icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床検査7巻11号

1963年11月発行

雑誌目次

グラフ

国立東京第二病院研究検査科

著者: 倉光一郎

ページ範囲:P.791 - P.798

 昭和38年5月,病院の新しい本館完成に伴って旧建物から現在のところに移転した。本館1階東翼には生理科,中央棟には一般および血液検査室などの,いずれも患者が直接検査される部門が配置され,2階東翼には医化学,細菌,血清,病理などの各科が並んでいる。このほか本館地階には解剖室,旧検査室の一部にはラジオアイソトープ検査室がある。新しい検査科のなかには中央洗浄室,中央写真室が用意されているが人員機材の整備がととのわず,現在は閉鎖されている。
 検査科全体の坪数は約380坪で,新築建物総坪数7940坪の約4.8%を占めている。勤務人員は科長以下医師7名(内兼務3名),技術士21名,助手4名であり,他に北里衛生科学専門学院および大東医学技術専門学校から5名ずつの生徒が実習している。

技術解説

野兎病の細菌学

著者: 大原嘗一郎

ページ範囲:P.799 - P.804

はじめに
 大正12年(1923)ごろ福島県をはじめその隣接地山形・宮城県下の山間部落に不思議な病気が流行した。それは野兎を料理したり,食べたり,その手伝いをしたヒトが2〜3日後に突然発熱,頭痛,関節痛などを訴えて,腋窩や肘部のリンパ節が腫れてくるもので,たまたま福島市大原病院にも親子3人の患者が訪れ,筆者の父大原八郎(1882-1943)が初めてこの病気に注目したのが研究の発端となった。
 それまでこれらの患者は,簡単なリンパ腺炎,瘰癧あるいは梅毒として治療されており,この3人の患者も自ら606号の注射を希望して来た。大原(八)はその疾患の本態を究明するため,翌13年1月その妻の手背に流行地から拾ってきた斃死野兎の心血をぬって,これが野兎から感染する一種の微生物による独立した熱性疾患であることを証明し,後にこれに野兎病と命名した。同時にその人体実験の症例を含め5名の患者の血清と剔出したリンパ節とをワシントンにある公衆衛生局のFrancisのもとに送り,これが当時彼がみつけた新しい疾患ツラレミアと同じものかどうかを問い合わせた。その結果は予想どおり野兎病(大原)とTularemia (Francis)とは血清免疫学的に同一な疾患であることがわかり,Francisはこの日本の疾患を大原病と呼んだ。彼はまた日本から送られた材料からツラレミア菌を分離した。

異常血色素の知識と検査法

著者: 井内岩夫

ページ範囲:P.807 - P.815

1.異常血色素とは
 血色素(ヘモグロビン,Hb)は赤血球内に含まれる主成分で,グロビンというタンパク体にヘム(プロトポルフィリン鉄)が結合した複合タンパク体である。異常血色素とはヘム(heme)は正常なプロトポルフィリン鉄(protoporphyrin-iron)であるが,グロビン(globin)が異常であるために正常なHbと異なった物理的あるいは化学的性状を示すようになった血色素をいう。また異常血色素症とは,異常血色素が産生される結果,正常な血色素の産生が部分的に,また全面的に抑制される遺伝的疾患をいう。従って一酸化炭素中毒の際にみられるCOHb,便秘症にみられるSulfHb,薬物中毒,遺伝性メトHb症にみられるmet Hbなどはその異常がヘムの部分だけに限られていて,異常がグロビンの部分に及んでいないので異常血色素とはいわない。
 異常血色素の物理的・化学的性状の変化としては,いずれの異常Hbにも共通してみられる電気泳動やクロマトグラフィーに示される正常血色素との差異の他に,各異常血色素の独自の性状もみられ,それが深刻な影響を生体に及ぼしていることもすくなくない。

ブドウ糖酸化酵素—ペルオキシダーゼ系を用いる国産血糖定量試薬(Glucomesser)の使用条件についての検討

著者: 春日誠次 ,   村松允子

ページ範囲:P.817 - P.821

はじめに
 ブドウ糖を定量するのにブドウ糖酸化酵素を用いるとはすでに1945年にKeilin & Hartreeによって考案されている。ブドウ糖溶液にこの酵素を添加して37℃に保つとブドウ糖はグルコン酸となり同時に過酸化水素が出来るのであるが,このとき消費される酸素量を検圧計を用いて測定するというのがその原理である。この方法でもかなり微量な糖の定量が可能であるが,また,ポーラログラフを併用すると1μg程度にも微量化することが可能であるという。
 また,適当濃度の過酸化水素をペルオキシダーゼとο—ジアニシジン等の色素原液に作用させると有色物質を生じ,この濃度を比色することによって過酸化水素量を知ることができるのであるが,これを前のブドウ糖酸化酵素の反応と組み合わせると比色によってブドウ糖の定量ができる。これが1956年にTeller1)によって発表された方法である。その後もこの方法についての批判,改良について多くの論文が見受けられる。ブドウ糖の定性試験として〃テステープ〃が検査室でもよく用いられている現況であるように,この原理を用いた方法では特異性が高く,また,しかるべき方法を用いれば再現性もよい。これによって定量した血糖正常値についても発表せられている。本邦でもすでに紹介され,それについての検討も行なわれている2)3)

新しい検査法

グルコスポット(Glucospot)の紹介とその使用経験

著者: 種瀬富男 ,   溝部碩子 ,   阿部正和

ページ範囲:P.823 - P.827

 グルコスポット(Glucospot)というのは,ブドウ糖酸化酵素法を応用した半定量的の血糖測定法で,わずか1〜2滴の血液量で,2分以内に測定できるというものである。
 臨床検査,とくにその化学的検査は,質的にも量的にも急速に発展しつつある。血糖の測定法も,Hagedorn-Jensen法,Somogyi-Nelson法などの還元力を応用した方法から,ブドウ糖酸化酵素法を用いた真糖の測定へと質的に大きく変わりつつある。しかし,一般実地医家にとって,血糖の測定はかなり厄介なものであり,ふだん化学的検査になれていないと手軽に実施し得ないばかりか,測定すること自体おっくうになるのが現状のようである。大病院でも,ベッドサイドで刻々に変化する血糖値を,瞬時に追跡することができれば,どんなに便利であらうかと思うこともしばしばある。そこで,簡易・迅速・微量を特徴とする血糖のインスタント定量法が近年急速に普及するようになったわけである。この線に沿った血糖の新しい測定方法には,デキストロテスト法,あるいはシノテスト100号法などがあげられるが,私たちはアメリカのWorthington Biochemical Corporationの「Glucospot」という,きわめて簡便な血糖測定装置を入手する機会があったので,ここに紹介し,私たちの検討した結果について述べたいと思う。

検査室管理

京都大学病院中央検査部血液検査室の管理

著者: 星野孝 ,   富田仁

ページ範囲:P.829 - P.833

はじめに
 臨床検査の進歩と普及は,近年における診断技術と治療面に大きな改革をもたらし,それに伴って各種の検査項目はさらに拡大され,その重要性も再認識されつつある。ほとんどの大病院や研究所においては,従来個々に行なわれてきた一般血液検査も中央化され,熟練した技術員によって一括して検査される状況となっている。従って検査成績の精度と再現性が向上し,患者の診断ならびに追跡に,信頼度の高い成績を与え得るようになった。ことに一般血液検査は,血液疾患のみならず,他のあらゆる系統の疾患においても,治療上あるいはスクリーニングの意味で,繰り返し頻繁に行なわれるべき検査項目として,きわめて重要な意義を有している。従って臨床担当医による血液検査室の利用は年々急速に増加しつつある。しかし他の臨床検査と同様に,一般血液検査も,簡単な操作にかかわらず,かなりの熟練と,綿密な注意力を必要とするため,検査成績の正確を期して技術員の質の向上とともに,管理面にたずさわる医師ならびに技術員の不断の努力が必要となる。
 京都大学医学部付属病院では,昭和33年に中央検査部が創設され,以来血液検査室においても上記の要点に鑑み,迅速正確な検査成績を得るため,種々の努力が払われてきた。以下順を追ってその管理面について述べることとする。

用語解説

◇ペプチド鎖Peptide chain

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.836 - P.836

 タンパク質は巨大分子であって,分子量は数万から数百万のものもあり,加水分解すると数百個から数千個のアミノ酸にわかれる。つまり数百個から数千個のアミノ酸が一つの巨大なタンパク分子を作りあげているわけである。
 天然の生物からとりだしたタンパク質を加水分解して得られるアミノ酸は大体はL—系のα—アミノ酸である。

◇酸好性色素と塩基好性色素

著者: 太田邦夫

ページ範囲:P.837 - P.837

 酸好性および塩基好性染色については,つぎに説明するように,いろいろの問題があって,その真の意味を理解するのは専門の病理組織学者であっても容易ではない。これは染色の理論および各被染色物質の化学的特性の認識が必ずしもいまだ完全でないことにもよっている。
 一般に,たとえばギームザ染色の場合では,青色にそまるものは塩基好性染色であり,紅色にそまるのは塩好性染色といわれる。つまり,核や塩基好性白血球の顆粒は塩基好性染色をうけ,酸好性白血球の顆粒は酸好性染色をうけるといえる。

研究

セルローズアセテート(OXOID)による血清タンパク分画電気泳動の検討

著者: 阿南功一 ,   宮城芳得

ページ範囲:P.839 - P.843

序論
 濾紙電気泳動法による血清タンパク分画の定量は日常多忙なる検査室においてはチゼリウス法に代わって近時ますます広く行なわれるようになった。濾紙泳動条件,染色法,タンパク濃度測定法による分画値の変動が大きく,ためにわが国でも先年電気泳動学会において種々検討の末,一応標準操作法1)が採用された。
 一方1957年英国のT.Kohn2)によってアセチル化した濾紙(セルローズアセテート)によるタンパクの電気泳動研究が紹介された。これを用いると血清タンパク分画の分離が非常によいこと,およびセルローズアセテート自身の屈折率がD251.474〜1.475で綿実油や流動パラフィンに近く,これらに浸漬することによってバックグラウンドをほぼ透明化し得るので,セルローズアセテート紙片上に染色されたタンパク分画帯を容易にデンシトメトリーで測定し得る。

臨床化学検査データの検討

著者: 屋形稔 ,   土田雅子 ,   河野通子

ページ範囲:P.845 - P.848

はじめに
 現在各種の臨床検査は,量的にも質的にも年々急激に増加の一途をたどり,内容の充実と共に医学の診療面には欠くことのできない重要なデータを提供している。ことに近年の臨床化学検査の発展は著しいものがあり,その方法の簡易化,迅速化あるいは微量化とたゆまぬ改良が加えられ,より良い検査の確立への努力がなされている。ここで当然検査成績の精度,信頼度が問題になって来る。特に臨床化学検査は,結果が数値となって表われてくるだけに,検査成績の管理の問題は検査室にとって一つの重大な使命と考えられる。
 米国(ペンシルバニヤ)においてすでに1946年に1)2),世界に先がけて多くの検査室を対象に同一試料による検査成績の実態調査がなされたが,その結果は想像以上の惨憺たるものであり,ここにデータ管理の必然性が生じて来た。

八重山群島西表島における鉤虫保有者の血液像

著者: 宮原道明

ページ範囲:P.851 - P.852

 南方地域においては好酸球が増多する疾患,たとえばtropical eosinophilia1)やeosinophilic meningitis2)などが報告されている。しかしその原因は感染性のものもあるが,不明のものも多い。一方,鉤虫症,糸状虫症3),顎口虫症4)やその他の寄生虫疾患でも好酸球増多が認められている。沖縄地区においては,沖縄本島の鉤虫浸淫地区小学生の血液像について城間5)の報告があるが,八重山群島での報告は見られない。著者は九大学術探検研究会が八重山群島西表島の風土病調査を実施した際の血液標本をみる機会を得た。そこで八重山群島西表島における好酸球の動態を知るべくこれらの血液標本を検査して若干の知見を得たので報告する。

最近分離した各種病原細菌の化学療法剤感受性

著者: 佐川文子

ページ範囲:P.853 - P.855

まえがき
 好気性病原細菌の各種化学療法剤に対する耐性菌の増加および多剤耐性菌の増加についてはすでに多数の報告がある。
 私は1961年4月から1962年12月までの間に臨床材料より分離された各種好気性病原細菌の各種化学療法剤に対する感受性検査の結果を集計したので報告する。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?