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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査14巻5号

1970年05月発行

雑誌目次

カラーグラフ

薄層クロマトグラフィー

著者: 久保博昭 ,   中山妙子

ページ範囲:P.420 - P.421

 薄層クロマトグラフィーが生化学の分野で大いに利用されているのはいうまでもない.それにもかかわらず,臨床検査の分野でのスクリーニング法としては,実際に用いられているものは試験紙などによるスポットテストをはじめ,試験管内反応の検査やペーパークロマトグラフィーぐらいである.その理山としては,薄層クロマトグラフィーは操作が複雑で,高級なテクニックが必要であると考えられているためと思われる.しかし,実際使用すると簡易性,迅速性,能率,鋭敏性,呈色試薬の多様性などの数々の利点があるので,上記の考えは一掃されてしまうだろう.

グラフ

病理組織のための電顕試料作製法Ⅱ—薄切と染色

著者: 三友善夫 ,   宮本博泰

ページ範囲:P.423 - P.430

一般的電子染色法に用いる染色液
 染色液は染色操作(①固定後脱水前,脱水中に行なわれるブロック法と,②超薄切片に行なわれる方法)によって異なるか,超薄切片に行なう方法が安全性が高い.

抗原抗体反応・5

間接凝集反応(受身凝集反応)

著者: 松橋直

ページ範囲:P.432 - P.433

 抗体がその反応部位で抗原の決定基と結合することによって,抗原抗体反応が起こり,沈降物を作ったり,凝集塊ができたりするので,沈降反応や凝集反応の間には,本質的な差異がないことは前回に述べたとおりである.しかし,溶液性の抗原と対応する抗体との間で起こる沈降反応も,抗原の大きさを大きくして赤血球ぐらいにすると,凝集反応の形で観察することができる.こうすることによって,抗原の決定基と給合はするけれども,凝集反応が起こらない特殊な抗体(これを不完全抗体とか,非定型抗体と呼んでいるが)検出できるようになったり,抗原抗体反応の感度を高めることができるので,血清学的検査法にはしばしぼ応用される.次に例をあげながら述べてみよう.
 抗グロブリン試験(クームズ試験)は,凝集能力をもたない不完全抗体(非定型抗体)と反応した赤血球は,1個1個ばらばらである.このような赤血球の浮遊液に,その抗体と反応して沈降反応を起こすことができるような抗グロブリン抗体を加えると,抗グロブリン抗体は,赤血球の表面に結合している不完全抗体(非定型抗体)と結びつきあうので,凝集反応が起こる.抗グロブリン試験の場合は,生体内で赤血球に抗体が結合している患者(自己免疫性溶血性貧血)があるので,このような例では,患者赤血球をとってただちに洗い,抗グロブリン抗体と反応させて検査するので,抗グロブリン試験直接法と呼ばれている(図1).

ノモグラム・5

クレアチニンクリアランス最大尿素(Cm)クリアランス

著者: 斎藤正行

ページ範囲:P.435 - P.435

 クレアチニンクリアランス 左端U/B値と右端の1分間尿量(V)を結ぶ線とC軸との交点の左側目盛りが求める値である.糸球体濾過値(GFR)などの計算もこれに準ず.
 例 尿クレアチニソ21mg/dl,血清クレアチニン1.4 mg/dl,したがってU/B=15で1分間尿量3 mlとすると,C=45 ml/min.

検査室の便利表・5

放射性アイソトープ減衰計算表

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.437 - P.437

 ラジオアイソトープは,零次反応式に従って減衰していく.数式で表わすと,当初の活性度(cpm)をAo時間tが経過たときの活性度をAtとすればAt-Aoc−00.693/T1/2tT1/2tは半減期でAt=Ao/2となるために経過した時間であって核種について定まっている.
 このノモグラムは半減期T1/2と経過時間とが与えられたときに,Ao=kAtとおいたときのkを求めるもので,1/k=e0.693/T1/2tを与えるものである.

総説

難聴の検査と病理

著者: 佐藤喜一

ページ範囲:P.439 - P.445

 聴力検査—検査室ではあまり耳なれない科目であるが,すでに中検に属しているところもある.カナマイシンをはじめとする抗生物質の投与,現代の騒然たる生活環境などから知らぬうちに聴力機能が衰えてくる.そこで,検査室への啓蒙も含め,最新の"耳の検査"を解説する.

私のくふう

輸血用チューブを用いての感性ディスクの置きかた

著者: 津留崎利博

ページ範囲:P.445 - P.445

 感性ディスク法を行なう場合,ピンセットで1ディスクずつつまみあげるには,なかなかの心労を要します.また,平板上任意の地点へ置くにもころがったり,接近しすぎたりで苦労します.そこで,私は輸血用チューブを用いて簡易に,しかも任意の地点へ置くことができ,能率的にもたいへんよい結果を生んだのでご紹介します.

ピペット安全操作器について

著者: 吉原忍

ページ範囲:P.494 - P.494

 危険液のピペット操作,ことにコレステロール検査の試薬のようなものを,直接口でピペッティングすることには危険を感じ,注射器にゴム管を介してピペットを接続しても,ピペットの安定が悪く,コレステロール検査のように左手に試験管を持ち,右手でピペットを操作するというこまかい操作のむずかしさを感じ,何とか注射器とピペットを固く固定できたらと考え,次のようなものを作り便利に使っております.

技術解説

コレラ菌の新しい分離培養

著者: 坂崎利一

ページ範囲:P.446 - P.450

はじめに
 1960年ごろまで,わが国においてはすでに過去の伝染病であったコレラが,東南アジアでのエルトール型コレラ菌による流行に端を発して,毎年その侵入におびやかされるようになった.それと同時に,コレラおよびコレラ菌についての研究がふたたび活発化し,19世紀の知識のままにとどまっていたこの分野に,近代医学の光があてられて各方面で新しい知見がえられている.コレラの細菌学的検査方法もまたその例外ではない.
 コレラはいうまでもなくインドに古くから存在する風土病で,その細菌学的検査方法はインド人学者を中心として開拓され,いままでに報告された増菌培地や分離培地の種類は枚挙にいとまがないほどである.また,わが国でも最近TCBSヵンテンなどの新しい培地が開発され,これが東南アジア地域でかなりひろく使用されていることは衆知のことである.しかし,分離培地の価値は実際の例に直面すると,必ずしも原著の記載どおりではないことがしばしばある.

薄層クロマトグラフィー

著者: 久保博昭 ,   中山妙子

ページ範囲:P.451 - P.460

 薄層クロマトグラフィー(表)は,ガラス板などの支持体の上に,適当な吸着剤を一定の厚さに薄層状に固着したもの(以後,プレートと称する)を用いて,微量の混合物を分離するクロマトグラフィーである.この方法の特徴は,
1)目的に応じて吸着剤が選べる.

ひろば

衛生検査技師の立場から

著者: 軍司光夫

ページ範囲:P.450 - P.450

医師の指示について
 衛生検査技師は,患者に直接間接を問わず,検査成績を知らせることは周知のとおり禁じられていることである.しかし,まれではあるが外来診療で急を要する場合に,医師が患者に直接検査成績をもって来るよう指示している場合がある.それにはいろいろと施設の状況(入手不足など)があろうが,この場合,衛生検査技師は患者の手に検査成績を直接渡すべきか否かが問題点になろう.衛生検査技師の立場からはこれは許されるべきではないが,医師の指示によるということになれば,話は別になってくると思う.しかし現実には,患者に検査成績を手渡しているのが現状だが,特にこの場合確かに医師の指示かどうか再確認を是非必要とすべきと思われる.どこまでも医師の指示どおり行なえば問題にはなるまい.

検査器械も一員

著者: 村田徳治郎

ページ範囲:P.460 - P.460

 検査室を見学させてもらうことは,自分が反省するうえに大いに役だつし,そのうえ教科書にない勉強ともなり,技術的な点のみならず臨床検査技術士として,参考になる貴重な経験といえよう.ある大病院の病理室で30-40年前のザイッ(ドイツ製の顕微鏡が,今も第一線で活躍しているのを見て非常に驚いてた.しかも,染色程度の判別という,顕微鏡にとっては悪い条件ながら,よくその任を果たしていた.レンズの解像力も良好であり,全体として使いよいなという印象を受けた.
 あるメーカーの技術者が"私ども制作した者でも,あの機器を使いこなすのはむずかしい,また故障が出た場合もう修善する自信がない"と7-8年前かもっと古い型の脳波計を前にして,嘆息とも感心ともつかないようであったが,とにかく現に,ある女子技術者によって非常に調子よく第一線で働いているのである.自分の技術の未熟を棚に上げて,一方的に器械の責任にしてしまう技術者も多い中で,1つの参考例としたい.

臨床検査の問題点・17

血液凝固検査—スクリーニングテストの範囲

著者: 藤巻道男 ,   日比谷淑子

ページ範囲:P.462 - P.468

 出血傾向,あるいは出血性素因の有無を知ることは手術を受ける患者にとっては必須であるばかりか,毛細血管の異常を発見するうえでも欠かせない.スクリーニングテストの範囲内で,適切な採血のしかたからフィブリンの析出まで実際的な問題点を検討する.

主要疾患と臨床検査・17

公害病と臨床検査

著者: 西川滇八

ページ範囲:P.469 - P.473

ロンドン市スモッグ事件
 1952年12月5日,ロンドン市は濃いスモッグにおおわれてしまった,ロンドドン名物の濃霧ではあるが,この時には煙の粒子が核となってできた霧であるから,黒い霧であった。ときの要人であったチャーチル(W.Churchill)卿も自邸から市内にはいると自動車の窓を堅く閉ざして,カーテンをおろし,少しでも市内の汚れた空気が車内に侵入しないように心がけたほどである.この黒い霧は5日間も続いた.
 市内のバスは動けなくなり,交通警官の先導でのろのろ運転をした.列車も速度が出せず,市内の社会的機能は極度に停滞してしまった,陸上の交通機関ばかりでなく,海上の船,空中の飛行機までロンドンには近づけなくなった.ただ,救急患者を運ぶ自動車だけがふだんよりも活発に動いていた.それは自宅に引きこもっていた気管支炎や心臓病の患者たちが,スモッグのために症状が悪化したので,彼らを病院に送り込まなければならなかったからである.

光電池の開発に偉大な功績—Dr.Bluno Langeをしのんで

著者: 吉田光孝

ページ範囲:P.474 - P.474

 昨年6月3日に,あのりっぱな物理化学者であるDr.Langeが突然享年66歳で逝去されたニユースは,多くの人々の驚きと心痛であったことと思う.
1961年4月に元気で来日され,堂々たる講演で熱弁され,多くの方々に深い感銘を残された印象を新たに想い起こされる方も少なくないであろう.その時の講演内容は,"ヨーロッパを中心とした医学的検査領域における機器分析の現状"というテーマであった.あの有名な光電効果の発見から種々の光電池の開発,そして世界初めての光電光色計,炎光光度計などから,最近の進歩について語られた。その講演中,しっかりと手にされていたのは,なんと彼の開発したセレン光電池で,説明される片方の手から豆ランプの光が光電池に照射されると,光電池に連結されたかわいい風車がくるくると回りだす(光を電流に変えるという光電効果の原理を示す)模型であった……

臨床検査と‘単位’あれこれ—系統的な簡略化へ

著者: 吉野二男

ページ範囲:P.495 - P.497

混乱している表示法
 長い期間をかけて普及につとめてきたメートル法がやっと軌道にのって,私どもの身辺から貫だとか,匁,坪,尺,ヤード,ポンドというものがその姿を消してきましたが,検査室ではどうかと考えてみると,よく使う単位というのはメートル法には違いないのですが,予想外に複雑であることがわかります.
 その一部をあげますと表1のようになります.なかには,すぐに理解できないものもあるようですので少し説明してみますと,たとえば,長さの単位もm,cm,mm,μ,mμ,μμ,Åというしだいです.基本単位名称がmなのに途中からμというものができて,その1/1000だからmμ,さらにμのμだからμμ,またÅというように,基本単位のmとは記号も全く違ったものを用いてしまっているので,Åの単位付近のものだけを取り扱っているときにはよいかもしれませんが,全般的,共通的に老えると非常にふつこうであると思います.

1ページの知識 生化学

ガラス器具の洗浄

著者: 降矢熒

ページ範囲:P.475 - P.475

 われわれが臨床化学検査に日常使用するガラス器具には,試験管,遠心管,比色計のキュベット,秤量びん,漏斗,ビーカー,試薬びん,メスシリンダー,メスフラスコ,ピペット,ビュレットやその他数多くの種類がある.これらは,容量分析に使用する場合のみならず,定性分析の場合にも使用に先だって化学的に清浄にしておく必要がある.

血液

赤血球の指数と恒数

著者: 糸賀敬

ページ範囲:P.476 - P.476

 赤血球数(RBC),血色素量(Hb),ヘマトクリット値(Ht)の測定によって,貧血の有無やその程度がわかるが,それ以上に疾患の種類や原因,さらにその治療方針などを知るためには,これらの測定値から算出される種々の赤血球指数や,ウィントローブ(Wintrobe)の赤血球恒数がたいへん参考となるので,以下その算出方法を記載する.

血清

マクロファージ

著者: 水谷昭夫

ページ範囲:P.477 - P.477

 抗体産生の機構に関しては,従来諸家によるさまざまの学説があり,その真相についてはいまだ明らかでない.
 Burnet一派を旗がしらとするいわゆるクローン選択説(clonal selection theory)と,PaulingやHaurowitzの名前と結びついたタンパク質化学を土台とした抗原指令説(instructive theory)との間の論争が,活発に展開されているようにみうけられるが,われわれはこれらの問題に対する早急な結論を求めることにのみ目をうばわれてはならない.

細菌

検体別細菌検査(1)—おもな検出菌とその分離法

著者: 土屋俊夫

ページ範囲:P.478 - P.478

 各種の検査材料につき病原体の検索を行なう場合,特定の病原体だけを目標に検索を進めることは比較的少なく,多くは検査材料から検出される可能性のある病原菌を,残らず検出できるような検査方法をこうずることが必要である.病原菌の検索は図のように進められるが,臨床細菌検査の目的を考えると,まず感染症の治療には原因菌の感受性検査が最も必要である.したがって,まず検査材料から病原菌を確実に検出し同定するとともに,できるだけ早く感受性検査を行なうことである.
 病気の種類によっては,検査材料の塗抹検査で診断が可能なことがある.たとえば,咽喉頭の分泌物中のジフテリア菌,喀痰中の結核菌や肺炎球菌,尿道分泌物中の淋菌,髄液中の髄膜炎菌などがそうである.しかし,多くの病原菌は,まず検査材料を適当な方法で分離培養し,発育した菌につきさらに同定検査,薬剤感受性検査が行なわれる.

病理

脱アルコールからパラフィン包埋へ

著者: 和田昭

ページ範囲:P.479 - P.479

1.脱アルコール
 パラフィン滲透に移る前に,脱水剤として用いたアルコールを除去してしまわなければならない.組織内にアルコールがあると,アルコールに溶けないパラフィンが滲透しないため,両者に溶けるクロロホルムやキシロールなどを用いてパラフィン滲透の媒介をする.これらの液を入れる容器は広口びんを用いるのがよく,3個ぐらい用意しI,II,IIIの番号をつけておき,脱水された組織片を順次に移していく.
 アルコールがぬけるにつれ,組織片は飴色を呈し透明度が増してくるが,脱水の不十分な組織の場合は組織片に白濁が残るので,再びアルコールに戻して脱水を十分にやりなおさねばならない.脱アルコールに要する時間は約30分から長くても2時間ほどで,それ以上要するものはきまって脱水不十分のものか,組織片の厚すぎるものである.長時間になると組織の硬化や縮少をきたすが,特にキシロールがクロロホルムよりこの作用が強い.クロロホルムは空気中の湿気を吸いやすい性質があるので二重ぶたのびんがよく,また無水アルコールびんと同様,無水硫酸銅粉末を底に敷いておくとよい.脱水から脱アルコールへ移す組織片は,濾紙でよくアルコールをきってから移すようにすると,クロロホルムやキシロールを経済的に使用することができる.

生理

—正常波形や記録のなりたちと生理的基礎知識・3—心音図

著者: 魚住善一郎

ページ範囲:P.480 - P.480

 心音図とは心活動に由来する振動のうち,主として可聴域の振動をマイクロホンで採取し,濾波器を通して適当な成分を取り出して増幅し,記録器を用いて客観的に表示したものである.通常,時間的推移をみるために参考誘導として心電図を同時に記録するが,他の部位からの心音・血管音図,可聴域下の振動図(心尖拍動,頸動・静脈波など)を同時記録することもある(同時多誘導記録法).心活動に由来する振動のうち,持続の短い振動を心音,長いものを心雑音と呼ぶ.心音は内圧,血流の急激な変動の起きる時期に生じ,雑音は主として血液の流れによって生じる.胸壁を聴診すると2つの持続の短い振動—心音が聴ける。最初の音がI音,次の音がII音である.I音は心臓収縮の開始を表わし,II音は収縮の終わりあるいは心臓の弛緩開始を示している.したがって,血行力学上I音からII音までが収縮期であり,II音から次のI音までが拡張期である.

寄生虫・原虫

寄生虫の検査(5)—免疫血清学的検査(1)

著者: 久津見晴彦

ページ範囲:P.481 - P.481

寄生虫免疫反応の特徴
 寄生虫症の診断は糞便検査によって虫卵を検出する場合が多いが,寄生虫の種類によっては尿,喀痰,血液,組織について虫卵,仔虫,成虫を検査する.しかし,雄虫単独寄生や異所寄生,寄生虫が幼若・老化しているときなどはその寄生を証明することはできない.
 寄生虫の免疫血清学的検査は,第1に上記のように寄生虫の存在を直接証明できない場合に有効であり,第2にある地区で寄生虫の蔓延を知ろうとする場合,検査対象となった多数の人員を,限られた時間に検査する際に簡便な方法として用いられる.後者の場合には,寄生虫抗原による皮内反応が広く用いられている.細菌性疾患やウイルス性疾患と比較すると,寄生虫症における免疫学的反応には次のようないくつかの特徴があげられる.

海外ニユース

Medical Laboratory Technicianの誕生—アメリカ

著者: 奥田稔

ページ範囲:P.483 - P.483

 最近,検査技師の教育を将来いかにするべきかと題したシンポジウムがもたれ,各方面より多くの建設的意見が寄せられた.その際,米国における検査技師教育の現況について,改めて詳しい紹介および比較がなされている.
周知のように,米国の検査技師の主力は4年制の教育によるMedical Technologist(MT,ASCP)であり,わが国のそれとの相違が指摘されてきた.米国のMTははじめの3年間のカレッジ教育期間で必須課目である化学,生物学,数学(35semester hours)とオートメーション,コンピュータの普及に伴い選択課目として物理学,エレクトロニクスなどに重点のおかれた一般教養(55scmester hours)を修得する.最終学年ではaffiliateしたSchool of Medical Technologyで臨床検査を実習するのが,近年はこの期間もカリキュラムの編成などで,直接カレッジ側の指導を受けるようになり,卒業するとBachelor of Science(B. S.)の学位を取得する.

論壇

法改正をめぐる諸問題

著者: 田立耕蔵

ページ範囲:P.484 - P.485

"4本の柱"と厳しい現実
 現在私たちが,その目的達成を目ざし全力を傾けている法改正運動は,1966年4月,大阪で開催された第15回日本衛生検査技師会総会で万場一致で承認され,それ以来いわゆる"4本の柱"としてとりまとめられるようになった,衛生検査技師法一部改正3か年計画に基づいているのであるが,当時その内容を説明するに当たって,提案者は"衛生検査技師法には多くの問題があり,そのためにわが国の衛生検査技師はいまだに不遇な毎日を送っている.われわれは過去7年間にも及んだ長期の法改正運動を総括し,その成果と実績を基礎として法律改正をわが掌中に収めよう"と出席者全員に呼びかけた.
 全くその言のとおりであるというほかない.もともとこの法律は,日本衛生検査技術者会が,1952年7月18日に産ぶ声をあげたその日から数年にわたって続けられた,国会その他各方面への請願運動の一応の成果であったにもかかわらず,そのときすでに検査業務の範囲をめぐって,各医療関係諸団体の間でありありと浮き彫りされていた鋭い利害の対立をそのまま持ち越したかたちで,どうにか体裁だけをつくろった全くの妥協の産物にすぎなかったのである.だから,その実体がわれわれの念願とするところの真にあるべき姿からすれば,およそ遠くかけはなれたものであることは,法施行の当初から覚悟のうえであったし,さればこそ法改正運動は息つくひまもなく開始されたのであった.だが,その長期に及んだ運動の総括ともいうべき3か年計画の最終年度に当たる1969年も,ついに陽の目をみぬまま年を越してしまった.

パネルディスカッション

自治体病院検査科の機構と運営Ⅱ—第8回全国自治体病院臨床検査部会より

著者: 鳥海純 ,   富田重良 ,   志津功 ,   岡治義彦 ,   井上明弘 ,   柴田進 ,   諸橋芳夫 ,   田中英 ,   江波戸俊弥

ページ範囲:P.486 - P.494

 座長(柴田)前号では,豊橋市民病院(愛知県),尼崎病院(兵庫県),芦屋病院(同)とご紹介いただきましたが,これからやっていただく加古川市民病院,加西市民病院は,われわれとして非常に悩ましい問題をかかえているクラスだと思います.
 まず,加古川市民病院の岡治先生からお願います.

研究

アセチルアセトンを用いた血清トリグリセライド測定法の検討

著者: 山田満広

ページ範囲:P.498 - P.501

はじめに
 血清中の脂質はトリグリセライド,コレステロール,リン脂質,遊離脂肪酸および脂溶性ビタミン,カロチンなど微量の脂溶性物質からなっている.糖尿病,動脈硬化症,心筋硬塞,ネフローゼ症候群,甲状腺機能低下症,あるいは本態性高脂血症などでは,血清中のトリグリセライド値の変動が疾患の症状をよく反映するといわれている.したがって,トリグリセライドの測定は前記疾患の診断,治療経過の判定ならびに病態の解明に,重要な臨床化学検査であるといわれている.
 ところが,臨床的には測定法の容易なコレステロールは比較的よく測られているが,トリグリセライドは測定方法がかなりめんどうであり,バラツキが大きく,また測定操作に長時間を要するため,日常臨床検査に取り入れにくといわれていた.しかし,最近注目されているアセチルアセトンを用いた測定法は,きわめて短時間内にトリグリセライド値が得られることから,私はこのアセチルアセトン発色法を応用したトリグリセライドテスト(和光純薬)について,若干の検討を加えたのでここに報告する.

血清グルタミン酸脱水素酵素

著者: 遠藤了一 ,   石塚昭信 ,   鈴木秀治 ,   森本示子 ,   石岡瑞枝 ,   有田聖子 ,   佐藤源一郎 ,   上野幸久

ページ範囲:P.502 - P.504

はじめに
 このところ,血清酵素群の測定がひろく行なわれ,疾患の診断と経過の観察に役だっている.肝疾患では木下らによってグルタミン酸脱水素酵素(GLDH)の生体内分布,細胞ではミトコンドリア限局性であることをSchneider1)が明らかにした.このため正常血清中には活性が認められないことをHess2),Schmidt3)が確かめている.GLDHは肝,腎に高濃度に分布し,他の臓器ではきわめて活性が低い.ここで肝,腎障害時にGLDHの血中移行が考えられるが,ミトコンドリア膜,細胞膜を通過するためには高度の細胞壊死を伴うことが推察される.原形質に分布する酵素と異なり病態推移,細胞壊死と直接関係することが考えられる.

血色素測定試薬ヘモキットNの使用経験

著者: 黒川一郎 ,   田中系子 ,   鈴木五穂 ,   木村寿之 ,   永井竜夫

ページ範囲:P.505 - P.506

はじめに
 シァンメトヘモグロビン法による血色素測定試薬は,他検査試薬の傾向を同じくし,しだいにキット化される趨勢にあるといえる.血色素測定方法は近来国際委員会の方針として,Van Kampen法1)に依拠してすすめられてきており,この点に問題はないが,Weather burnら2)の検討でも従来のDrabkin試薬を含めてかなり製品間に質的な差異があり,製品個々の吟味が必要と思われる.今回日本商事製ヘモキットNを検討する機会を得たので,現在までの成績を報告する.

感受性ディスク法に関する実験的検討

著者: 吉沢一太

ページ範囲:P.507 - P.510

まえがき
 感染症の診療に際し化学療法剤の選択,臨床効果の予測を行なう場合,分離菌の感受性検査が重要となる.感受性検査法には稀釈法とディスク法があるが,簡易と迅速を目的とした感受性ディスク法は,臨床検査にとって欠かすことのできない検査の1つとなっている.
 しかし,ディスク法はあくまで簡易を主体としているので,すでに多くの報告があるが1-6),なお実施面において問題となる点が数多く存在している.今回,著者は検査室の立場で,これらの問題点について検討し,一応の結果が得られたので報告する.

質疑応答

ヘマトクリット測定用プラスチック製の毛細管とガラス製毛細管との比較

著者: G生 ,   寺田秀夫

ページ範囲:P.511 - P.511

 問 ヘマトクリット測定用の毛細管にはガラス製,プラスチック製が現在市販されていますが,特にプラスチック製のものは遠心中に熱が加わり,多少の膨脹があるかと思うのですが.また,弾力性があるためにちょっとした刺激で管内に気泡がはいりやすいと思うのですが.いろいろの角度から見て比較したものをお教えください.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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