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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査66巻7号

2022年07月発行

雑誌目次

今月の特集 臨床検査技師によるタスク・シフト/シェア

著者: 丸田秀夫

ページ範囲:P.783 - P.783

 医師の働き方改革を進めるための一方策としてタスク・シフト/シェアを推進するため,臨床検査技師,診療放射線技師,臨床工学技士,そして救急救命士について法改正が行われ,業務範囲の拡大がなされました.法改正によって臨床検査技師には10行為が新たな業として追加されました.これは,1970(昭和45)年の臨床検査技師の誕生に匹敵する大きな制度改正といっても過言ではありません.静脈路の確保をはじめ,追加された行為は患者への侵襲を伴うものであり,臨床検査技師が新たに実施するに当たっては,十分な安全性を確保する必要があります.

 本特集では,法改正の経過,追加される行為を実施する際に必要な研修の内容とともに,行為を実施するに当たっての注意点や患者安全管理等における留意点について,それぞれ指導的な立場にある先生方に解説をしていただきました.本特集が臨床検査技師によるタスク・シフト/シェア実践の一助となることを願っています.

医師の働き方改革とタスク・シフト/シェア

著者: 山本修一

ページ範囲:P.784 - P.790

Point

●医師の働き方改革は,医師個人に視点を置いた初めての医療制度改革である.医療の持続可能性を将来にわたって担保するために成功させなければならない.

●時間外労働の年間上限規制960時間のA水準が基本であり,B,C-1,C-2水準(年1,860時間)は,地域医療と教育の観点から暫定的に認められた例外的な水準である.

●宿日直許可については労働基準監督署によって判断がまちまちである.現場の混乱を避けるためには基準を統一することが望ましい.

●臨床検査技師や特定行為研修修了看護師へのタスク・シフト/シェアに当たっては,必要な技術の習得ももちろんであるが,医療スタッフ間の信頼感の醸成が欠かせない.

●どのような工夫を行っても人件費の上昇は不可避であるので,それに対する財政支援が必須である.

法改正を受けて臨床検査技師がなすべきこと

著者: 宮島喜文

ページ範囲:P.792 - P.795

Point

●拡大された業務を医療現場で実践するには,病棟や救急外来などへの臨床検査技師の参画を推進することが大切である.

●医師の働き方改革を推進し,国民に安全で安心できる質の高い医療サービスを提供するためには,多職種による協働・連携を進めていく必要がある.

●タスク・シフト/シェア推進のためには,臨床検査技師の意識や姿勢も重要であるが,診療報酬上の加算など経済的なメリットも考慮する必要がある.

「臨床検査技師等に関する法律」の一部改正の内容と厚生労働大臣指定講習会

著者: 山寺幸雄

ページ範囲:P.796 - P.803

Point

●「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」に伴い,「医師の時間外労働の上限規制」が2024(令和6)年度から段階的に適用される.

●医師から他の医療関係職種へのタスク・シフト/シェアを進めるため,2021(令和3)年10月1日に臨床検査技師,診療放射線技師,臨床工学技士,救急救命士などに関する法律の一部改正が施行された.

●法令改正によって,臨床検査技師の新たな業務として10行為が追加された.その業務を行うためには,日本臨床衛生検査技師会が開催する厚生労働大臣指定講習会を受講しなければならない.

●厚生労働大臣指定講習会は,基礎講習はオンラインで履修する.実技講習会は日本臨床衛生検査技師会との連携の下,各都道府県単位で5カ年計画で実施される.

臨床検査技師に追加される業務の実際と注意点

採血に追加された末梢静脈路確保業務

著者: 近江禎子 ,   宮坂勝之

ページ範囲:P.804 - P.813

Point

●末梢静脈確保業務では,静脈路確保の目的を知り,留置場所と留置針の太さを考慮する.

●血管穿刺は採血時と同じであるが,静脈路の確保は留置針を留置し薬液を投与するところが異なる.したがって,採血とは穿刺最適部が異なるので,解剖を理解して神経障害などの合併症を避ける.

●留置針の構造を理解して手技を行う必要がある.

●ヘパリン加生理食塩水について十分に理解を深める.

●各医療機関においては,業務を開始する前に,関係各部署で静脈留置に関する適応基準および手順を示すガイドラインや手順書を作成して運用方法を共有する.

●静脈路確保の追加行為については法改正の記載と実臨床とで矛盾がみられるので,各施設で協議することを勧める.

臨床検査技師による造影超音波検査のポイント

著者: 紺野啓

ページ範囲:P.814 - P.824

Point

●造影超音波検査を行うに当たって,臨床検査技師はこれまで経験したことのない種々の手技を適切に行うことが求められるようになる.

●それらは①薬剤の調製,②薬剤注入ラインの作製,③血管ルートの確保,④薬剤の注入(静脈注射)などであり,清潔操作によって確実に行う必要がある.

●超音波造影剤のソナゾイド®を取り扱う場合は,微小気泡の崩壊を防ぐため,過度の減圧・加圧を避ける必要がある.そのために必要な器具や手技を理解し,確実に使用し実行する.

●ソナゾイド®は副作用の少ない造影剤であるが,検査中には適切な声掛けや注意深い観察を心掛けなくてはならない.被検者の状態変化に際しては可能な限り迅速に対応する.

成分採血における一連の行為

著者: 牧野茂義

ページ範囲:P.826 - P.833

Point

●医療法の改正によって成分採血時の穿刺,操作,抜針,止血までの一連の操作について臨床検査技師が行えることになった.

●目的に合わせて使用する成分採血の機器の原理・方法を理解し,正しく使用する.

●成分採血に関連した有害事象(採血時,採血中,終了後)を理解し,迅速に対応できるようにする.

●成分採血を実施する場合は,看護師や医師および臨床工学技士と協働して,医療チームの一員として慎重に業務を行うことが基本である.

持続皮下グルコース検査の適切な指導法

著者: 髙橋紘 ,   西村理明

ページ範囲:P.834 - P.844

Point

●わが国の糖尿病治療において,血糖変動を可視化できる持続血糖モニター(CGM)が普及してきている.

●CGMには,医療機関で検査や研究目的で使用するCGMと,患者個人で血糖変動を確認できる自己管理用CGMの2種類がある.

●CGMのなかでも,FreeStyleリブレシリーズは簡便に使用できる.また,保険適用が拡大されたこともあり,今後,使用する患者数がさらに増加していくと予想される.そのため,CGMの装着方法や安全管理上の注意点を患者へ適切に指導する必要がある.

医療用吸引器を用いて鼻腔,口腔または気管カニューレから喀痰を採取する行為

著者: 尾﨑雅子 ,   中村由香理 ,   藤原桜 ,   山口有美 ,   十九百君子 ,   武士由美

ページ範囲:P.846 - P.852

Point

●吸引を安全に実施するためには,用いる装置,実施手順,注意点を理解しておくことが重要である.

●喀痰採取を目的とした吸引という行為は,検体採取を受ける人を対象とする行為であることを認識しておく必要がある.吸引に伴う患者の苦痛を最小に行うための対応について理解しておくことが重要である.

●吸引に伴う危険性や合併症,感染管理,緊急時の対応について理解しておくことが重要である.

直腸肛門機能検査

著者: 味村俊樹 ,   本間祐子 ,   前田耕太郎

ページ範囲:P.853 - P.861

Point

●直腸肛門機能検査として一般的に施行されるのは,肛門内圧検査,直腸バルーン感覚検査,直腸肛門反射検査であるが,それ以外に排出能力検査や直腸コンプライアンス検査もある.

●直腸肛門機能検査の目的は,便失禁の原因診断,肛門・直腸疾患における手術前後の肛門機能評価,Hirschsprung病の診断である.

●肛門内圧検査で測定・評価するのは,機能的肛門管長,最大静止圧,最大随意収縮圧増加値および実測値,不随意収縮圧(咳嗽反射圧),直腸肛門興奮反射,直腸肛門抑制反射である.

●直腸バルーン感覚検査で測定するのは初期感覚閾値,便意発現容量,最大耐容量である.その結果は直腸感覚能以外に直腸容量やコンプライアンス(柔軟性)にも影響される.

内視鏡用生検鉗子を用いて消化管の病変部位の組織の一部を採取する行為

著者: 福澤誠克

ページ範囲:P.862 - P.867

Point

●臨床検査技師の業務に新しく,内視鏡用生検鉗子を用いて消化管の病変部位の組織の一部を採取する行為が加えられた.

●生検の介助を行う際は,消化管内視鏡業務全体の基本の流れ,および各職種の役割を理解することが重要である.

●生検の介助のみではなく,採取した組織検体の取り扱いや患者の状態の把握,患者への心理的配慮も重要な役割である.

運動誘発電位モニタリング・体性感覚誘発電位モニタリング

著者: 安藤宗治

ページ範囲:P.868 - P.876

Point

●術後神経合併症の生じる危険性が高い脊椎脊髄手術においては術中神経生理学的モニタリング(IONM)の施行が必須である.

●運動路の監視には経頭蓋刺激・運動誘発電位(Tc-MEP)が用いられ,連発刺激を加えて末梢の筋から複合筋活動電位を記録する.

●感覚路の監視には体性感覚誘発電位(SEP)が用いられ,末梢神経を刺激して頭皮上から誘発電位を記録する.

●Tc-MEPは吸入麻酔で電位が低下するため全静脈麻酔を用いることが多い.一方,SEPの大脳皮質第一次感覚野の電位は吸入麻酔で低下するが,脳幹由来の電位は低下しにくい.

WITHコロナにおける検査室の感染対策・6

呼吸機能検査における感染対策

著者: 藤澤義久

ページ範囲:P.877 - P.881

はじめに

 2019年に発生が確認され,その後,急速に世界中に広がった新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019:以下,COVID-19)は国内においても収束と拡大を繰り返している.本稿を執筆している2022年4月現在は変異株が猛威を振るい,いまだ終息の兆しがみえない状況にある.これまでにない状況を受けて,各臨床の現場では,的確な答えがないまま手探りで標準予防策(standard precautions)と感染経路別予防策(transmission-based precautions)を順守し(表1),さまざまな対策を行って各マニュアルの見直しが行われてきた.

 生理検査部門は直接,また長時間,患者と接することから検査担当者の感染リスクが高い.また,検者自体が媒介となって院内感染を引き起こす可能性もある.特に呼吸機能検査は患者がマスクを外し,深呼吸や強制呼出などを必要とする検査のため,周囲へのエアロゾルの拡散が生じ,感染リスクが高い検査である.このことから,2020年3月に日本呼吸器学会から,また同年4月に日本呼吸器外科学会から,不急の呼吸機能検査の中止・延期を含めた提言1,2)があった.これによって,各施設の判断で術前の呼吸機能検査を含む不要不急の検査は縮小するなどの対応がとられた.

 本稿では,呼吸機能検査を実施するための適切な感染対策と,検査環境整備についての取り組みを紹介する.今後,新たな知見が得られるにつれて方針も変わっていくため,日々アップデートしていく必要がある.

資料

弾力的対応が可能な遺伝子検査システムの構築と運用

著者: 石田秀和 ,   東本祐紀 ,   水谷謙明 ,   長谷川瞳 ,   土井洋輝 ,   井平勝 ,   藤垣英嗣 ,   星雅人 ,   松浦秀哲 ,   仲本賢太郎 ,   國澤和生 ,   安藤嘉崇 ,   平山将也 ,   藤田孝 ,   秋山秀彦 ,   竹村正男 ,   畑忠善 ,   伊藤弘康 ,   齋藤邦明

ページ範囲:P.882 - P.888

 藤田医科大学は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染拡大の社会情勢を鑑み,大量処理が可能なPCR検査システムの構築を行った.運用は医療科学部の教員および附属病院臨床検査部の臨床検査技師によって行い,現在では1日約1,500検体のPCR検査が可能な大規模システムを構築した.本システムはSARS-CoV-2感染の終息後には研究用途へ返還するが,再度のパンデミックの発生時には即座に再構築が可能となるPCR検査システムとなっている.

第43回第2種ME技術実力検定試験

ページ範囲:P.876 - P.876

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目次

ページ範囲:P.780 - P.781

書評

著者: 谷口俊文

ページ範囲:P.845 - P.845

「検査と技術」7月号のお知らせ

ページ範囲:P.782 - P.782

バックナンバー「今月の特集」一覧

ページ範囲:P.790 - P.790

次号予告

ページ範囲:P.889 - P.889

あとがき

著者: 山田俊幸

ページ範囲:P.892 - P.892

 衣替えの時期に筆を執っています.本誌がお手元に届くころは,暑い日が続いているでしょうか.その頃には,西のほうの争乱とパンデミックがよいほうに向かっていることを願います.

 暑がりなので,これからは正直苦手な季節です.ただ,歓迎することが1つあって,それはクールビズです.遠慮することなくラフな格好で過ごせます.恥ずかしい話ですが,子どものころ,散髪屋さんで毛くずが入らないようにと何かで首をきつく巻きますが,あれが嫌で,抵抗した覚えがあります.今でもネクタイは苦手です.省エネから始まったクールビズですが,私にとってはありがたい効果となりました.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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