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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査9巻11号

1965年11月発行

雑誌目次

カラーグラフ

細胞診における悪性細胞の基本形

著者: 高橋正宜 ,   浦部幹雄 ,   小林仁子 ,   稲田次郎

ページ範囲:P.950 - P.951

 悪性の標本を手にするとき注意すると,悪性細胞の形状の種々あることに気づかれる。同一スライド中の悪性細胞の形態はほぼ均一であるが,多様性を伴うこともある。パパニコロの診断区分に留らず,ばらばらになった時計の部品を組み立てるように個々の悪性細胞を集約する試みがCytogram作製の本質である。その結果,組織型への接近をはかることができる。そのためには個々の異型細胞,悪性細胞すべての形態の把握が必要であるが,今回は悪性細胞の基本形のみ図示する。

グラフ

真菌鑑別における注意すべき所見

著者: 川北祐幸

ページ範囲:P.953 - P.960

 真菌の同定は,肉眼的集落の検査,顕微鏡的形態の検査および生化学的検査が基礎になって行なわれている。肉眼的集落は,酵母様真菌以外では,大略の見当をつけるのに役立ち,さらに顕微鏡的精査により,同定が行なわれ,酵母様真菌では,まず顕微鏡的形態にはじまり生化学検査で最終的同定が行なわれる。ここでは皮膚糸状菌をのぞき,わが国で真菌症として,しばしば話題になる菌を中心にその同定鑑別時に注意しなければならないことを述べてみよう。
 まず第一に注意することは,自然界にこれらの菌の同属が非常に多く存在し,検体の汚染,無菌操作の不手際などからすぐに培地上に生えてくることがある。次は,真菌の胞子を不用意にあつかうと,孵卵器,あるいは実験室が汚れ,これらの汚染がたえずおこるようになることである。

技術解説

抗酸菌の生化学的分類

著者: 今野淳 ,   大泉耕太郎

ページ範囲:P.961 - P.968

はじめに
 細菌の分類の基準として世界的に定評のあるBergeyのManual of Determinative Bacteriology1)(1957)によれば抗酸菌は表1のごとくに分類され,このうち人癩菌を除いては,人間に病原性を示すことの明らかなものは温血動物寄生性抗酸菌のうちの人型結核菌(M. tuberculosis)と牛型菌(M. bovis)および人皮膚潰瘍をつくるM. ulceransであるとされ,また培地上で28℃で迅速に発育する,いわゆる雑菌性抗酸菌のなかではM. fortuitumが人間に寄生性ありとされている。もとより人間に結核性疾患を惹き起こすものとして臨床的に重要なのは人型結核菌および牛型菌であり,したがってこれらを動物試験およびその他の生物学的性状より鑑別しさえすれば実際上さしたる問題はなかった。ところが,1935年にBuhler and Pollokが肺結核と同じ病変を有する患者からくりかえし培養された,従来知られていた抗酸菌とは異なる抗酸菌いわゆる非定型抗酸菌(atypical acid-fast bacilli)に関する報告を行なって以来,同様の報告があいついでなされ,人間に結核菌による病変と病理学的にもレントゲン像の上からも全く区別のできない肺疾患を起こす一群の抗酸菌の存在することが次第に明らかとなった。

やさしい原子吸光の話

著者: 高原喜八郎

ページ範囲:P.969 - P.974

はじめに
 原子吸光または原子吸光分光分析法ということばは,開発されてまだやっと数年にも満たない新らしい元素分析方法の用語であり,はじめてこのことばに接する人々は大変特殊なむづかしそうなムードとしての感触をうけるのであるが,原子吸光そのものの現象は実は100年も昔から知られていたのである。中学以上で物理を習った人や,日光のスペクトルに関心をもつ人ならば,フラウンホーフェル線(Fraunhofer's line,以下フ線と略す)の名前はべつにこと新らしいものではない。このフ線の出現する機序が実は原子吸光そのものの現象であることは,すでに1832年,イギリスのD.BREWSTERによって説明されていたのである。さてフ線は太陽光線を分光器で観測するとき,みいだされる黒い吸収帯のことをいうが,その出現する部位(波長)が一定しているために,A,B,C,D……M,N,O等の名でよばれている。これらの吸収帯の出現する位置の波長は,表1のごとく,実は各種元素の原子が熱エネルギーなどで励起されたとき発射する光の波長と一致している。これは太陽の周辺にガス状となった各種元素の原子がとり巻いているところへ,太陽の高熱で励起された各元素原子からの光が貫通するとき,ガス体中のある元素の原子は,同一元素の原子から発射された光を特異的に吸収するためによっている。

私の工夫

心電計誘導コードのからみ防止法,他

著者: 森田充

ページ範囲:P.968 - P.968

 心電計を取扱っている者の悩みといえば誘導コードのからみである。これを廃品利用で簡単に防止できるのでおしらせします。心電図記録紙の芯を図のようにコードの数だけセロテープまたは絶縁テープでぐるぐる巻き固定します,そこへコードを通せばでき上りです。
 使用直前に点線の図のようにコードの根本まで上げます。使用後ははずしたらすぐコードの先まで実線のようにおろします。

病院内輸血業務部について

著者: 大河内一雄

ページ範囲:P.975 - P.979

《病院内輸血部の業務の特殊性》
 数年来,輸血後の肝炎が多くなってきたという理由から,各方面から輸血についての反省がなされている。血液は人間の体からしか得られないものである以上,誰かがそれを提供しなければならないのは当然のことであるが,最近までは,この解決を,もっとも容易な方法に求めてきたのであった。つまり金で買うということをやってきた。しかも,ほとんど由来の不明の血液をである。本来ならば,輸血さるべき血液は,たとえそれが受血者に直接知らされなくとも,どこの誰さんの血液で,健康な人からのものであるという保証がなければならないはずのものである。このような血液の由来を考えるとき,輸血という医療行為は単なる治療手段ではなく,ビタミン剤や,抗生物質の投与と同一視されるものではなく,社会的な背景,人間同志のつながりを基盤としたものであるといえる。そうすると,当然のことながら,病院内の輸血部の活動は単なる薬品倉庫,あるいは臨床検査室であることが許されなくなってくる。ここに病院内輸血部の作業の第一の特殊性がある。ついで,一般の臨床検査室においては,たとえどのように異常な結果が生じてもそれはそれだけのことであり,検査技術者も,そのまま,そのように報告さえすればよいであろう。

今年の人事院勧告とその背景

著者: 佐藤乙一

ページ範囲:P.1002 - P.1007

まえがき
 人事院は今年もわれわれの予測したとおり8月13日に政府と国会に対して国家公務員の給与について「勧告」を行なった。
 衛生検査技師会は本年始めからこの勧告にむけて渉外部,法規部を中心として全役員が参加のうえ,48名にものぼる延人員を動員して人事院に対して陳情を行ない,他の有誼団体,(厚生省診療X線技師会,栄養士会)らとの運動を巾広く行なつてきた。この三者の動員数をあわせれば実に100余名に達している。本会はかねてから給与の改善,社会的および医療機関内における位置づけを改善するため医療II技師会(本会と厚生省診療X線技師会)及び医療II懇談会(本会と厚生省衛生検査技師会<以前の病細協>全診療X線技師会,栄養士会)を結成し,地道な運動をつづけてきたところである。

座談会

衛生検査技師養成所夜間コースをめぐって—その問題点と実情をきく

著者: 樫田良精 ,   小酒井望 ,   鈴木謙司 ,   徳平滋 ,   三浦英夫

ページ範囲:P.988 - P.996

 検査技師養成所の夜間コースが東京の北里衛生科学専門学院では今年の四月から,川崎市の京浜学園では九月からそれぞれスタートしました。ここでは,北里の実情を中心に,夜間コースのかかえる問題をそれぞれの立場から話し合っていただきました。

講座 検査技術者のための臨床病理学講座17

細菌検査—感染症と病原体検索の進め方

著者: 小酒井望

ページ範囲:P.997 - P.1001

 感染症の原因をしらべ,その原因が培養可能な細菌の場合には,その細菌の各種化学療法剤に対する感受性,(または耐性)をしらべるのを,微生物学的検査(細菌検査という言葉は文字通りにとると真菌,リケッチア,ウイルスは入らないが,ふつうは微生物検査と同じ意味に使われる)という。なお感染症の原因をしらべるには病原微生物を検出する方法と,その病原微生物によって生体内に産生された抗体をしらべて,感染の原因となった病原微生物の種類を知る血清学的方法(血清反応)とある。
 いいかえると,細菌検査の内容は次の三つに大別できる。

研究

インドサイアニン・ゲリーン試験の実用簡易化に関する検討

著者: 前田耕治 ,   漆畑勳 ,   大林弘幸 ,   財間尚夫 ,   早矢仕孝也

ページ範囲:P.1008 - P.1010

はじめに
 1957年Foxらは2),Tricabocyanine系の色素,In docyanine Green(ICG)を循環動態の研究に応用し,その特徴として血中消失の早いことを述べている。その後,ICGの胆汁中への排泄の高率なことが認められ5)7),最近,肝の排泄機能検査に応用されるようになった3)4)6)。われわれは今回,肝機能検査法としてのICG法について,基礎的ならびに臨床的観察を行ない,とくにその簡易化を試みたので,ここに述べることにする。

アルカリフォスファターゼ測定法—Kind-King法とBessey-Lowry法の比較

著者: 伊藤洋子 ,   舟山鉄雄 ,   田村陽子 ,   久間木国雄 ,   佐藤清蔵 ,   鈴木秀男

ページ範囲:P.1011 - P.1014

はじめに
 血清アルカリフォスファターゼ活性値(以下AlP値)測定は,主として肝,胆道疾患の鑑別診断に大きな意義をもっている。われわれの病院では,黄疸指数,チモール混濁試験,硫酸亜鉛試験,膠質金反応とともにAl.P値をルーチンの肝機能検査として行なっているのでその測定件数は月400件前後におよび,限られた数の技術者が他の検査と併行してこの程度の件数をさばくためには測定法は正確な値が得られしかも操作の簡単なものを採用する必要が生じてくる。
 われわれは,AIP値測定にBessey-Lowry-Brock法1)2)(以下B-L-B法)を採用しているが,最近日本消化器病学会肝機能研究班でKind-King法(以下K-K法)を標準法に採用したので3)4),この両法を比較実験し検討を加えてみた。

血清タンパクの滬紙泳動法とセルローズアセテート膜泳動法による成績の比較

著者: 熊倉奈津子 ,   福井玲子

ページ範囲:P.1015 - P.1018

序論
 1957年,英国のKohn1)により考案されたセルローズアセテート膜を支持体とする電気泳動法は春日(1962)2)小川(1953)3)4),島尾(1963)5)阿南(1963)6)門間(1964)7)らによって,従来の滬紙法にくらべ,タンパクの吸着が少なく,各分画の分離が迅速,かつ明確で再現性もよく,ほぼ透明化し,また多数の検体を短時間に処理することができるなど多くの利点をもつと報告されている。そして血清のみでなく,糖タンパク1),リポタンパク1)の泳動,アイソザイムの分離8),および免疫電気泳動9)にも利用されている。
 われわれはセルローズアセテート膜による血清タンパク分画の成績を炉紙のそれと比較し.またAIG比を同一検体について塩析法と泳動後,抽出比色によって求めた値を比較したのでその結果を報告する.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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