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雑誌目次

論文

臨床検査68巻6号

2024年06月発行

雑誌目次

今月の特集 免疫・アレルギー性肺疾患と検査

著者: 涌井昌俊

ページ範囲:P.681 - P.681

 肺をはじめ呼吸器は,体内に酸素を供給し体外に二酸化炭素を捨てるために空気を介して外界と接するという構造的な特性があります.したがって,さまざまな外敵と闘うシステムである免疫は不可欠な存在ですが,その暴走ともいえるアレルギー反応や自己免疫反応はさまざまな呼吸器疾患をもたらします.原因として関与する感染,薬剤,環境物質などが明らかである疾患もありますが,まだ成因が不明である場合が多く,基礎・臨床の研究が活発に続けられています.また,同じ疾患でも個々の患者で,疫学,病態,検査所見,治療反応性,予後は多様であり,層別化医療の確立はこの領域でも重要な課題です.

 本特集では免疫・アレルギー性肺疾患とその臨床を支える検査を取り上げ,第一線のエキスパートの方々に解説いただきました.各疾患の概要のアップデートとともに,診療にかかわる検査の実地に必要な考え方の整理の一助となれば幸いです.

総論

免疫・アレルギー性肺疾患の診療の基本的な考え方と検査の位置付け

著者: 松本宗大 ,   今野哲

ページ範囲:P.682 - P.685

Point

●現代医学では免疫・アレルギー性疾患の診療が進化し続けており,常に新たな治療法と診断技術の更新が求められている.

●疾患の発症背景には,環境要因や遺伝的要素のほか,ライフスタイルの変化も関与しており,地域によって疾患の有病率に違いがみられる.

●診療の基本的な考え方としては,患者の症状や病歴を詳細に評価し,それに基づいて最適な検査戦略を策定することが重要である.

●生物学的製剤は,免疫・アレルギー性疾患の診療に革新的な進歩をもたらしており,特定の免疫細胞やサイトカインをターゲットにして症状の緩和と病状の改善を図る.

疾患各論

気管支喘息

著者: 笹原広太郎 ,   正木克宜 ,   福永興壱

ページ範囲:P.686 - P.692

Point

●気管支喘息の病態には多様性があることが知られており,また患者個人のなかでも変動性がある.そのため,複数の臨床検査や臨床情報を組み合わせて総合的に評価を行う必要がある.

●検体検査では末梢血好酸球数,抗原特異的免疫グロブリンE(IgE)抗体,血清総IgE値が病態の評価に有用であり,血液ガス検査は主に増悪時の重症度の評価に有用である.喀痰も病態の評価に有用である.

●画像検査(胸部X線,胸部CT)では肺野の過膨張,モザイクパターン,気管支壁肥厚,粘液栓,気管支拡張が参考となる.喘息と鑑別の必要な他疾患の評価においても重要である.

●生理機能検査は喘息の評価で最も重要な臨床検査である.スパイロメトリーが最も基本的であるが,気道可逆性試験,気道過敏性試験,モストグラフ,呼気一酸化窒素(FeNO),ピークフローモニタリングを必要に応じて適切に用いる.

過敏性肺炎

著者: 白井剛 ,   宮﨑泰成

ページ範囲:P.693 - P.698

Point

●過敏性肺炎は,抗原を繰り返し吸入することにより生じるアレルギー性のびまん性肺疾患であり,住居,職業,趣味など,生活環境中のさまざまなものが原因抗原となりうる.

●臨床経過,肺線維化の有無により分類され(急性vs.慢性,非線維性vs.線維性),急性は経過や画像所見から診断は比較的容易であるが,慢性は進行性の肺線維化をきたす他の疾患と類似しており診断が難しい.

●治療は原因抗原の除去・回避が主体となり,原因抗原や曝露環境に応じた対策を講じる.

サルコイドーシス

著者: 玉田勉

ページ範囲:P.699 - P.707

Point

●サルコイドーシス(以下,サ症)は原因不明の全身性肉芽腫性疾患であり,ほぼ全ての臓器で病巣を形成しうるが,胸郭内病変が多いため呼吸器内科医が診療の中心となることが多い.

●病因論が国際的に統一されておらず,欧米では結核菌や非結核性抗酸菌病因説,わが国ではアクネ菌病因説が有力視されている.

●サ症に特徴的な症状と臨床検査所見に加え,組織所見が証明できる組織診断群と,心臓や眼など組織検査が困難な場合にも一定の条件を満たせば診断可能な臨床診断群とに分けられる.

●自然寛解するものから長期間の経口ステロイド(OCS)治療を要するものまで,症例ごとに経過が多様である.

●OCS長期使用による全身性副作用のリスク上昇回避に加え,疾患修飾および長期予後改善効果を示すエビデンスが乏しいことから,今後OCS代替治療薬の開発が望まれている.

膠原病に伴う肺障害

著者: 榎本紀之

ページ範囲:P.708 - P.716

Point

●膠原病(CTD)では,間質性肺疾患(ILD)のみでなく気道病変,血管病変など多彩な肺病変を合併し,特にILDと肺高血圧症(PH)の合併が予後を悪化させる.

●全身性強皮症(SSc)や多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM),混合性結合組織病(MCTD)においてILDの合併率が高い.

●CTD診断時には,胸部CTや聴診などによるILDの早期発見,早期治療開始が重要であり,予後を改善する.

●CTD関連のILDの診断には,日和見感染や薬剤性肺障害の鑑別診断が必要である.

IgG4関連呼吸器疾患

著者: 松井祥子

ページ範囲:P.717 - P.723

Point

●IgG4関連疾患(IgG4-RD)は,高IgG4血症と病変組織内への著明なリンパ球・IgG4陽性形質細浸潤と線維化を認める原因不明の慢性炎症性疾患である.

●全身の臓器に腫大性肥厚性病変を認めるが,主な罹患臓器は,涙腺,顎下腺,膵臓,腎,後腹膜であり,胸郭内リンパ節腫大も多い.

●IgG4関連呼吸器疾患(IgG4-RRD)では,アレルギー性鼻炎や気管支喘息などのアレルギーを伴うことが多く,高IgG4血症,高IgE血症を認める.

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症

著者: 浅野浩一郎

ページ範囲:P.724 - P.727

Point

●アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)は,気道内に吸入され定着したアスペルギルス属真菌に対するアレルギー性免疫応答によって発症する.

●ABPAの臨床検査として,末梢血好酸球数,血清総免疫グロブリン(Ig)E値,血清真菌特異的IgEおよびIgG抗体価,真菌培養が重要である.

●血清総IgE値は,ABPAの診断のみならず,治療効果のモニタリングや再燃の診断においても重要である.

薬剤性肺障害

著者: 冨岡洋海

ページ範囲:P.728 - P.733

Point

●薬剤性肺障害は,呼吸器疾患の診療において,鑑別の1つとして常に考えておく必要がある.

●患者が薬と認識していない栄養食品やサプリメントも含め,全ての薬剤は肺障害をきたす可能性がある.

●注意深い問診による薬剤投与との時間的関連の確認と他疾患の除外が診断の基本であり,薬剤との因果関係の評価法について科学的に確立された検査はない.

●分子標的薬や生物学的製剤,免疫チェックポイント阻害薬などの開発,市場投入により,今後も薬剤性肺障害の増加,多様化に対応していく必要がある.

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)

著者: 谷口正実 ,   上出庸介 ,   関谷潔史

ページ範囲:P.734 - P.741

Point

●好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)は,成人発症喘息と好酸球性副鼻腔炎が数年先行した後に,著明な好酸球増加とともに小動脈を病変の主座とする全身性血管炎を発症する原因不明のまれな疾患で,病態の本質は全身臓器の虚血と好酸球性炎症である.

●全例で好酸球性気道炎症病態が先行するため特発性好酸球性肺炎などとの鑑別が,また発症時に末梢血好酸球数が1,000/μL以上を示すため好酸球増多疾患との鑑別が必要となる.

●発症急性期には末梢血好酸球は40%以上を示し,臓器虚血指標〔乳酸脱水素酵素(LDH),クレアチンキナーゼ(CK)〕が増加し,2/3の例で血清免疫グロブリンE(IgE),血小板,リウマチ因子が上昇し,1/3でp-ANCAが陽性化する.

●多発単神経炎による痺れや麻痺をきたしやすく,心臓障害(心不全と致死的不整脈)や虚血性腸障害も約4割で認め,急性期は急激に悪化しやすく,迅速な諸検査による臓器障害の把握と早期の治療開始が重要である.

COVID-19と免疫・アレルギー性肺疾患(喘息・間質性肺炎)の関係

著者: 竹下裕理 ,   長瀬洋之

ページ範囲:P.742 - P.747

Point

●新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行期に喘息の増悪は減少した.マスク装着などによる呼吸器感染症の減少が関与した可能性がある.

●喘息における2型炎症や,吸入ステロイド薬(ICS)は,ウイルス侵入受容体であるアンジオテンシン変換酵素(ACE)2発現を低下させる.

●喘息患者はCOVID-19に罹患しにくい傾向があり重症化リスクも高くない.

●一方,間質性肺疾患(ILD)患者がCOVID-19に罹患した際の予後は不良である.

●COVID-19は膠原病肺を含めた自己免疫疾患を誘発する可能性がある.

肺炎マイコプラズマ感染症と免疫・アレルギー性肺疾患の関係

著者: 黒沼幸治

ページ範囲:P.748 - P.752

Point

●肺炎マイコプラズマは市中肺炎の代表的な起炎菌であるが,細胞壁をもたず,細胞膜成分が宿主免疫応答に関与する.マクロライド耐性菌が問題となっているが蛍光消光プローブ(quenching probe:QP)法で耐性遺伝子を検出可能である.

●気管支やその周囲の間質に炎症を起こし,多様な高分解能CT(HRCT)像を呈する.宿主の免疫反応はインフラマソームによるインターロイキン(IL)-18の誘導が重症化にかかわっており,重症例にはステロイドが有用である.

●肺炎マイコプラズマと喘息との関連性を示す報告も多く,2型ヘルパーT(Th2)背景の患者ではマイコプラズマ感染が気道炎症やTh2環境変化を引き起こし,喘息を増悪させている.

検査各論

検体検査

著者: 若原恵子 ,   石井誠

ページ範囲:P.753 - P.758

Point

●免疫・アレルギー性肺疾患に対する血液検査は,診断,重症度判定,治療方針決定や経過のモニタリングに使用される.

●白血球分画・分類やC反応性タンパク(CRP)値などは,ステロイド,免疫抑制薬などの影響を受けることを考慮し,結果を解釈する必要がある.

●特異的IgE測定には,単項目測定と,スクリーニングで使用できる多項目測定がある.真菌に対する特異的IgE測定では,交差反応による偽陽性が起こる可能性があり,より精度の高いアレルゲンコンポーネント特異的IgE検査に注目が集まっている.

●血液検査は一般的に臓器特異性が低いことに留意する.喀痰検査では,気道局所の炎症評価が可能であるが標準化が難しく,現状では限られた施設でのみ施行される.

生理機能検査

著者: 山澤稚子

ページ範囲:P.759 - P.764

Point

●免疫・アレルギー性肺疾患を評価する生理検査項目には,スパイロメトリー,気管支拡張薬反応性検査,気道過敏性検査,呼気一酸化窒素(NO)検査,肺拡散能(DLCO)検査がある.

●気管支喘息の診断・重症度評価・治療効果を把握するうえで,呼吸機能検査は最も重要な生理機能検査である.

●検査項目の特性を把握することにより,診断,治療選択肢の判断に有益な情報が得られる.

画像検査—二次小葉に基づいた免疫・アレルギー性肺疾患の胸部CT画像所見と,胸部CT撮影時の注意点

著者: 近末智雅 ,   角明子 ,   藤本公則

ページ範囲:P.767 - P.775

Point

●免疫・アレルギー性肺疾患のCT画像所見は多彩である.鑑別を進めるうえで二次小葉に基づいた病変の分布に注目することが重要である.

●二次小葉の構造と関係する病変の分布には,小葉中心性分布とリンパ路性分布のほかランダム分布がある.

●間質性肺炎の分野では,軽微な間質性肺病変〔肺間質異常(ILA)〕という新しい概念が提唱され,これまで以上に間質性変化の有無の評価や経過観察を適切に行うことが重要視されている.

事例から学ぶ 検査室の経営管理に必要な知識・2

検体検査部門の運営形態—直営,ブランチラボ,FMS,検査実績課金方式

著者: 本間裕一

ページ範囲:P.776 - P.779

はじめに

 多くの病院検体検査室では,検体検査部門について病院が自前で人員や機器,試薬などを整備(以下,直営),人員を含む全てを外部に委託(以下,ブランチラボ),また,直営においても人員や機器,試薬など全てを自前で用意する方式から,人員以外の機器,試薬を委託する院内受託方式(facility management system:FMS),検査実績と連動した検査実績課金方式(pay per reportable test.以下,課金方式)など,多様な運営方式が存在します.その運営方式は,病院の経営母体が決定し,病院の再整備などによる建て替えや,経営母体の変更などによる大きなプロジェクトが行われる際は,検体検査部門の運営方法が見直されることが多いと思われます.そこで,今回は,直営,ブランチラボ,FMS,課金方式などの検査室運営形態についてお話しいたします.

今月の!検査室への質問に答えます・15

非結核性抗酸菌感染症の診断検査の概要と注意すべき点について教えてください

著者: 青野昭男

ページ範囲:P.780 - P.783

はじめに

 近年,非結核性抗酸菌(nontuberculous mycobacteria:NTM)症の増加が報告されています.従来の抗酸菌症の中心は結核でした.ところが2016年のNamkoongら1)の報告により罹患率において肺NTM症は結核を上回っていることが明らかとなり,前回の2009年の調査の約2.6倍に増加したことが確認されました.起炎菌としては,Mycobacterium aviumおよびMycobacterium intracellulareを示す非結核性抗酸菌症(M. avium complex:MAC)が最も頻度が高く88.8%を占めており,続いてMycobacterium kansasiiが4.3%,Mycobacterium abscessusが3.3%認められています.菌の分離頻度には地域的な特徴がありM. intracellulareは西日本に多く,M. aviumは東日本に多いとされています.またM. kansasiiは近畿地方で,M. abscessusは九州・沖縄地方で高い傾向が認められています.細菌検査室において分離される抗酸菌の中心もNTMであるのが実際の感覚だと思われます.ただし,NTMの分離数が増加した現在においても,分離された抗酸菌が結核菌でないことを正しく確認することは感染対策上非常に重要です.

 現時点で非結核性抗酸菌は190種類以上の菌種が登録されていますが,臨床で分離される抗酸菌の全体像として,表1にわが国の検査センターで分離され質量分析で同定されたNTM17,163株を集計した成績を示しました.そのなかで最も多く分離されたのはMACで全体の約64%(M. aviumが45.8%でM. intracellulareが17.7%)を占めています(実際はもっと多いと思われますが,多くのMACは核酸増幅法検査で同定されており,質量分析は全体を反映していないと思われます).続いてM. abscessusが9.3%およびM. kansasiiが4.7%でした.また分離されれば確定診断となる結核菌に対して,NTMにおいては分離された菌が必ずしも起炎菌とはならないため,感染症としての数字と分離株数で差が生じることがあります.特に肺NTM症においては起炎菌とするための条件が定められており,その条件として肺非結核性抗酸菌症診断基準が示されています(https://www.kekkaku.gr.jp/commit/ntm/200804sisin.pdf)2).またNTMは発育速度によって2つに区分され,コロニーが発育するまでに2〜4週間を要する遅発育性抗酸菌(slow growing Mycobacterium:SGM)と,1週以内に発育する迅速発育性抗酸菌(rapid growing Mycobacterium:RGM)に大別されます.

医療紛争の事例から学ぶ・10【最終回】

迷惑患者への対応

著者: 蒔田覚

ページ範囲:P.784 - P.787

はじめに

 医師の働き方改革を実現するためのタスク・シフト/シェアを検討する過程で,法令改正により臨床検査技師が“診療の補助”として行える“生理学的検査”の範囲が拡大した.その結果,臨床検査技師として患者やその家族と接触する機会が増え,トラブルに巻き込まれる機会も多くなることが予想される.

 これまでの医療紛争の中心は医療機関や医師であったが,臨床検査技師も他人事では済まされないであろう.特に,暴言を吐いたり暴力を振るったりする迷惑患者への対応は臨床検査技師が日常業務を行ううえでも,当然に身に付けねばならない知識である.

 そこで,連載の最終回として,迷惑患者の診療拒否が問題となった近年の裁判例〔(令和4年8月8日東京地方裁判所判決〕1)を紹介することとした.患者は,診療拒否を伝達した医療機関の医事課職員に対して150万円の損害賠償を求めるとともに,医療機関に対して従来の治療行為の実施を求めたが,医事課職員に対する損害賠償請求は棄却,医療機関に対する請求は,特定が不十分であるとして却下となった.

リレーエッセイ 私のこだわり・2

診療と検査技術発展への貢献を目指して“一流”検査技師になるために

著者: 清水康平

ページ範囲:P.788 - P.788

患者さんに寄り添う検査

 検査を行うとき,私は患者さんの立場に立つことを意識しています.特に私は糖尿病療養指導士や循環器病予防指導士の資格をもっており,療養指導にも携わっています.患者さんに“立場が違う”と認識されてしまうと療養指導もなかなか受け入れていただけないことを多く経験します.その際には,相手の立場を理解することや共感することが受け入れてもらえる指導につながります.

 また,糖尿病教室などで時間をかけて療養指導する場面だけでなく,日常の検査で患者さんとお話しするときにも療養指導のチャンスをみつけるようにしています.何気ない会話から相手の特徴を判断し,糖尿病や高血圧コントロールに関して困っていることや間違っていることがないかを探り,療養指導や禁煙指導を行うようにしています.検査室で心を開いて話してくださる方も多く,“さっき先生にはこう言っちゃったんだけどさぁ”のように先生の前では言えなかったことを聞き出せることはコメディカルスタッフが療養指導へ参加する大きな意義だと感じています.

INFORMATION

UBOM(簡易客観的精神指標検査)技術講習会・2024

ページ範囲:P.707 - P.707

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目次

ページ範囲:P.678 - P.679

「検査と技術」6月号のお知らせ

ページ範囲:P.680 - P.680

バックナンバー「今月の特集」一覧

ページ範囲:P.723 - P.723

次号予告

ページ範囲:P.789 - P.789

あとがき

著者: 関谷紀貴

ページ範囲:P.792 - P.792

 2024年,早くも折り返しの時期となりました.暑い夏まであと少しですが,過去10年くらいは毎年のように起こる気象イベントのため,気候変動がより身近なものになったと感じています.少し気は早いですが,夏を楽しもうという前向きな気持ちと,夏を乗り越えようという後向きの気分が入り交じったような心境です.

 今から13年前のことになります.中・高校時代の友人が台湾の大学で経済学を教えており,久しぶりの再会と旅行を兼ねて初めて台湾を訪れました.8月上旬〜中旬にかけての非常に暑い時期でしたが,あちこち案内をしてもらいながら現地のおいしい食べ物を堪能し,すっかり台湾が好きになってしまいました.台北市は,古くからの伝統が感じられる国立故宮博物院,龍山寺,行天宮,中正紀念堂,忠烈祠,迪化街といった歴史的な名所から,ランドマークともいえる台北101や台湾の原宿といわれる西門町といったおしゃれスポットにもすぐ遊びに行くことが可能です.その合間,日本でも有名な鼎泰豊の小籠包や,多くの出店で賑わう士林夜市や饒河街夜市で地元のソウルフードを味わうことも大きな楽しみになります.今では台湾発のかき氷として広く知られた,フワフワ触感のマンゴー雪花冰を食べたときは1回でその虜となり,これを食べるために台湾を再訪したくらいです.郊外へ少し足を延ばすと,南国には珍しい北投温泉や,東南アジア最大の動物園である台北市動物園,ロープウエーを上ると台北市が一望できる猫空(マオコンと読みますが名前がかわいらしいです)などで穏やかな時間を過ごすことができます.また,日帰り可能な距離ではありますが,新北市まで行けば夕日の名所として知られる淡水の港や,千と千尋の神隠しのモデルとなった九份を散策し,小旅行気分を味わうこともお勧めです.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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