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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査7巻6号

1963年06月発行

雑誌目次

グラフ

動物実験手技の手引き

著者: 佐々木正五

ページ範囲:P.391 - P.398

 生きているにしろ,死んでいるにしろ,何かの操作を確実に行なうためにはまず動物を確実に固定し,落着いて,しかも手早く仕事を進めねばならぬ。そのためには必要な器具,器材をまず手落ちなく準備し,その手順を頭の中に浮べてみてから手を下すようにしたい。

技術解説

臨床検査における実験動物の使用

著者: 佐々木正五

ページ範囲:P.399 - P.404

Ⅰ.検査の限界
 臨床検査という用語の示すものはその範囲がきわめて広く,極端な言い方をすれば脈をみるのも聴診器で聞くのも臨床検査である。しかし今日常用される用語の概念の範囲は狭められて来ているが,それでもなおその限界を明確にすることは困難である。それは検査の範囲と深さの両面から考えねばならない事柄であるからである。範囲に関しては,それぞれの立場から一定の枠を定め"これとこれはルティーンの検査"として,いわば勝手に定めている。深さに関しては,どこまでが検査で,どこからが研究か,という疑問も多くの場所で多くの人が考えた問題でありながらなお明確な解決はされていない。これらのところにまず問題点が残されているが,それを承知の上で,そこに実験動物の問題を重ねて行くことは更に解決し難い疑問を提供することになる。
 しからば日常の検査に実験動物が全く使用されていないかといえば,とんでもないことで,非常な数の実験動物が使用されている。たとえば1960年におけるわが国の実験動物現状調査によれば医学用に用いられたマウスは2,459,683匹,ラットは353,050匹,ウサギは164,714匹に達している。

肝機能検査の標準法

著者: 高橋晄正 ,   榎本浩昌

ページ範囲:P.407 - P.413

はじめに
 現在各検査室で用いられている肝機能検査法の種類および術式は非常に多数にのぼっている9)。一般に測定法の違いによって正常値や単位も異なっているため,そのままでは,各病院や研究所で得られた結果を比較検討するような場合,非常に不便なことが多い。そのような障害をなんとか打破しようとする目的で,昭和35年日本消化機病学会の中に,国際肝臓病学会ならびに日本臨床病理学会の協力のもとに,肝機能研究班が設けられ,主として肝機能検査法の標準化に関して活発な討論がなされたのである。その成果として一応ほぼ下記のような標準操作法(試案)がまとめられたのであるが,以下,各検査法の臨床的意義やその方法が選定されたいきさつなどについて若干の私見を補足しながら,述べてみたい。

トキソプラスモージスの血清学的検査法

著者: 橋本雅一

ページ範囲:P.417 - P.423

 トキソプラスマ症はToxoplasma gondii (三日月原虫)と呼ばれる原虫の感染によって発現する。確実な診断は臨床症状の面から本症を疑われる患者から虫体を検出することであるが,この操作はきわめて煩雑な作業であるだけでなく,確かに体内に虫体が存在していると思われる例であっても,直接的あるいは間接的方法によって必ずしも常に虫体を検出できるとは限らない。しかし,本症では感染2〜3週後になると種々の特異的免疫体(抗体)が作り出されることが知られたので,本症が疑われる患者について生体内免疫反応の発現を検討したり,患者の分離血清について他種動物での生体内反応を調べたり,また試験管内で各種の血清反応を行なったりして,種々の血清学的診断が試みられるようになってきた。現在まで次のような試験法が報告されている。
1.患者の生体内免疫反応……皮内反応

組織内タンパク染色法

著者: 畠山茂

ページ範囲:P.425 - P.428

 ここでは,普通病理組織切片で通常最も多く見られる数種の異常タンパクないしタンパク結合物質をあげて,その染色法について述べたい。

骨髄線維症の血液検査—白血病とまぎらわしい疾患

著者: 柴田昭

ページ範囲:P.431 - P.437

はじめに
 骨髄線維症は最近わが国でも症例報告が相つぎにわかに注目をあびるところとなった。本症は本態論の上でも,また臨床像,血液像の上でも慢性骨髄性白血病とまぎらわしいところをもっているが両者は治療や予後がまるで異なっているので,その鑑別診断は実地上はなはだ重要といわねばならない。本稿ではこの疾患と白血病とを鑑別するのに日常の血液検査の上でどのような点に注意すればよいかについて述べたいと思う。しかし何分にも骨髄線維症という名前はわが国ではまだなじみがうすいので,本症の血液所見を述べる前に本症の概念と臨床像について最初に簡単にふれてみることとする。

座談会

計測フィルターの知識

著者: 森礼於 ,   石田正之 ,   天木一太 ,   樫田良精 ,   松村義寛

ページ範囲:P.440 - P.452

 フィルターといわれるものはこれを大別すると二つあります。一つはきょうの主題の光フィルター(light filter)であり,濾光板という訳語をあてます。もう一つは電気的フィルター(wave filter)で濾波器と訳します。後者がある周波数の電流だけを通す回路であるのに対し,前者はスペクトルのある範囲に相当する光線だけを取り出すための装置といえます。なおこれらとは別に濾紙など濾過装置をフィルターと呼ぶこともあります。計測フィルターという言葉はあるいは耳なれぬ言葉かもしれません。事実ゲストの方に出席を依頼したとき,この言葉ではすぐには話が通じなかったものです。計測フィルターとはここでは主として光電比色計のフィルターを指します。今日では光電比色計には光の干渉を利用した干渉フィルターを使いますので話はそれを中心に進められていますが,まだまだガラスやゼラチソのフィルターも残っているのでその辺の配慮も充分にしたつもりです。

研究

尿タンパクおよび尿糖の試験紙による検査法と現法との比較検討

著者: 文屋誠二 ,   川西孝

ページ範囲:P.455 - P.458

はじめに
 現在,尿定性検査法としてタンパク質はスルホサリチル酸法,糖はニーランデル法を採用しているのが大部分であるが,尿検査件数の上昇にともないインスタント検査法として,試験紙による尿タンパク,尿糖の定性および半定量法が普及しつつある。著者らは,試験紙ウリスティックス(AMES Company)と現法のスルホサリチル酸法,煮沸法,ニーランデル法およびエスバッハタンパク定量法,飯塚定量法とを比較することにより,ウリスティックス(以下試験紙と略す)が,日常検査業務に使用しうる信頼性を有するか否かを検索したところ次のような結果をえたので報告する。

結核菌の耐性測定における直立拡散法の検討—第1報 接種菌量による発育阻止帯長の変化

著者: 平峰繁

ページ範囲:P.461 - P.465

はじめに
 直立拡散法は,あらかじめ菌を接種した固形培地の下端に,所定濃度の薬液一定量を注入して後試験管を立てて培養し,菌が発育しつつあるところに薬剤が培地中に浸透拡散して菌の発育を一定の線でおさえて,その感受性度を測定する方法であるが,小川(政)1)2)は特殊な首曲り試験管を用いて平面培地を(以下平面法と呼ぶ),飯尾3)は普通試験管による斜面培地(以下斜面法と呼ぶ)を使ってそれぞれ発育阻止帯長による耐性度区別線を設定している。これら直立拡散法は従来の煩雑な普通希釈法に代わって,日常の耐性検査法として充分採用できるものと推奨されているが4),検査を行なうにあたって一番身近な問題であるところの接種菌量の多寡による発育阻止帯長の変化については明らかにされていない。
 元来,結核菌の耐性検査成績は,使用する培地や判定時期などによって異なることはよく知られており,こうしたものを一定にした場合でも接種する菌量によって耐性のあらわれ方は一様でなく,従来の希釈法でもある程度の範囲内で変動することが知られている5)〜8)。そこで私は,直立拡散法ではこのような状態がどの程度の変化でみられるものかを,希釈法を対照にして検討してみた。

<検査科と臨床の話し合い>

血清糖タンパクの検査をめぐって

著者: 松崎七美 ,   小俣喜久子 ,   星野辰雄 ,   佐藤乙一

ページ範囲:P.466 - P.467

 佐藤 今日は最近次第に注目をあびつつあります糖タンパクの問題についてひろくお話を伺いたいと思います。たまたま当院で糖タンパクと脂タンパクを電気泳動法によって各分画定量を行なっており,このどちらもがかなりの検査件数にのぼっていますので話しやすいと思いますし私どもも単に検査するだけではなくて,いろいろな学説を聞きながら勉強したいわけです。まず最初に松崎副院長に内科医長という立場から血清糖タンパクの概念を話していただきたいと思います。
 松崎 血清糖タンパクというのは名称もまだはっきりしていません。しかし当院では糖タンパクとよんでいますのでそれに従うことにしましょう。ただお断りしておきたいことは,私は臨床家ですから,化学的に深く追求されてもお答えできない場合が多いと存じます。さてわれわれが臨床家として一般的に理解している範囲で申しあげてみますと,糖タンパクとは血清中のタンパクにいろいろな形でむすびついた糖質の集りであるといってよいのではないかと思います。もちろん厳密にはいろいろ問題もありましょうが。……そして広義的にはこれが大きく3種類にわかれているようです。第一はHexosaminを含む高分子の多糖類(Mucopolysaccharide),第二は前者とタンパク質が極性結合し,または分離しやすいLinkageで結合しているものでややタンパクに近いもの,第三はGlycoproteinと呼ばれながらタンパクとしての性質をもっているものというふうに言われております。そしてヘパリンコンドロイチン硫酸や,C反応性タンパク(CRP)などはいずれもこの第一の部類に加わっているということです。しかし学問的にはいろいろの学説や実験等の結果もあってなかなかむずかしい問題なのです。けれども臨床的にはたしかに大きな意味がありますし,そのために複雑な検査を常にお願いしているわけですが,内科領域からみればこの検査データーは非常に興味があり,また大切なもののひとつであると思っています。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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