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雑誌目次

論文

臨床検査9巻3号

1965年03月発行

雑誌目次

カラーグラフ

氷結切片標本

著者: 榎本真 ,   須山貞子 ,   石田康子 ,   山野美恵子 ,   中静洋子 ,   和田朋子 ,   萱野幸子

ページ範囲:P.184 - P.185

 固定した標本を氷結し薄切する方法は操作が簡単で速やかにできるため,手術中の迅速診断などにひろく愛用されている。しかしなにぶん短時間に大急ぎで標本を作らなければならないので,立派なものを作るのは案外むずかしい。ホルマリンによる加温固定は組織を必要以上に収縮・硬化し,また切片も厚目のため自然の状態とはかなりかけはなれ,かつ見にくいものとなる。したがって検鏡して所見をとる病理の専門医はこの標本の特徴になれることが必要であり,また手術材料をおくる外科医にも氷結切片検査法の価値と限界をよく理解してもらわねばならない。
 われわれのところでは5分以内に標本を作ることが要請されているので,その方法として試験管に組織片とホルマリンを入れて煮沸固定(1分位),氷結による薄切(10μ内外),DETEC (MERCK社)液中で5秒程切片を透化し,しわをのばし,ヘマトキシリンによる単染色(必要に応じ,エオジンとの重染色)をおこない,すくいあげた切片はグリセリンで封入している。あたりまえのことだが,きずのないよく研いだ刀を用い,一つ一つの操作に細心の注意をはらうことが良い標本を作るコツと思う。

グラフ

ガンととりくむ検査室—川崎病院・癌研究所・臨床病理部

著者: 中川定明

ページ範囲:P.187 - P.192

 川崎病院・癌研究所の臨床病理部は,実質は中央検査室に近いが中検とはいわない。それには2つの理由がある。独立した診療部門の一環としての使命感とプライドによって,より良いサービスを患者に提供していこうというのが1つ。癌を中心とした臨床病理学的な研究を行なっていこうということをいま一つの目標にしているからである。理想と現実の間にはまだまだ距離があるが,歩一歩努力を続けている。廊下などを除いた実質面積は234mm2で病院総面積の約3.4%にあたり,目下かなり手狭になってきた。病理組織室及び細胞診検査室(技術員と助手3名),血液一般検査室(同6名),化学検査室(同5名),細菌・血清検査室(同4名),生理検査室(同2名)から成り,医師は部長1名,兼任の室長4名,パートタイマー2名の人員構成である。1963年度の総検査件数は約20万件であった。夜間当直は置くにいたっていない。その代り緊急検査セット箱を定位置に備えて,当直医に検査を委ねている。

出血時間の測定法

著者: 河合忠 ,   田村節子

ページ範囲:P.193 - P.194

 出血時間の測定は生体の止血現象を綜合的に検査するただ一つの方法である。原則として止血現象に関与するすべての因子が影響するが,刺傷が小さいため,主として毛細血管の機能が影響する。刺傷の程度,流出した血液の吸い取り方などにより検査成績に大きな変動を示すのでなるべく一定条件の下でおこなうように努力する。一般に用いられている方法としてDuke法とIvy法があるが,出血傾向のある患者ではとくにIvy法を用いている。その理由として,出血が長びく場合,とくに子供の場合には耳朶の圧迫が困難であるが,Ivy法では圧迫繃帯をすることにより容易に目的を達することができ,また検査成績のバラツキも少く必要ならば同じ条件の下でくりかえし検査することができる。血液を吸い取る場合も耳朶より前腕屈側の方がおこない易い。

新しく検査技師になる方へ

実感的衛生検査技師論,他

著者: 舘野捷子

ページ範囲:P.195 - P.200

 学校を卒業した当初は誰しも,相当な期待と抱負をもって就職するのではないかと思います。とくに検査の仕事の尊さとむずかしさについては,学校で,くりかえし聞かされていますので,責任の重さに「やせる思い」を体験するのが普通でしよう。検査室の仕事をするようになって,学校時代の友達などと会いますと,申し合せでもしたように,数限りない失敗談が語られます。誰さんは患者さんの耳たぶを裏側まで切ってしまったとか,培地を滅菌せずに,全部シャーレにまいてしまったとか,検体を結果のでるまでまたず,処分してしまい,後で,青くなったり赤くなったりしてしまったとか。
 しかし,病院臭といいましょうか,検査室臭といいましょうか,そういった臭いが,身体や衣服にしみこんで,検査室から家にもちかえったノートですら,「妙な臭いがするよ」などと家の人からからかわれたりするころになりますと,仕事にも少しずつなれてきます。そして検査の仕事などというものは,案外単調なものだといったような,不遜な自信めいたものがでてくるのです。ある人は,単調でつまらないから仕事はやめるといって退職するし,またある人は,われこそは天下の衛生検査技師と胸を張るといった具合にです。

技術解説

髄液の検査法

著者: 横田万之助

ページ範囲:P.201 - P.205

はじめに
 髄液の検査は,検査物件数としては年間を通じてあまり多いものではない。しかし,これは病院の特性にもよるものであろう。たとえば,伝染病のある当院では中央検査室で扱うもののみで年間におよそ120件内外にあり,このほかに,医師自身で調査するものを加えると,約150件という数字が出てくる。季節的には日本脳炎の好発季節である6〜9月にやや多いのは当然のことである。
 このように,髄液の検査件数は一般検査においては多い方に入る部類のものではないが,その検査法においてもいろいろと考え直さねばならぬ点も少くないし,また,最近の感染症の知見の進歩に伴つて,細菌学的検査の面では更に深い注意が必要となりつつある。

血液検査データの読みかた(2)

著者: 日野志郎

ページ範囲:P.206 - P.210

I.網赤血球数
 網赤血球の約1/8は,古い死にかけの赤血球ではないかとの意見(妹尾)があるが,一般には,核がとれた若い赤血球だと考えられている。若い赤血球のなかに残っているリボ核酸(RNA)が,生体染色によって顆粒状あるいは網状に染めだされるのである。
 骨髄のなかには,赤芽球とほぼ同数の網赤血球があると考えられ1),それが血液へつぎつぎに出てきて,1〜3日のうちにRNAを失って成熟赤血球になる。適度な低酸素血症のような条件のもとでは,それが刺激になって骨髄内の網赤血球が血中に出てきて,血中の網赤血球数は約2倍になる1)。このばあい,骨髄内の網赤血球は血中の網赤血球に比して網状体を多く含んでいるので,網状体の多い網赤血球が血中にふえる。すなわち,Heilmeyerの分類でIV型の方からI型の方へ推移する。そればかりでなく,しばしば赤芽球が血中に出てくるから,そのようなばあいは特殊の条件下にあることが推移される。

菌交代現象と耐性獲得

著者: 長田富香

ページ範囲:P.211 - P.216

はじめに
 1933年Domagkらによるプロントジルの発見,1929年Alexander Flemingのペニシリンの発見に端を発した化学療法剤による細菌感染症の治療は,相次いで発見される有効な抗生物質により画期的成果をおさめつつあるが,その反面これら有効な化学療法剤使用により生体側に起る様々な現象,あるいは感染菌側の変化などのいわゆる化学療法の副現象といわれるべきものについて常に考慮が払われねば,化学療法の効果を十二分に駆使することができないのである。そこで1963年第16回日本医学会総会シンポジウムで各方面から論じられた化学療法の副現象のうち,生体側におこる菌交代現象および感染菌側におこる耐性獲得現象にスポットをあてて,大学病院中央検査室における検査記録からこれらの現象を解説してみたいと思う。

特報

養成所の夜間コース設置について

著者: 松下廉蔵

ページ範囲:P.225 - P.227

●夜間コース設置の趣旨
 現行衛生検査技師法は,昭和33年に制定されたものであり,この法律による免許をうけた者でなければ,衛生検査技師の名称を用いて細菌学的検査その他各種の衛生検査を行なうことができないこととされていることは,周知のとおりである。免許をうける資格としては,原則として高校卒程度以上を入学資格とする文部大臣指定の学校(大学,短期大学またはこれらに附設された各種学校)または厚生大臣の指定する養成所(前記以外の各種学校)で二年以上修業し,厚生大臣の行なう衛生検査技師試験に合格することが必要とされている。このための指定養成施設としては,昭和39年12月末現在で学校8ヵ所,養成所21ヵ所,計29ヵ所となっており,卒業生は年間約800人である。免許をうけている者の数は,昭和39年3月末現在で,法施行当時実務経歴2年以上ある者として受験資格を認められ,免許を受けた者をも含めて,14,574人となっている。しかし,近時の医学および関連部門の学問の進歩に伴なって,臨床面公衆衛生面のいずれにおいても,検査の重要性は急激に増しつつあり,このために必要な職員の数は約3万人と推定されている。従って,この差の約15,000人は,衛生検査技師の免許を有しない者が,検査業務を行なっているものと考えられるわけである。

座談会

病院の中の検査室—《国立横浜病院の場合》

著者: 加藤新 ,   津野道子 ,   中橋勇次郎 ,   新述東太郎 ,   藤沢俊雄 ,   松村義寛 ,   樫田良精

ページ範囲:P.228 - P.237

 司会(樫田)きようのテーマは病院の中の検査室というテーマです。最近病院の中で中央検査室がどんどん発展してきました。よい診療を行なうために科学的な根拠としてのよいデータが必要ということで診療と直接結びついた重要な仕事を検査室がはたしているような時代になって参りました。中央検査室というのは割合に歴史が浅いために病院としてもいろいろな問題を含んでいると思います。それできようは国立横浜病院の先生方および検査の御担当それから看護婦さんのほうの代表を交えまして,一つの病院を中心にして検査室の病院の中に占めるいろいろな問題をお話合い願いたいと思います。最初に病院のあらましを加藤先生からお話しいただきたいと思います。

講座 検査技術者のための臨床病理学講座10

臨床化学検査(2)—血漿蛋白質検査とその臨床

著者: 河合忠

ページ範囲:P.238 - P.241

 血漿は血液の液状成分の総称であって血液の約55%を占めている。この液状成分のうちには数えきれぬ程の無機物および有機物が含まれている。その中で蛋白質は最も多く含まれる成分で正常人では6.5〜8.Og/dl含まれている。そして血漿蛋白質はいろいろな機能的役割りをもち,これによって血漿は体内における窒素の供給,体外からの侵襲や外傷に対する防ぎょ,体内のpHや滲透圧の保持,ならびに細胞の活動や機能の調節に役立っている。したがって,血漿蛋白質は生命の維持に重要な役割をもつと共に,体内の代謝により鋭敏に影響され,各種疾患で,多少とも変化を示し,この動きが診断に利用されるわけである。その変動は質的な変動と量的変動とに大別され,後者は主として種々の原発性疾患から二次的にあらわれるが,前者は血漿蛋白質の異常が主症状となり,正常血清には含まれない異常蛋白質が出現する場合をいっている。

私のくふう

ルゴール反応の判定法

著者: 阿波島清

ページ範囲:P.241 - P.241

1.試薬は50ml容のスポイト付褐色瓶に入れて使用する。(図1参照)
2.載せガラスはマジックインキ又はガラス鉛筆で1〜4区画に仕切る。(図2参照)

英会話

Laboratory English—No.10

著者: 河合式子 ,   河合忠

ページ範囲:P.242 - P.244

研究

各種可検物における結核菌の塗抹陽性培養陰性頻度とその螢光法とZiehl-Neelsen染色法の比較

著者: 馬場真 ,   鈴木七郎 ,   柳橋淳三 ,   川島正一 ,   楠本三郎 ,   森井行雄

ページ範囲:P.245 - P.248

はじめに
 結核菌検査にあたり塗抹と培養を同時に施行すると塗抹陽性であっても培養が陰性に終る場合,以下塗(+)培(—)と略記する,のあることは既に知られているところ1)〜34)である。私たちの病院では従来から塗抹(螢光法)と培養を同時に実施しているので最近の成績をまとめると共にかかる場合の結核菌について螢光法とZiehl-Neelsen染色法の比較を試みたのでここに報告する。

GL管使用による尿糖測定に関しての検討—(I)光電比色法による定量の基本的条件の検討

著者: 佐々木禎一 ,   鈴木彰 ,   小屋進

ページ範囲:P.250 - P.253

 Somogyiのカラメル法をその原理とするGL管による尿糖定量の際の諸操作条件を検討し次の結果を得た。
1)ブ糖およびその他の少糖体は呈色後皆類似の吸収曲線を示し,吸収極大は短波長領域(330〜350mμ)にある。
2)ブ糖の検量線は分光光電比色法では1.0〜6.5g/dlの範囲でBeerの法則に従うが,この直線性は回折格子型比色計ではわずかに,また通常のフィルター使用の比色計では遙かに劣っている。
3)反応時間は8分で別に支障がない。
4)煮沸浴温度は厳密に調節しなければ大きな誤差の基となるので,正確な温度条件の工夫をするか,測定値の補正の要がある。
5)反応後の色調はあまり急激に減少しないが,加熱後直ちに流水で冷却し,30分以内に測定するのが望ましい。
6)多数の尿糖測定検体を扱う場合,Pavyらの方法に比し時間的に著しい能率化ができた。
(終りに臨み,GL管を分与下さった日本栄養化学K.K.に深甚の謝意を表す)

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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