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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査9巻4号

1965年04月発行

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グラフ

国立岡山病院研究検査科

著者: 村上元正

ページ範囲:P.281 - P.285

 岡山駅に程ちかい山陽沿線に国立岡山病院が新設されてから3年有半になろうとしているが,現在では入院550床,外来患者1日平均650名に及ぶ総面積4900余坪の近代化された病院の中で,研究検査科は一部をのぞき殆んどが2階に配置され,面積は222坪をもっている。スタッフは専任医師1名,技術士12名,助手1名で,その配属は血液検査2名,一般検査1名,病理検査2名(内1名は医師)細菌検査1名,血清検査2名,生化学検査5名(内1名は技師長)電気生理検査1名よりなり,検査科長,技師長統括の下に日常業務を遂行している。検査件数の増加(最近1ケ月平均18,616件)に伴い,それぞれ異った性質をもつ業務の作業量分析の必要性を痛感し,その検討を数ヵ月来行なっている。院内での検査室の立場はあくまで院長直属で,特に検査室の独自性と独立性を強調し,また一方現在の時点での自分をよく反省し,能力と技術の向上をはかっている。
 検査室1ケ月のスケジュールを紹介すると,毎週水曜日は語学研究会(英語)と業務打合せ会,第3木曜日は抄読会を行なっており,院外関係では技師会活動へ参加し,また臨床検査研究会(1回)血液同好会(1回)病理同好会(2回)に出席して,各自研鑚の資としている。なお昭和37年より39年末迄の学会発表演題は13題に達している。

小児の採血

著者: 西村昻三

ページ範囲:P.286 - P.288

技術解説

小児の採血

著者: 西村昂三

ページ範囲:P.289 - P.292

はじめに
 小児の採血は年齢によりかなりの難易があることは皆さんおわかりと思います。また採血する血液量も赤血球数,白血球数や血色素量測定などの一般血液検査のように微量なものから,いろいろの化学定量のように比較的大量を要するものまでありますが,多くの場合小さいこどもであるにもかかわらず成人の検査と同じ量の血液が必要とされます。もちろん,いろいろの化学検査にもだんだん微量定量法が応用されるようになってきましたが,全国どこの病院でもすぐ使えるという段階にはまだまだ遠く,検査に必要な血液量をいかにして採取するかは,小児科領域では非常に大切な問題であります。
 本稿では小児の採血全般について,自験を中心としてその初歩的な解説を試みたいと思います。

喀痰の細菌学的検査

著者: 徐慶一郎

ページ範囲:P.293 - P.298

まえがき
 喀痰の細菌学的検査といえば,まず,どこの検査室でも第一にとりあげるのは,結核菌の検査であろう。次に各種の肺炎,気管支炎,肺化膿症(肺膿瘍,肺壊疸),気管支拡張症などの病原として一般細菌の検査が問題になる。結核菌の検査は検査方法が確立し,多少問題になる点はあるにしても,衛生検査指針に従つて行なえば,まず問題なく結果が得られると考えて良いであろう。しかし,肺結核以外の一般細菌検査では,検出菌の病原的役割を決定することが,困難な場合が多い。元来,肺,気管支感染症の病原を広く病原微生物全体から探すとすれば,一般細菌のうち,肺化膿症における嫌気性細菌はもとより,近年漸次増加の傾向にあるカンヂダやアスペルギルスなどの真菌,あるいは,ウイルス性肺炎をおこすインフルエンザ,パラインフルエンザ,アデノ,オーム病などの各ウイルスやマイコプラスマ(PPLO)などいずれも病原として重要視しなければならないであろう13)
 これらの疾患では,屡々,アジアインフルエンザウイルスとブドウ球菌のように,ウイルスと細菌,また,結核菌とカンヂダのように細菌と真菌さらに,時には,オーム病ウイルスとキャンヂダ8)のようにウイルスと真菌という風に,2種の異つた病原体の組合せによる混合感染が,同時に,また相次いで起こることが経験されている。これらの混合感染に際しては,元来治療の目的に用いられた化学療法が,逆に発症の誘因となつていることは見逃せない。

腎機能検査法(1)—PSP排泄試験

著者: 浦壁重治 ,   折田義正 ,   小山紀久子 ,   石橋恭子

ページ範囲:P.299 - P.306

はじめに
 PSP排泄試験は腎疾患の診断上最も基本的な検査法であるから,まずこれより解説を始めたいと思う。ただし腎機能検査法は文字通り機能検査法であるから,測定技術について問題になるところは少なく,むしろ検査術式に注意すべき点が多い。このシリーズでは特にこの点に焦点をあわせ,生理学的ないし病態生理学的レベルまで問題を掘り下げ,常に何故そのようなことが問題となるか解説を試み,単なる技術解説に終わらないよう留意したい。
 さてPSP(phenolsulfonphthalein別名Phenol Redは下に示すような構造脚註1)をもったpH指示薬の一種である。生体に投与されたPSPは体内で殆んど変化を受けず,もっぱら腎より排泄され,この性質が腎機能検査法に応用されている。具体的には投与量の何%が一定時間後に尿中に回収されるかをみる検査法であるが,図1のように排泄量の大小には2,3の因子が関与している。その第1は腎血流量である。成人では両腎に毎分1200ml前後の血液(血漿にして約600ml)が循環しているが,その増減は腎に供給されるPSP量を介して当然尿中PSP排泄量の増減となって現われる。一方腎に到達したPSPは一部糸球体より滬過されるが,残りの大部分は近位尿細管細胞によって排泄され,さらに残りは腎静脈をへて大循環系にもどる。

座談会

梅毒血清反応検査のバラツキをめぐって

著者: 樫田良精 ,   鈴田達男 ,   福岡良男 ,   堀越晃 ,   松橋直

ページ範囲:P.316 - P.326

 松橋(司会)本日は忙しいところ,お集まりいただいてありがとうございました。
 きょうは,この「臨床検査」で計画いたしました梅毒の血清反応のバラツキの調査について,一応の結果がまとまりましたので,樫田先生をはじめ梅毒血清反応をやっておられる東京医科歯科大の福岡先生,東大中検の鈴田先生,それから,実際の検査に携わっておられる東大中検の堀越さんなどにお集まりいただきまして,この問題を検討してみたいと思います。

講座 検査技術者のための臨床病理学講座11

臨床化学検査(3)—非タンパク性窒素の検査とその臨床

著者: 林康之

ページ範囲:P.327 - P.329

I.非タンパク性窒素(Non-Protein Nitrogen:NPN)について
 非タンパク性窒素とはわれわれの体内成分のうち,通常の除タンパク操作で除くことのできない窒素化合物のことで,除タンパク後の滬液に残るところから別に残余窒素ともいっている。したがってその内容は尿素,尿酸クレアチン,クレアチニン,諸種のアミノ酸,アンモニア微量のぺプタイド,グルタチオン,プリン体などが含まれ,臨床検査としては血液,尿あるいは各体液成分について測定される。そして臨床的にNPNの検査は(1)その総量が問題になる場合と,(2)各個々の成分の定量値の変動を問題にする場合と,(3)総量と同時に各成分の動きを知ることを目的とする場合がある。また対象となる検査材料は特殊な場合を除きほとんど血液で,正常健康人の血漿中の非タンパク性窒素成分の量はほぼ表1のようである。
 それでは体液成分中のNPNはそれぞれどのような由来をもっているかをごくかんたんに説明すると図1に示すようになる。

英会話

Laboratory English—No.11

著者: 河合忠 ,   河合式子

ページ範囲:P.330 - P.332

臨床検査室のエチケット

生化学検査室の場合

著者: 丹羽正治

ページ範囲:P.333 - P.335

 数年前に読んだ本の一節にこんな言葉がありました。「私は正直な召使いを六人もっている……その名は,what, why, how, when, where,whoという」。これには職業人一般に通用する心掛が簡潔に表現されていると思います。では生化学検査を受持っている立場からそれらの項目の一つ一つを取り上げ,それから派生するエチケットを考えてみましょう。

研究

簡易検査法の精度に関する研究(2)—Thorombo test(Owren)の使用経験

著者: 佐藤乙一 ,   星野辰雄

ページ範囲:P.336 - P.339

はしがき
 出血傾向の検査法としては古くから出血時間,凝固時間の測定が行なわれてきた。これらの検査法はいずれも出血性疾患の有無をたしかめることには役立っていたがその起因や状況を把握することができないため,実態の究明にはあまり益するところがないというのが定説になっていた。つまり,出血傾向の疾患ないしは出血性素因の原因としては血小板の数や質,毛細血管の強弱,凝血機転の関係など複雑な要素を考慮に入れなければならないにもかかわらず,以上述べたことを把握できないことにあった。そこで,これらの検査に異常をしめした場合はさらに詳細な分類試験にたよらねばならないところから,あくまでふるいわけ試験の域を出なかったのである。とくにこれらの検査法はかなり誤差を招く要素をもっており,術者のちがいによるバラツキ成績はどうすることもできす,また温度による影響と,静脈採血をともなうこと,凝固開始時間と完結時間の測定等多くの時間を要しながら,その割合に功は少ないというのが実態でもあった。
 Prothorombin値測定は松岡等がQuick一段法改良法を昭和24年に発表以来急激に採用されはじめ,当時は,Thoromboprastin粉を各検査科で自家製をしつつもひろまっていったことを記憶している。しかしこの方法も凝血因子中,第V因子,第VII因子しかとらえられず,血液凝固第2相を対象とした異常発見の"ふるいわけ試験"にとどまっている。

血清ならびに尿ビリルビン簡易臨床検査法—Ictotestについて

著者: 木原彊 ,   近藤忠亮 ,   赤未笑入 ,   行武正躬 ,   青山彰

ページ範囲:P.340 - P.343

 黄疸を早期に発見し正確な診断を下すことは,治療の面においても,病状の経過を判断する上においても極めて大切なことである1)2)。古くから血清ビリルビン(以下血清ビと略す)の測定にはMeulengracht氏黄疸指数測定法3),Evelyn-Mallory氏法4),Jendrassik-Cleghorn氏定量法変法5)などがあり,尿ビリルビン(以下尿ビと略す)。の定性反応にはGmelin氏法6)Rosenbach氏変法,Roin氏ヨードチンキ法,中山氏法,Harrison氏法などがある7)。直接bilirubin 2分画と間接bilirubinとを同時定量する測定法としてBilling法16),Schachter法17),Eberlein法18)があるが,なお臨床的意義についてはまだしの感があり又臨床医家には操作が繁雑である。著者らは最近,血清並びに尿ビリルビン簡易検査錠剤として発売されたIctotest(Ames Co・Inc・8)12))(小野薬品輸入)を使用し他の検査法と比較し又再現性についても検討を加えたので報告する。

私の行なっている試切組織標本の迅速作製について—特に脱水透徹兼用剤Methyl Benzoateの使用経験

著者: 神崎正紀

ページ範囲:P.344 - P.347

 Biopsyがある種の疾患の診断に重要な役を演ずることは,多言を要しないことである。Biopsyの過程の中間にあつて,臨床医と病理学者を結ぶわれわれの仕事が非常に大切であり,標本作製がBiopsyの鍵を握るといつても過言ではないと思う。
 ここでわれわれに対する注文を聞いてみよう。臨床家からは"早く作れ",病理の先生には"もつと立派な標本はでぎないか"とこれが偽わらざる事実であろう。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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