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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査8巻9号

1964年09月発行

雑誌目次

グラフ

腸炎ビブリオの検査

著者: 善養寺浩 ,   坂井千三

ページ範囲:P.679 - P.686

 ラ腸炎ビブリオは学名Vibrio parahaemolyticusといわれ,ビブリオに属する。コレラ菌とはコンマ状を呈しない点が異なるが,その他形態的にはよく似ている。この菌と鑑別上問題となる菌はAeromonas, Pseudomonas,Comamonasなどである。腸炎ビブリオは必ず鞭毛は1本だがこれらの菌は必ずしも1本とは限らない。写真①は腸炎ビブリオの電子顕微鏡像である。液体培養菌をみると多形性を示し,このような定型的なものの中に円形のものなどみられる。
 腸炎ビブリオは現在生物型1と2に分かれている。夏期腸炎患者から分離される生物型1の病原性は確かだが,生物型2の病原性は疑わしい。したがってこの菌の検索はつねに生物型1を対象とすべきで,生物型2が検出された場合はその旨を成績に明記しなければならない。なお腸炎起炎菌の検索に当って注意することは,夏期腸炎の原因菌としてこの菌が余りにも重視されてきているために,とかく既知病原菌の検索がおろそかにされがちである。したがって,この菌の検索と平行してつねに病原大腸炎菌にまで及ぶあらゆる病原菌の検索が可能な態勢をとっておかなければならない。

技術解説

ラジオアイソトープによる臨床検査

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.687 - P.692

 アイソトープとは原子番号が同一の核種であって質量数の異なるものをよぶのである。例えばリンは生体中にあるときはH2PO4—の形のものかHPO4—の形で存在しているものが多いがそのPの原子番号は15で質量数はすべて31のものばかりである。すなわち天然のリンのアイソトープはただ一種のみである。これに対して水素には質量数1のHと質量数2のD (重水素)とがあり,酸素には質量数16,17,18の三種のものが存在している。いずれも天然の元素であり,化学的にはHもDも水素として行動し,0-16,0-17,0-18はいずれも酸素として作用する。
 通常の水はH2Oで表わされるが,これらのアイソトープをすべて分離してみると,H—16O-H H—16O-D D—16O-DH—17O-H H—17O-D D—17O-DH—18O-H H—18O-D D—18O-Dの9種類のものがありそれらの混合物が通常の水を構成しているのである。

形態学のための採血法

著者: 松本坦

ページ範囲:P.693 - P.696

 われわれがしばしば血液標本をみせられて,その所見を求められる場合,標本がきわめて悪く,血球が小さく萎縮していたり,染色のあがりが悪かつたり,細胞が大部分破壊されていたりして,正確な判読ができない事が少なからずある。そして,もう一度標本をとつてみたいと思うと,すでに患者は遠方に行つていたり,ある種の治療をはじめてしまつていたりして,最初にみせられた時と同一の状態での血液像を得ることはできなくなつてしまつていることがあつて,甚だこまるものである。
 したがつて,血液標本は常に正しく作製することが要求される。とくにいかなる臨床検査室でもこの種の検査は,もっともroutineなものとして頻回に行なわれるものである関係上,検査室に勤務する人々が,常に血液の採取と,標本作製作には熟練していなければならない。

肺吸虫症の補体結合反応—その術式について

著者: 辻守康

ページ範囲:P.697 - P.702

 肺吸虫症の確定診断は,患者の喀痰あるいは糞便中より肺吸虫(Paragonimus westermani)の虫卵を証明することであるが,肺臓内で虫嚢を形成し,その中に本種吸虫が生棲する関係上,常にそれらの検体から虫卵が証明されるとは限らず,また脳,皮膚などの異所寄生例ではまったく患者の体外に虫卵が排出されないので,その診断は非常に困難である。そこで本症における免疫血清学的診断法が重要な意義をもつのであるが,そのうち皮内反応については,すでに千葉大学横川宗雄教授,九州大学宮崎一郎教授など多くの研究がなされ,それぞれVBS抗原,ppt抗原と呼ばれて,広く疫学的,臨床的にも用いられているのであるが,補体結合反応については,1956年に横川宗雄,粟野林両氏の発表により,その術式が確立されているにもかかわらず,あまり実施されていないようである。最近,本症の優れた治療薬Bithionol(Bitin)が見出されて以来,その診断および治癒判定の一手段として本反応の意義が高く評価され,多くの衛生研究所,保健所や病院より患者血清の検査を依頼され,また術式の説明を求められるので,肺吸虫症補体結合反応が各検査室で実施されることを望み,その術式についての解説を試みた。

Coulter counterによる白血球の算定—特にCetyltrimethylammanium chlorideを用いる方法

著者: 天木一太 ,   岩田弘

ページ範囲:P.703 - P.707

はじめに
 自動血球計算機が天木ら1)により検討されて以来,最近ではその種類も外国製品を含めて9種を数えており2),日常検査に利用されはじめている3)6)。特に赤血球の算定はどの器械も比較的簡単に算定され,その成績は正確で能率的である。白血球の算定についてもそれぞれ方法が報告されているが7)8),本邦では広くは行なわれていない。自動血球計算機で白血球の算定を行なうには,希釈操作の簡便化,抗凝固剤および赤血球溶解剤の選定とその使用法,白血球を障害することなく,赤血球を完全に溶解しなければならないことに,なほ問題がある。寺村9)は,Mount Sinai病院で行なっているCoulter counterによる白血球の算定にSaponinを用いる方法を報告している。この方法は希釈操作が簡単で能率的であるので,われわれもこの方法を用いて白血球の算定を行なってみたが,赤血球の溶解が完全でなく,gostが残って算定の障害になる。また白血球の変性が起こりやすく,15〜20分以内に算定をおわらなければならない不便がある。その他赤血球溶解液として,酢酸4)や塩酸10),TritonX−10011),Cetavlon12)などを用いる方法が報告されているが,いずれも試薬調製,あるいは希釈操作が煩雑である。われわれは白血球の算定に赤血球溶解液として,Ce-tyltrimethylammonium chloride CH3(CH2)15(CH3)3NC1.東京化成,米国の商品名Cetav-lon,を用い,その算定方法について検討を行なった。その結果,赤血球は完全に溶解してgostがなく,白血球の変性も緩慢であって,溶解液を加えてから5時間以内は算定値に変動がなく,希釈操作も簡単で,再現性がよく,白血病症例でもよい成績を示したので,日常検査に使用している。

臨床検査放談

臨床検査の現状とその理想像を語る—簡易検査はどうあるべきか

著者: 丹羽正治 ,   北村元仕 ,   松村義寛

ページ範囲:P.716 - P.726

 松村今日は臨床検査の草わけと申しますか,昔からずっと臨床検査の方面にタッチされている虎の門病院の北村先生と,国立東京第二病院の丹羽先生の対談会という形式で,臨床検査にまつわるいろいろのお話を伺おうという試みでございます。読者の方には,両先生ともきわめてなじみの深い方ですので,早速お話を伺いたいと思います。

講座 やさしい電気の知識 1

電気エネルギーとその供給

著者: 宇都宮敏男

ページ範囲:P.727 - P.729

はじめに
 連載ものとして本誌に電気知識の講座を1年間の予定でもうけることになった。臨床検査面でいろいろ応用されている電気機械器具を,たんにスイッチの操作だけで使用すればよいものとしないで,それぞれに常に親しみと興味をもってもらうための素養をつんでもらうのを本講座の主目標としたい。これが電気を誤まりなく取扱うこつである。
 今回ははじめであるから,まず電気エネルギーの量的把握と配電の原理について説明しよう。

検査技術者のための臨床病理学講座4

血液形態学的検査の臨床的意義(1)

著者: 日野志郎

ページ範囲:P.730 - P.733

I.病気による血液の変化
 血液は全身をめぐり,各臓器が生きていくうえに必要なはたらきをしている関係上,それら臓器に変調があると,その原因あるいは結果として,これを敏感に反映する。したがって,血液の変化から逆に各種臓器の変調を知ることができるので,血液の検査には大きな意義がある。
 しかし,血液といっても,赤血球,白血球,血小板のような有形成分と,血漿と呼ばれる液状成分からなっており,液状成分に関する変化については,生化学,血清学,血液凝固学などで扱うので,ここでは言及しない。
 血液の有形成分についての検査が形態学的検査であり,これを真に理解するためには,有形成分がどこでどのように作られ,どんな形ではたらき,どのように死滅していくかを知らねばならない。このような移り変わりを血球回転(hemocytokinetics)と呼び,これについての知識はしだいに集積されつつあるが,まだ発展の途上にあることでもあり,最小限の記述にとどめておくことにする。

英会話

Laboratory English—No.4

著者: 河合忠 ,   河合式子

ページ範囲:P.734 - P.736

研究

オートアナライザーによる臨床化学分析法の検討と考案—(2) Reitman-Frankel法の応用によるトランスアミナーゼ測定法

著者: 金井正光 ,   野本昭三 ,   田中幸江

ページ範囲:P.737 - P.742

 血清トランスアミナーゼ活性の測定はその臨床的意義の重要性から,臨床化学検査項目の中で最近最も増加の著しいものの1つであり,測定法の簡易化,能率化が重要な問題となっている。Reitman-Frankel法1)は操作が簡単で,GOT,GPTを同一手技で測定でき,Karmen単位換算値が得られ,広く採用されている2)。しかし本法は基質濃度,発色条件により微妙に影響されるため,試薬濃度,実施操作に厳格な規制が必要であり2,3),また原血清での測定幅が狭く,高単位血清では希釈により活性値の変動がみられる4)など2,3の欠点をもっている。
 筆者らはAuto Analyzer(Technicon Instruments Corp. Chauncey,N. Y.)の優iれた時間的,機械的条件の恒常性を利用し,原法の特長を生かすとともに,精度,正確度がよく,約2倍の測定幅をもつGOT,GPTの自動連続比色法を考案し発表した5)が,本稿ではその後の若干の改良を含め,希釈誤差,分光光度法との比較などについて検討した結果を報告する。

第11回臨床病理技術士(二級)第4回一般臨床検査士資格認定試験筆記試験問題・模範解答および講評

著者: 石井暢 ,   小酒井望

ページ範囲:P.744 - P.750

第11回臨床病理技術士資格認定試験を終えて
 このほど第11回臨床病理技術士(二級)資格認定試験が行なわれた。これは夏の季題としても,なんら違和感を伴わないほどのものとなっている。試験は東京大学,慶応大学,慈恵医大,医科歯科大学で実施されたが,その間の受験者の連絡も最近の交通渋滞にも拘らず,規定時間内に一応,滞りなく保たれていた。しかしながら,例年受験者数の増加をみ,今回それが最高となり,延1900名にならんとした。この数は規定期間内での受験者数のほぼ限界と考えられるものであり,したがって近々これを上まわる場合を想定して,試験方法その他について緊急に対策を講じなければならないものと思われた。試験期間の一日を緒方試験委員長のお伴をして各科目の実地試験の現況とか準備状況を見学する機会を得た。本年度は特に樫田委員のきもいりで,厚生省のほか文部省大学学術局からも担当官が同行された。試験の規模は一言にしていえば壮大ということであろう。各科それぞれ特色はあるが,いずれにおいても主任試験委員をはじめ各委員が献身的に準備され試験を担当されている。これはいうまでもなく斯界に貢献するという意欲のみがこれを支えているのであるという感をさらに深くした。
 このような試験に受験して日頃の知識,技術を客観的に評価される受験者は幸福といわねばならない。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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