価に適したツールである.

●エコーがポータブル化したことによってスポーツ現場でも活用できるようになった.

スポーツ科学分野における超音波エラストグラフィを用いた筋スティフネス評価

著者: 宮本直和

ページ範囲:P.934 - P.939

Point

●従来,骨格筋のスティフネス(伸びにくさ)は可動域や押込式筋硬度計で評価されてきたが,それらの方法では筋スティフネスを正確に評価することはできないため,超音波剪断波エラストグラフィなどを用いる必要がある.

●近年,筋スティフネスはアスリートのパフォーマンスやスポーツ外傷・障害とかかわっていることが明らかになりつつある.

●アスリートが高いパフォーマンスを発揮するためには,必ずしも軟らかい筋が好適なわけではない.競技種目によっては硬い筋が適していることもある.

●今後,筋の質的評価に関するデータを蓄積していくことによって,アスリートやスポーツ愛好家の競技力向上や,スポーツ外傷・障害予防につながる効果的なトレーニング法の確立,ガイドラインの作成が可能となる.

アンチドーピング検査の動向—特に注目されている遺伝子ドーピングの検出法開発

著者: 竹越一博

ページ範囲:P.940 - P.946

Point

●遺伝子ドーピングとは,治療を目的とせず,競技力のエンハンスメントを目的とした“体細胞操作”のことである.

●ゲノム編集技術の登場によって遺伝子ドーピングの実用化が懸念されているが,いまだその検査法の確立には至っていない.

●遺伝子検査の観点から遺伝子ドーピング検査の検出法開発や付随する問題点を理解することが大事である.

ウェアラブルデバイスによる汗中乳酸センシングの新たな可能性

著者: 大川原洋樹 ,   澤田智紀 ,   中島大輔

ページ範囲:P.948 - P.952

Point

●筆者らは,携帯性・計測連続性を有し,非侵襲的に計測が可能なウェアラブル汗中乳酸センサを開発した.

●ウェアラブル汗中乳酸センサを用いた既存の運動耐用能評価手法との比較を健常者・心不全患者でそれぞれ実施し,近似した結果を得た.

●同センサのもつ限界点として,時間経過や温度によるバイオレセプターへの影響がある.今後,発汗量・動態の影響を考慮したうえで,実験計画の立案や現場での応用方法を検討する必要がある.

●今後,基礎データの集積と並行して,ウェアラブル汗中乳酸センサの多様なユースケースの検証を科学的エビデンスを収集しながら進めていく.

スポーツに関連する各種病態

スポーツと貧血・血尿

著者: 國友耕太郎

ページ範囲:P.954 - P.957

Point

●スポーツ活動が原因で生じる貧血を“スポーツ貧血”と呼ぶ.

●スポーツ貧血のなかで最も多い原因は鉄欠乏性貧血である.

●スポーツにおける相対的エネルギー不足(RED-S)は女性だけでなく,男性を含めたアスリート全般の問題である.

スポーツと女性性腺機能

著者: 楳村史織

ページ範囲:P.958 - P.964

Point

●女性の性周期は視床下部,下垂体,卵巣の協調で制御されている.それらのいずれかに異常をきたすと月経周期異常となる.

●過度の運動負荷や体重制限などを行っているアスリートでは,性腺ホルモン分泌機構の異常から月経周期異常や無月経となりやすい.

●低用量ピルは月経随伴症状を低減するのに有用であり,アスリートのパフォーマンス維持向上に貢献できる.

食物依存性運動誘発アナフィラキシーの概説と検査法

著者: 相原雄幸

ページ範囲:P.966 - P.971

Point

●食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)は免疫グロブリンE(IgE)依存性食物アレルギーに分類されるが,食物摂取単独や運動単独では症状の発現はない.その発症にはさまざまな要因が関与している.

●原因食物としては小麦製品が多く,次いで甲殻類であり,近年は果物も増加している.原因検索には特異的IgE抗体だけではなく,皮膚試験も併用する.

●誘発試験の陽性率は高いとはいえないため,原因食物の絞り込みなどの工夫が必要である.

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目次

ページ範囲:P.896 - P.897

書評

著者: 若狹朋子

ページ範囲:P.972 - P.972

バックナンバー「今月の特集」一覧

ページ範囲:P.946 - P.946

次号予告

ページ範囲:P.973 - P.973

あとがき

著者: 山田俊幸

ページ範囲:P.976 - P.976

 このところ,多くの会議やイベントが手軽なオンラインになっています.移動がない分,楽なのですが,なぜか集まりの回数が増えてしまい,結構忙しいと感じられている方も多いのではないでしょうか.学会の講演や講習会などがオンデマンドになると,好きな時間に気楽に視聴できることになり,何より対面開催ならバッティングして聴講できないものも視聴可能になり大変助かります.ただ,それらがどんどんたまってしまい,休日にPCに向かう時間が増え,うれしさ反面少し複雑な思いです.怠け者的には,これまでのように,それは時間がない,あるいは他の用と重複しているので無理とあきらめるのもストレスがない感じがします.

 一方,講習などを提供する側に立つと,繰り返し視聴されることはそれなりの緊張をもたらします.特にe-learningの教材などでは,聴講する人数も膨大です.セリフのつかえなどは録音時に修正されますが,内容のミスは致命的になりかねず,この状況下,教材の依頼が増え,完成を急かされるなか,いつもひやひやものです.学会の講演のオンデマンドは,視聴される期間が限定されるとはいえ,内容の間違いだけでなく,ちょっとした奇異な言い回しが残ってしまうのもストレスです.また,内容によっては半月後に視聴されるとそぐわないものもあります.ライブだから言えるくだけた話もあるでしょう.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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