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雑誌目次

論文

臨床検査8巻4号

1964年04月発行

雑誌目次

グラフ

超微量化学分析の応用

著者: 斎藤正行

ページ範囲:P.257 - P.261

 今日,血液の単一サンプルから10種目以上を定量分析し,多因子の生体内情報を基盤として診断・治療を行なうことは常識となりつつある。従って検査室側としても患者からの採血量の負担を極力少なくする意味で,微量ないし超微量分析法の工夫がなされなければならない時期に来ている。しかし生体試料というものは複雑な組成を持っており,かつ目的成分はきわめて微量である。微量化によってかえって精度が悪化したり診療のタイミングに合わなくなっては全く意味なく,従来の標準法並みの精度と迅速性,かつ試薬などの面での経済性と検査室の合理的運営が満たされなければならない。ここに今日の時点における,東大分院および癌研付属病院検査部での日常検査の超微量分析の実態を紹介する。

胸腹水の細胞診

著者: 石岡国春

ページ範囲:P.262 - P.264

技術解説

胸腹水の細胞診

著者: 石岡国春 ,   武田鉄太郎 ,   永沼悦夫

ページ範囲:P.265 - P.273

はじめに
 胸腹水の細胞診の最も重要な適応は悪性腫瘍であり,悪性腫瘍細胞を証明することによって胸腹水貯留の原因が悪性腫瘍であることを直接的に根拠づけることができる。胸腹水の細胞診は,胸腹水が容易に採取され,塗抹標本作製までの操作時間も短時間であり,また悪性腫瘍性胸腹水内にはきわめて高率に腫瘍細胞が検出されるので,胸腹水貯留の原因が良性か,悪性か不明である場合には,疾患の予後および治療方針の決定にきわめて大きな意義を有するものと考えられる。胸腹水の物理化学的性状や肉眼的性状は,良性か悪性かの鑑別上間接症状としてある程度役立ち得るが,確実な決め手とはならない。胸腹水の細胞診が一般物理化学的検査と同時に日常の検査として望まれる所以である。ここでは主として悪性腫瘍性胸腹水の細胞学的鑑別診断に関して述べてみたいと思う。

リケッチアの血清反応

著者: 川村明義

ページ範囲:P.274 - P.279

 Rickettsは1909年にロッキー山紅斑熱患者の血液塗抹標本に桿菌様小体を認め,1910年にWilderとともに発疹チフス患者に付着していたシラミの塗抹標本に同様の小体を発見,報告したのがリケッチアについての最初の記載で,次で発疹チフスの研究中同様の微生物を確認したda Rocha-Lima1)により,病原体を本病研究の尊い犠牲となったF. T. RickettsとS. von Prowazekの名誉のためRikettsia Prowazekiと命名されたのがこの属の名称の起源である。以来発疹チフスおよびその類似疾患(リケッチア症という)の一群の病原体をリケッチアと呼ぶようになった。
 本症を確実に診断するには,患者より病原リケッチアを分離同定することが望ましいが,これは必ずしも容易ではない。普通,血清反応により診断19)が行なわれている。

筋電図のとり方

著者: 中西孝雄

ページ範囲:P.280 - P.285

はじめに
 筋肉が収縮すると,電気が発生するということは,18世紀の終り頃Galvaniによって初めて発見されたが,その後筋肉に関する電気生理学は急速な進歩をとげるに至った。特に電子管工学の発達に伴い研究方法が改善されるにつれてその発展は目ざましく,その一産物としての筋電図も十数年前から広く臨床的に応用されるようになった。筋電図は今日,内科,外科,整形外科,神経科,小児科,耳鼻科,眼科等多くの臨床領域で,神経筋疾患の診断法として広く用いられる検査法の一つである。
 筋電図をとる目的は,言うまでもなく筋肉に生ずる電気的現象を記録して,筋自体の状態およびそれを支配している神経系の状態を推測することである。病理形態学的検査が形態の上から病状を判断しようとし,また生化学的検査が物質代謝の面から病気を知ろうとするのに対して,筋電図は生きた筋肉の動的な状態を知る一つの手段なのである。たとえば筋肉が萎縮している場合,それが神経の障害によって起こっているものなのか,あるいは筋自体の病気でそのように萎縮したかを区別することは治療上大切な問題であるが,筋電図は両者の差を多くの場合はっきり示してくれる。もちろん筋生検という病理形態学的検査によっても,また血清の生化学的変化からも,そのことはある程度まで鑑別され得る。

血中リン酸の定量法

著者: 杉田良樹

ページ範囲:P.286 - P.289

Ⅰ.リン酸化合物とその役割
 リン酸は体中にすべての細胞を含め広く存在する。人体中の全量の約80%はリン酸カルシウム(ヒドロキシアパタイト)として骨および歯に含まれて支持組織の強化をなし,このリン酸は血液中のリン酸と常に交代し平衡状態にある。細胞の構成分としては核酸,リン脂質などの多くのリン酸化合物がそれぞれ重要な機能にあずかり,また体の細胞の活性にはアデノシン三リン酸のリン酸結合に貯えられたエネルギーが利用され,細胞内のエネルギー転移には高エルギーのリン酸結合を持つ化合物が重要な役割をはたしている。
 血液中のリン酸化合物は次の二つの形に大別しうる。

医学常識

アレルギーの概念

著者: 木村義民

ページ範囲:P.290 - P.294

はじめに
 今日医学のあらゆる分野において,アレルギーという言葉ほど広く用いられているものはないであろう。否,むしろ今日あまりにも広義に用いられる結果,Pirquetが提唱した当時のアレルギー本来の意義を逸脱してややもすれば無批判に乱用された結果,アレルギーそのものの解釈をさえ誤らしめつつある感がなくもない。
 周知のように,アレルギーなる言葉を提唱しその概念を確立したのはPirquet (1906)である。Pirquetによって新しく打ち建てられた概念によって,従前不明とされて来た多くの疾病を解明する有力な手掛りが与えられたことは事実である。以来60年近くを経たわけであるが,この間多くの学者によってこれが修飾され定義づけられたためその解釈もさまざまとなり,かえって昏迷をきたしたかの感がなくもない。かような意味から,まずアレルギーなる言葉の提唱されるに至った経緯を眺めてみたい。

座談会

第3回一般検査士試験をふりかえって

著者: 福井巖 ,   藤田信男 ,   水田亘 ,   吉田金三 ,   樫田良精 ,   富田仁

ページ範囲:P.302 - P.312

富田一般臨床検査試験は,昨年9月に第1回を東京で樫田先生の肝入りで始めていただき,ことしの7月に第2回を終えまして,やっと今度地方でもやってよろしいということになりまして,第3回を京都で引き受けたわけです。非常にたくさん志願者がありまして,総計383名でした。それも,京都府が112名,大阪府46名,滋賀県32名,兵庫県22名,奈良県24名,三重県16名,和歌山県9名,この近畿地方で大体200人でした。その他の地区としては,北海道,あるいは鹿児島と全国各地からあり,おもしろいことには東京からも受験者がありまして,結局,志願者総数383名,そのうち欠席者は34名,実受験者349名,合格者はあす発表です(221名)。このように,東京以外の土地で初めて資格認定試験が行なわれたという意味において,これを中心話題にして,この2日間の試験で経験されたことを振り返って話し合っていただこうと思います。まず関西でやったことの意義とかいうようなことで,福井先生から……

検査室紹介

浜松市医師会オープン病院の臨床検査科

著者: 小沼哲

ページ範囲:P.313 - P.316

まえがき
 近年,オープンシステム病院という耳新しい言葉が医療界のみならず,一般社会においても聞かれるようになって来ました。これは,ここ数年来,各地にそれぞれの地域医師会を単位とし各々の必要性によってオープンシステム形態の病院が設立され,現代の新しい医療理念へと向かって活動しているからであります。オープンシステム病院とは欧米においてはすでに常識となっている病院運営方式でありますが,わが国においてはその歴史も浅く,その数も純然たるオープンシステム病院および類似病院を含めても20病院程度ですが,要は地域医師に病院設備を開放してその機能を充分に活用し,患者一医師一病院の一貫的つながりを実現化しようとする医療形態であります。

研究

抗生物質感受性よりみたブドウ球菌感染症の現況—(ディスク法による感受性の検討を中心として)

著者: 小林稔 ,   高見寿夫 ,   滝上治 ,   栗原英雄

ページ範囲:P.317 - P.320

はじめに
 細菌が抗生物質または化学療法剤(以下薬剤と略称する)に対して耐性を獲得するという現象が重大視されるようになったのは比較的新しく,細菌の中でも特に赤痢菌・結核菌およびブドウ球菌(以下ブ菌と略称する)の3者がこの耐性獲得現象の高度なものとして注目をあびていることはすでに衆知のことである。ことに,ブ菌感染症は耐性獲得傾向が強いばかりでなく,病様が多彩であり一般感染症の大きな部分をしめるうえ,特殊な病院ブ菌感染症としてもその淫浸が臨床の各領域にわたるだけに,診断・治療上ばかりでなく疫学上多くの問題を有している。ブ菌のうちCoagulase陽性,Mannit分解のStaphylococcus aureusは特に耐性になりやすく,かつ数種の薬剤に耐性を有する傾向も高まりつつある。私たちは,昭和36年1月から昭和38年12月までの3ヵ年間細菌検査室に検査を依頼されたもののうちStaphylococcus aureusと同定した全菌株について,ディスク法による薬剤感受性をしらべその様相を概観したので報告する。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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