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雑誌目次

論文

臨床検査9巻6号

1965年06月発行

雑誌目次

カラーグラフ

骨髄巨核球の種々相

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.466 - P.467

 血小板は骨髄巨核球の細胞質から生成される。巨核球の幼若型は巨核芽球で,稍成熟して前巨核球の段階になると,細胞質内に多数のアヅール顆粒が生じ,成熟型の巨核球になると,この顆粒が小集団を形成し,これを含む細胞質が細胞周辺部から,突起状に突出し,やがて分離放出されて血小板となる。したがって正常な巨核球は,その周囲に自己の産生した多数の血小板を有している。骨髄血中の巨核球の数は約0.1%であり,その大きさは骨髄細胞中最大で時に40μ〜60μにも達し,弱拡大で他の細胞と良く識別され,ペルオキシダーゼ反応は陰性である。出血性素因を主徴とする患者には,まず血小板を算定し,これが減少を認めたら,その出血は血小板減少に主として由来するものと考え,次に骨髄における巨核球の数や形態を観察する必要がある。骨髄障害(白血病,再生不良性貧血,本態性血小板減少性紫斑病)による場合は,巨核球は減少ないし欠如し,免疫機序や脾機能昂進による場合は,末梢血中の血小板数が減少するにかかわらず,骨髄中の巨核球数は正常ないし増加し,また幼若型のみが認められる場合もある。

グラフ

FTA−200テストと暗視野螢光顕微鏡の使い方

著者: 河合忠 ,   河原塚金造

ページ範囲:P.469 - P.476

 螢光抗体法が普及し,種々の細菌学的検査,血清学的検査に用いられてきているが,臨床検査の面で応用されているものにFTA(Fluorescent Treponemal Antibody)テストがある。FTAテストは螢光抗体法のうち間接法を応用した梅毒の血清学的検査法の1つである。
 近年,わが国でも比較的広く用いられているRPCF(Reiter Protein Complement Fixation)テストにより梅毒の血清学的検査法に伴う生物学的偽陽性が減少しているが,まだその特異性は完全とはいえない。梅毒という病気の性質上,100%の特異性が要求されており,現在,最も特異性の高い検査法としてTPI(Treponema Pallidum Immobilization)テストがあるが,これに匹敵する特異性と鋭敏性をもち,しかも技術的により簡単であるFTAテストが脚光を浴びつつある。最近,螢光顕微鏡装置も普及しはじめ,FTAテストに必要な試薬も市販されているので,FTAテストの標準法であるFTA-200テストの実施法と暗視野螢光顕微鏡の使い方について説明する。

技術解説

血小板検査の二,三の点について

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.477 - P.481

はじめに
 血小板は血球細胞中もっとも小さく,またこわれやすいこと,粘着,凝集しやすい性質のため,赤血球や白血球にくらべて,これを純粋に分離することも容易でなく,今なお多くのわからない点が多く,血液学において最も興味のある幾多の問題が残されている。たとえば最も基本的な問題である血小板の末梢血中の数さえ,測定法により色々で一定していない。
 しかし近年シリコン被覆,冷凍遠心器の使用,凝血阻止剤などの進歩により,血小板が比較的純粋に分離されるようになつてから,その生化学的および免疫学的検索も進み,また治療面では血小板輸血も可能となつた。

位相差顕微鏡による血球形態学(1)

著者: 中村宏

ページ範囲:P.482 - P.488

はじめに
 位相差顕微鏡Phase contrast microscope(PCM)の歴史はまだ新しく,1935年オランダのZernikeがAbbeの顕微鏡像の生成理論(1892)を実用化して位相差法を考案したことにはじまる。その特許をゆずりうけたドイツのZeiss(Köhler u.Loos)で1941年に実用的顕微鏡として完成した。これより2,3年遅れてアメリカで,さらにわが国では千代田光学の努力で1948年に完成した。
 血球の観察には,従来から塗抹ギムザ染色法が広く用いられており,今日でも血球形態学の主流をなしている。しかしこれのみでは細胞の微細構造を観察することができないため,近年電子顕微鏡による高倍率の観察が盛んになり,多くの成果をあげている。これらの方法には優れた特色があり,今後も多く利用されるであろうが,欠点としては生物体の死後,しかも人工的な変化を観察していることである。これに対して"PCM"は"自然に近い状態で,生きている細胞を経時的に観察できる唯一の方法"であり,血液学のみならず医学および生物学の広い分野で,その偉力を発揮している。たとえば現在の医学における最大の課題の一つである悪性腫瘍あるいは免疫の問題を解決する手段として有力視されている組織培養は第2次世界大戦後,非常に盛んになったが,その大きな理由の一つは"PCM"の出現によるものである。

腎機能検査法(2)—Fishberg濃縮試験

著者: 浦壁重治 ,   折田義正 ,   小山紀久子 ,   石橋恭子

ページ範囲:P.489 - P.498

はじめに
今回はPSP排泄試験とならんで簡易腎機能検査法のもう一つの柱であるFishberg濃縮試験について解説する。この濃縮試験の重要性を理解するには,まづ尿の濃縮が腎のどの部位で,かつどんな機構で遂行されているか,その大要を知る必要がある。1)2)3)
 周知のように腎臓はネフロン(nephron)とよばれる構造単位が両腎で約200万個集合してできた臓器である。このネフロンは図1に示すように,血漿の限外滬過(ultrafiltration)が行なわれる糸球体(glomerulus)と各種溶質および永の再分吸収,排泄の行なわれる尿細管(tubulus)—糸球体に近い方から近位尿細管,Henle係蹄,遠位尿細管,集合管という—より構成されている。

座談会

化学検査試薬をめぐって—試薬の純度・保存のことなど

著者: 浅川皓司 ,   佐藤徳郎 ,   斯波之茂 ,   長沢佳熊 ,   松村義寛

ページ範囲:P.508 - P.515

規格のはなし
 司会(松村)検査技術士は検査が生命でありまして,その検査をするについて必ず試薬が必要になるというわけで,数多くの試薬にとりかこまれて生活していますが,この試薬は買つてくるときはちやんと瓶に詰まつてレッテルがはつてある。そうするとその中には純粋なものが入つているというように理解をして,いろいろ作業をするわけですがその時に試薬の品質を信じすぎていろいろなまずい結果が出たときにあちこちブーブーいつたりすることがありますけれども,大体,試薬はどういう純度が保証され,どのくらいのものであるかというようなことが,今はかなりよくきまつております。試薬のあるものはJIS試薬としてきちんと保証されているような状態であります。そういつた規格の話から斯波先生に伺いたいと思います。

検査室のエチケット

病理検査室のために

著者: 高橋正宜

ページ範囲:P.516 - P.518

 病理検査室の一人としての"反省の記"のつもりでエチケットをかいてみました。
病理検査室の組織化……個人プレーは許されないこと

講座 検査技術者のための臨床病理学講座13

臨床化学検査(5)—血清酵素活性の検査とその臨床

著者: 林康之

ページ範囲:P.519 - P.521

 われわれの体内では,食物として採り入れた各物質を複雑な化学反応によって他の物質に転換し,利用すべきものは利用し,生命を維持するためのエネルギーをその反応過程から得ている。この複雑な化学反応を体温である37℃の低温で短時間に進行させ,促進する触媒作用をもつ有機性物質のことを酵素(Enzyme)とよんでいる。酵素は体内の各細胞で合成され,ほとんどタンパク質から成ると考えられており,細胞内での化学反応に関与するもの(Endoenzyme)と細胞外に分泌され細胞外で働くもの(Ectoenzyme)とにわけることができる。また病気を生化学的に解明しようとするためには各臓器組織細胞内の酵素作用と,細胞外に分泌された酵素の働きかたのすべてが観察できればよいことになるが,これは生化学的研究であって現段階における臨床検査ではない。現在の臨床検査としての酵素活性の測定はごくわずかな種類の酵素について体液中(主として血液)の(1)活性値の増減をもとめ,健康者と比較して病気の診断資料をもとめる場合,(2)ある特定の酵素の減少または欠如によって起る病気(本誌,8巻7号567頁参照)を診断する場合にかぎられる。また後者の場合,酵素の欠如によってあらわれる異常代謝産物の証明によってほぼ診断の目的は達せられ,直接酵素の欠如を確認する必要は少ない。以下酵素検査が現在どのように診断に利用され,対象となる主な病気にどんなものがあるかを述べる。

英会話

Laboratory English—No.13

著者: 河合式子 ,   河合忠

ページ範囲:P.522 - P.524

新しい抗生物質の知識—正しい感受性検査のために

著者: 清水喜八郎

ページ範囲:P.525 - P.528

 今日抗生物質を中心として多くの化学療法剤が出現し,さらに現在も探求が続けられています。このような薬剤の進歩に対して,一方ではそれら薬剤の使用が活発になるにつれて,宿命的とも思われる耐性菌の出現が問題となり,それに対する新しい抗生物質の研究がおこなわれているのが現況です。
 細菌検査室において,感受性試験が大きな検査部門をしめることはいうまでもなく,しかも実際に感受性検査をおこなっていると,いかに耐性菌が,しかも多剤耐性菌が多いかということに気がつかれていることでしょう。

研究

チモール混濁試験の緩衝液の検討

著者: 五十嵐公 ,   大橋代次郎

ページ範囲:P.529 - P.530

 チモール混濁試験は,肝疾患診断の半定量法として,1944年に,Maclaganによって発表されて以来今日まで使用されている。
 この方法での検査は,血清蛋白や脂肪等,チモール反応に影響する諸因子に注意をかたむけ,また,反応時のpH,pHの測定時の温度,チモール試薬の安定性等に充分考慮をはらえば,チモール混濁試験の診断能力は,もっと増すのではないかと思う。

血清鉄および血清鉄抱合能の簡易定量法—SIおよびUIBCキットの使用経験

著者: 茂手木皓喜 ,   岡本明子

ページ範囲:P.531 - P.533

はじめに
 血清鉄の測定は,医学の進歩にともない,ますます需要が高まっているが,ここに紹介するのは血清鉄および血清鉄抱合能を1つのキットできわめて簡易に測定する方法である。従来の方法のように蛋白の分解や沈殿分別は不要で,呈色の抽出も省略してある。比色もたいていの比色計で実施できるという。蛋白結合鉄は酸性側の試薬で解離し,terpyridineで反応させて比色する。抱合能はアルカリ性側で既知濃度の過剰の鉄と反応させて測定し計算で求められるという。このたび日本商事より本試験の試薬の提供をうけたので検討した次第である。

血清中非タンパク性窒素の超微量比色測定法—アルカリ性次亜臭素酸塩法

著者: 梅田重雄

ページ範囲:P.534 - P.537

はじめに
 臨床生化学測定の微量ないし超微量化は既に常識となりつつある。ことに多量の血液採取が困難な未熟児,新生児を対象とする場合,その必要性は大きいと思われる。筆者の所属する施設でもこの要望にこたえるため生化学測定の超微量化を計画し,現在その準備を進めているので,この機会に,小児科領域で比較的測定頻度の高い血清中非タンパク性窒素測定の超微量化を試み,臨床的に充分な精度で測定できたので,その概要を報告する。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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