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雑誌目次

論文

臨床検査9巻1号

1965年01月発行

雑誌目次

カラーグラフ

尿定性検査

著者: 林康之

ページ範囲:P.6 - P.7

 尿定性検査は病院の検査技師になるまで,あるいはなってから誰もが一度は経験するかんたんな検査である。手技や判定には特にむずかしいところはない。ところが一般検査全体としてみたとき,臨床と最も密接に結びつき,しばしば予期しない問題に出会うことがあり,些細な異常も見逃さないようにすることは非常にむずかしい。ここに示したのはごくありふれた定性反応の陽性の色調とその対照で,一枚を除いては直ちにどの反応であるか見当付けられると思う。

グラフ

大阪にできた二つの臨床検査センター

ページ範囲:P.9 - P.16

 大阪市に,開業医の臨床検査サービスを目的とした,二つのサービス検査センターが出来た。一つは日本商事株式会社の事業部である近畿臨床検査センター。一つは塩野義製薬株式会社の検査センターである。双方共通していえることは,企業体がサービス事業としてはじめたもので,利益をあげることを目的としていないことと,設備のデラックスなことである。そして,もう一つは,病院とちがって,地域の開業医からの検体の集配という問題があること。それぞれが検体をいかに検査室に事故なく持ってくるかの工夫がこらされている。
近畿臨床検査センターではベテラン技師富岡和実氏を迎え,塩野義製薬では,細菌の井上恵美子医学博士を迎え,設備その他の万全を期そうとしている。それぞれ,自慢の箇所をご披露いただいた。(編集部)

展望

酵素化学の臨床検査への応用

著者: 織田敏次

ページ範囲:P.17 - P.20

はじめに
 酵素活性の測定が臨床検査に応用されたのは,血清のアミラーゼが膵炎のばあいに上昇する事実にはじまっている。Wohlgemuthが1908年にみいだした知見であることはご承知のとおりである。しかも,この年にはGarrod(1908)のInborn errors of metabolismの初版が出版されている。この2つの業績が,今日の臨床酵素学の先鞭をつけたものであることはいうまでもない。もっともこの初版には,アルカプトン尿症をふくむ4つの先天性代謝異常が記載されているにすぎないが,今日では300種にもおよぶ疾患がこのカテゴリーに包含されようとし,そのうちの約20種ぐらいの病気については,遺伝的に欠損する酵素まであきらかにされている。代謝という面からながめれば,かなりの病気にそのような代謝異常が求められるにちがいない。
 それがまた生れながらの体質異常,したがって病気の成立病理につながってくることも当然考えられてよいはずである。たとえば糖尿病や痛風にしても,先天的な体質異常あるいは代謝異常が根本に横たわっていると考えたほうが,理解に便利である。

技術解説

血清銅の定量法

著者: 小沢真次郎

ページ範囲:P.21 - P.24

はじめに
 血清中の銅は蛋白と結合して存在し,極めて微量(100〜200mcg/dl)である。
 その測定には,先ず血清に酸を加えて銅を蛋白から遊離させ蛋白を除去した後に鋭敏な銅の発色試薬を加えて比色定量する方法が行なわれている。

嫌気性菌の培養法

著者: 中川正明

ページ範囲:P.25 - P.29

はじめに
 現在,細菌検査を行なっている臨床検査室で,嫌気性培養を併用しているところは非常に少ないようである。かなりの設備をもった大病院の検査室もそれを省いている。このように嫌気性菌培養が一般的でないのは,検査の手順(分離・同定の進め方)がはっきり確立されていないこと,および嫌気性培養の煩雑さにあるように思われる。本報では後者について主として解説し,分離同定に関して簡単にふれることとしたい。

話題

第11回日本臨床病理学会総会印象記

著者: 米山達男

ページ範囲:P.30 - P.31

 編集部より印象記執筆の依頼を受けたのは総会の始まる数日前のこと,さて何処に焦点を合せて書いたらよいかと考え,編集部に相談したところ,私の感じたままでよいとのこと,また地方の会員で今回出席できなかった方々に学会の様子を伝えることに主眼をとの要望であった。しかし発表されたものの内容については,機関誌「臨床病理」に掲載されるので,また私自身は10年以上この分野の勉強をしてきたが,長い国外での臨床病理学のトレーニングのために,事実上この学会には初めて出席するに等しいという理由で,内容についての紹介および,過去の本学会との比較は,書くことができない。したがって,ここでは,私の臨床病理学に対する考え方と,学会での印象の差について書いてみたいと思う。

アメリカの臨床病理学会最近の動向—とくに衛生検査技師の問題について

著者: 河合忠

ページ範囲:P.32 - P.33

 アメリカ臨床病理学会(American Society of Clinical Pathologists ASCP)とアメリカ病理医協会(College of American Pathologists CAP)との1964年合同総会が去る10月17日から10月25日までフロリダ州バルハーバー市アメリカナ・ホテルで行なわれた。私も会員の1人として出席する機会がえられたので学会の様子を簡単に紹介するとともに,とくに衛生検査技師に関連の深い問題などについてお知らせする。
 バルハーバー市は有名なマイアミビーチ市に隣接し実際にはマイアミビーチの広大なホテル街に引続いている。気候は絶好で総会開催中1日を除いてすばらしい秋晴れであった。まだ多くの人々が海水浴を楽しんでいるほど暖かい世界的観光地である。

座談会

医学カラー写真のとりかた

著者: 天木一太 ,   井出弘 ,   永納文雄 ,   西崎悦司 ,   広瀬文雄 ,   細谷克己 ,   村山勇 ,   高橋昭三

ページ範囲:P.42 - P.50

カラー写真の原理
 高橋司会) 近頃の日本の病院でのカラー写真のとりかたといいますと,一頃に比べれば時代が変わったと思うほど多くなっていまして,一頃は絵を書いていたんですが,その代りにカラー写真がよく使われるようになっています。カメラについても,近頃はメディカル・ニッコールといつた医学用のレンズまででている時代ですので,今日はカラー写真の撮り方について,いろいろお話を伺いたいと思います。
 最初に村山先生に「カラー写真というものは」というお話をしていただきたいと思います。

臨床検査室のエチケット

細菌検査室の場合

著者: 清水喜八郎

ページ範囲:P.51 - P.53

 人間生活を明るく楽しく,人間関係をスムースにするためには,まずエチケットを心得ていなくてはならないことは誰もが知っていることです。誰も同じように,ある一つの型にしたがって行動するならば,何の摩擦も,障害もおこりません。
 そのためにエチケットが存在するのです。

講座

顕微鏡写真のとりかた

著者: 西崎悦司

ページ範囲:P.63 - P.66

 EEカメラを使用すれば難しい理くつなしに良い写真がとれる時代です。顕微鏡写真も器械の進歩と露出計の使用によつて長年の経験とカンを必要とした時代は過去のものとなりました。しかしながら極めて限定された条件のもとで撮影しなければならない点において正確に守らなければならない要件が少からずあります。次に顕微鏡写真における一般的,常識的な心得とともに顕微鏡写真撮影に必要な諸要件を筆者の経験をもとに述べてみたいと思います。

検査技術者のための臨床病理学講座8

髄液検査

著者: 林康之

ページ範囲:P.54 - P.57

 髄液は脳室,蜘蛛膜下腔を満している水様透明な液で,解剖学的に側脳室,第3,第4脳室の脈絡膜叢(P1 exius Chorioideus)とよばれる部分の上皮細胞からでてくる。そして髄液は血液が滬過きれて,いろいろな血液成分のすべてにわたって希釈された液と考えられるような組成をもっており,髄液のみに存在して血液中には見あたらないという化学成分はない。
 また髄液の最も大きな生理作用と考えられるのは頭蓋内,脊椎腔内にある中枢神経系の保護であり,髄液検査の対象となる病気はほとんどが中枢神経系疾患であると考えてよい。

私の工夫

ユニーグラフにおける同一温度と時間差における判定基準方法

著者: 金山政男

ページ範囲:P.57 - P.57

 ユニーグラフは我々小病院に勤務する技師は,簡易検査法の一つとして奨励されています。検査法が簡単だけれども一つ誤れば結果はどう成るかは諸先生方も御体験あることと思います。原理は一枚の試験紙の下層部に強力高力価のureaseと炭酸カリウムを滲透させ,毛細管現象により被血清を上昇させ血清中の一定量含有するアンモニアガスを遊離し,これを肉眼的に定量しようとして,その上層部に指示薬として,ブロムクレゾールで呈色させ判定しようとするのであります。そして温度差と時間とで誤差が生じそこが大きな難門点でありました。多数の先生方がいろいろ工夫され,ある先生は37℃フラン器内に放置後計測して各自方程式を製作して値を出し,ある先生は原法と同様に実施し各温度における係数を見付けて補正しながら検査を試みておられますが,これでは逆に時間が長く成り本当の意味での至急用としての意味がうすれているように思われます。
 以下われわれが実施している方法を御紹介致します。別図のようにI II III点を決定します。

貭疑応答

溶血度の判読

著者: 鈴田達男 ,   吉岡秀雄

ページ範囲:P.58 - P.59

質問
補体結合反応の溶血度を,光電光度計により判読する方法
①百パーセント溶血法の場合

英会話

Laboratory English—No.8

著者: 河合忠 ,   河合式子

ページ範囲:P.60 - P.62

At the histology laboratory
Sunny: Good morning, sir. Are you Mr. Latimer?
 Technician: No. Mr. Latimer is not here at the moment, but he will be in soon.

研究

滬紙電気泳動法における血清蛋白分画抽出法の検討

著者: 屋形稔 ,   土田雅子 ,   高橋哲子

ページ範囲:P.67 - P.70

はじめに
 従来,滬紙電気泳動法に関しては,蛋白の滬紙への吸着や各種の泳動条件(電流,電圧,泳動時間),定量法などによる測定値のバラツキなど,いくつかの問題点はあるが1)−4),一度に多くの検体を処理することができる点が,特に中央検査部の如きところにおける検査法として多く採用されている理由である。われわれも検体の増加に伴い,種々の点で優れた方法であるTiselius法から本法へと移行したが,その際上述の諸点を主として,かなりの検討を加え,また正常値も求めたのでその成績の大要を報告し,大方の御参考に供したい。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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