WITHコロナにおける検査室の感染対策・3
採血室における感染対策
著者:
松田将門
ページ範囲:P.312 - P.317
はじめに
新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019:COVID-19)は2019年12月に中国で最初の症例が確認された呼吸器疾患であり1),severe acute respiratory syndrome coronavirus 2(SARS-CoV-2)を病原体とする.最初の症例以降,世界中で急速に感染が拡大し,世界保健機関は2020年1月30日に“Public Health Emergency of International Concern”,同年3月11日に“Pandemic”と宣言した.本稿を執筆している2021年9月18日現在,世界中の感染者数は約2億2,694万人,死者数は約466万人とされる2).一方,感染拡大防止対策の中心であるワクチン接種は約56億回実施されている2).ワクチン接種を含むさまざまな対策そして人々の協力によって,本稿が掲載される2022年3月には感染が縮小さらには終息していることを切に願う.
本稿では検査室のCOVID-19感染対策のうち,採血室における取り組みを紹介する.SARS-CoV-2の感染経路はウイルスの吸入と粘膜への付着に大別されるが3),採血室ではどちらの経路による感染も成立する可能性がある.患者の氏名やアルコール過敏の確認など採血者と患者の会話が不可避であり,呼気中の飛沫によるウイルス吸入や目の粘膜などへのウイルス付着が危惧される4).また,会話だけでなく咳やくしゃみによる飛沫も感染の原因とされ3),採血者と患者の間だけでなく,患者間の感染も危惧される.本稿では,COVID-19流行前から実施していた感染対策,そして流行後から実施した対策を列挙して振り返り,それを踏まえて今後の課題や必要な対策について考える.