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雑誌目次

論文

臨床検査10巻8号

1966年08月発行

雑誌目次

特集 研究論文 生化学

尿中のクレアチニンの定量,他

著者: 百瀬勉 ,   大倉洋甫 ,   小橋一弥 ,   田中淑子 ,   矢野良子 ,   板倉宣子

ページ範囲:P.747 - P.772

 著者らはさきにクレアチニンをピクリン酸と水酸化アルカリによって発色させたのち,リン酸二水素ナトリウムを加えてブランクの吸光度を減少させ,かつ呈色液の吸光度を増大させる方法,およびクレアチニンを1,3,5—トリニトロベンゼンと炭酸アルカリにより鋭敏に発色させる方法をみいだし,これを血清中のクレアチニンの微量定量に応用しているが1)2),今回上記の両発色法が尿中のクレアチニンの定量にも適用し得ることを確認したので報告する。

細菌学

鼻腔,咽頭細菌叢の長期観察,他

著者: 三井一子 ,   川上稔

ページ範囲:P.773 - P.788

はじめに
 上気道ならびに肺の感染症の病原菌としては肺炎球菌,溶血レンサ球菌,ジフテリア菌あるいはブドウ球菌をあげることができるがそれらを検査材料たとえば鼻汁,喀痰などから分離する場合にしばしば困難を感ずることがある。その一つの場合として,検出された菌がはたして病原菌としての役割をしているのかどうかがわかりがたいことがある。その理由は,これらの菌あるいはこれらによく似た菌が健康な人の鼻や咽頭にみられる場合があるからである。そこで私達は普通の場合に咽頭や鼻にどのような細菌が存在するものか,その種類はいくつぐらいあるものなのか,また,それらがいつも同じなのか変るものなのか,などを知るために著者を含めた3名の健康人の鼻腔ならびに咽頭細菌叢を1年間にわたって観察したので,その結果をここに報告する。

血清学

毛細管を使用する関節リウマチの簡易血清学的検査法/「血清学」講評

著者: 小坂志朗 ,   沢木信之 ,   松橋直

ページ範囲:P.789 - P.791

緒言
 従来関節リウマチRheumatoid Arthritisの血清学的診断法には,Waaler-Rose反応1)の名をもって代表される感作血球凝集反応や,血球を使用しないLatexFixation Test2),Bentonite Flocculation Test3)などが行なわれてきた。これらリウマチ因子の証明法は,すでに拙著4)に詳しくのべてあるが理論的におよそ2つの系列に分類できる。一つは家兎免疫血清で感作した羊血球を凝集せしめる方法であり,Waaler-Rose反応がこれに属する。もう一つは入γ-Globulinを血球,Latex粒子,Bentonite粒子,コロジウム粒子などにcoatingせしめ,感作粒子の凝集を観察する方法である。これがいわゆるFⅡ系とよばれるリウマチ因子の検索法であり,代表的なものがLatex Fixation Test,特に簡易スライド法として日常検査に用いられているRA-Testである。
 今回日本凍結乾燥研究所より試作品として提供を受けた"ロイアルト"は理論的にはFⅡ系のLatex Fixation Testの簡便法であり,RA-TestのごとくPolystyrene Latexを使用するが,スライド上で凝集の有無を観察するのではなくCRP検査と同様毛細管によりリウマチ因子を量的に判定する方法である。

病理学

細胞診におけるMillipore Filter法と塗抹法との比較検討,他

著者: 西国弘 ,   八尋久代 ,   相川博

ページ範囲:P.793 - P.798

はじめに
 悪性腫瘍の早期診断は,各分野において広く行なわれているがその中でも細胞診の普及,発達目覚ましく近年わが国でも盛んに応用されるようになり診断上重要な役割をはたしつつある。
 細胞診が発達した理由は,検査材料が比較的容易に患者から採取され,また同一の検査を反復行なえることや判定が迅速に行なわれ,しかも診断適中率が高いことなどであるが,しかし,これも検査材料が新しくなくてはたびたび偽陽性や偽陰性を判断しかねない。最近ミリポァフィルターを用いて細胞を濾紙上に濾過しこれを染色する方法があるのでこれと従来の遠沈法による塗抹法との比較検討を以下に述べる。

血液学

Emdeco Prothrombin Timerの使用知見,他

著者: 黒川一郎 ,   後藤尚美 ,   小島博 ,   大水幸雄 ,   木村寿之 ,   山本英彬 ,   猪口紀子

ページ範囲:P.799 - P.807

緒言
 臨床血液部門においても,血球・ヘマトクリット値算定などに器械化が試みられ,本邦でも紹介が相次いでいる。われわれもこの点に関し検討した結果をこれまで報告してきた1)
 最近,血液凝固機能測定のための装置が考えだされ,EEL Prothrombin Timer,Clot Timer,Fibrometerなどの紹介が浮田2),福武ら3)によりなされている。われわれはEmdeco製Prothrombin Timerを使用する機会を得たが,本稿では日常頻用されている数種の血液凝固機能検査法について,従来の目視法と比較した成績を報告する。

生理学

肺機能検査法としての動脈穿刺術式について/「生理学」講評

著者: 佐藤邦男 ,   池田知栄子

ページ範囲:P.809 - P.811

緒言
 近時肺機能検査が広く臨床的に活用されるとともに,動脈血液ガス分析も必須の検査法として施行されている。動脈血採取のための動脈穿刺術の技術的な問題に関してはComroe1),Garlach2),阿武3),高木4)らの詳細な記述があり,これらにしたがって経験を積み重ねることにより,患者に与える苦痛も少なく,短時間で確実に採血を終了することができるようになったが,われわれの病院では肺機能検査時ほとんど全例に運動負荷を施行している関係上,動脈針を相当深く挿入,固定する必要があり3),挿入が不完全な場合には,運動負荷中に採血が不能になることも起こってくる。
 われわれは動脈針を深く挿入する場合,従来と少し異なった方法を行なって確実を期しているので,この点について述べるとともに,2,3の注意事項を付言してみたい。

精度管理

"正常値の平均"による臨床検査成績の精度管理,他

著者: 吉野二男

ページ範囲:P.813 - P.819

緒言
 臨床検査の最近の動向として,正しい検査成績を提出することや,検査種日,ことに繁雑な手技を要するものの増加,加えて,さらに新しい検査術式の導入,検査機械の使用などと多忙をきわめているが,そのなかでも,検査成績の精度管理ということが検査室の中央化と,検査センターが各所にできつつあること,そしてその相互間の検査成績の差異をなくするなどの各方面の見地よりして益々その重要性が叫ばれている。
 すでにある程度の規模をもった病院施設の検査室では精度管理が行なわれているがその方法としては,x-R管理図がもっとも広く応用されているが,これは,検体数の少ない検査室では,精度管理の重要性と方法は理解しているが,標準血清の入手やプール血清の作成などの難点がありまだ十分に行なわれていないようである。そしてその管理も臨床化学検査成績を主として行なわれているもので他の検査成績については方法もまだ確定しないものがある。

グラフ

肺臓の肉限検査<前号つづき>—とくに肺気腫について

著者: 山中晃

ページ範囲:P.718 - P.719

 近年化学療法の発達,呼吸機能検査の進歩に伴って臨床的に注目されるようになった疾患の一つに肺気腫がある.気腔が急激に拡大するが,原因が除かれれば旧に復する急樹市気腫(過膨脹)と慢性に経過し,肺胞の破壊を伴った進行性不可逆性拡大のため肺胞毛細血管床の減少をきたす慢性肺気腫とに分けられる.

自動包埋装置

著者: 金子仁

ページ範囲:P.721 - P.728

 軟かい組織を5μ位に薄切するためには,組織を一定の硬さにする必要がある。これに要する手間を機械化したものが,自動包埋装置である。

第15回日本衛生検査学会を終って

著者: 松永清輝

ページ範囲:P.729 - P.732

 第15回日本衛生検査学会は4月23日,24日の両日にわたって,阪大教授藤野恒三郎博士を学会長として,大阪で開かれました。
 会場は阪大医学部の中之島講堂と,そこから100mばかり西にある日本生命中之島ビルの講堂でした。集った会員は2500名をこえ,3会場で2題の特別講演と160題の一般演説が発表され,2つのシンポジウムが行なわれました。会場を埋めた熱気はそれぞれ一人一人の胸にガッチリとうけとめられたことでしよう。また準備したものも,参加したものもおなじようにその盛会をよろこび,力強い自負と誇りの中に臨床検査の現在と明日を考えられたことと思います。

座談会

精度管理とその対策

著者: 松村義寛 ,   石井暢 ,   北村元仕 ,   宮城芳得

ページ範囲:P.734 - P.743

 査室の精度を調べた結果,それが悪いとわかったときどうしたらよいのだろう。
 最近,精度管理について種々議論されているが今月は生化学検査における精度管理の対策を主にとりあげた。こういう問題について日夜とりくんでおられる先生方の苦心談を。

ニュース

受賞者決定—第一回小島三郎記念技術賞

著者: 小島三郎

ページ範囲:P.743 - P.743

 昭和40年,前国立予防衛生研究所所長故小島三郎博士の遺徳を永く顕彰すべく小島三郎記念会が設置され,その記念事業として,「小島三郎記念文化賞」および「小島三郎記念技術賞」が設定されましたことは既報の通りであります。
 昨年は第一回「小島三郎記念文化賞」の贈呈が行なわれ,大阪大学微生物病研宛所教授・奥野良臣博士(ハシカウイルスの分離とワクチン開発に関する研究),財団法人実験動物中央研究所常務理事・野村達次博士(実験動物の開発とその基礎研究)がそれぞれ受賞をされました。

発言

器械設備の償却・検査種目の原価計算の考え方

著者: 藤田達男

ページ範囲:P.819 - P.819

 近時臨床検査の発展はますますその必要性と高度化を生じ,その検査項目も多様化しつつあることはいうまでもありません。
 現場にある検査技師がそれらの中から各自のおかれた環境の中でどれを取上げ日常検査を行なえば良いかについて,検査種目の原価計算が行なえれば便利と思う。現行の保険制度の中では検査といえど利潤を考慮せねばならぬことはやむを得ない。すなわち技師がこの検査は取上げたいと思う場合,医師または経営者に納得してもらうための資料としての意義もある。

外国雑誌より

S-GPT活性の安定性,他

著者: 吉野二男

ページ範囲:P.821 - P.821

 凍結保存した血清のGPT活性の低下がみられることは,以前より報告されていたが,検査実施までに日数を要することがある場合には大切なことであるのでしらべた報告である。
 室温,冷蔵庫中,普通のフリーザー,低温のフリーザーに約3ヵ月間にわたり保存したものをしらべた。普通のフリーザーの温度は−30℃までであるが経過中に測定してみると−15℃まで上ることがあった。低温フリーザーは−40〜50℃のものである。

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Glossary≪7≫

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.820 - P.820

<p>前号つづき
Poikilocytosis畸型赤血球
polychromasia多染性

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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