抗原抗体反応・6
免疫グロブリンの各クラスと補体結合性
著者:
松橋直
ページ範囲:P.530 - P.531
現在知られている免疫グロブリンには5種類ある.Immunoglobulinを意味するIgに,それぞれのクラスを意味するローマ字の大文字をつけたIgG, IgM, IgA, IgD, IgEである.またガンマー(γ)ということばが免疫に関係あるものとして普及しているので,Igの替わりにγを用いてγGγM,γA,γD,γEと呼んでもよいことになっている.これらの各クラスの免疫グロブリンは,γGグロブリンの基本構造(本誌14巻1号)と相似の構造をもつものが1分子単独のもの,あるいは数分子が重合しているものであると考えられている.たとえば,γAについてみると,L鎖とH鎖の1対ずつからなり,L鎖とH鎖がSS結合で結びついたLHに,同じLHの型のペプチドのH鎖がSS結合で結びつきあい,LHHLの型になっている.このL鎖はBence-Jonesタンパクと相似の化学構造をもったものであり,これにもK型とL型がある.
Bence-Jonesタンパクの場合も,ペプチド鎖を呼ぶときはκ鎖,λ鎖と呼んでおり,これには二重合体のものと単一のものがあるので,ペプチド鎖で略記すれば,κ2,κとλ2,λとがあることになる.γAの場合もこのκまたはλが2つある.そして,H鎖にγAの特徴があり,これはギリシア文学でα鎖と書くことになっている.したがって,γAのペプチドで略記するときはα2κ2またはα2λ2と書くことができる.また,γAには重合しているものもあるので,このときは(α2κ2)2とか(α2λ2)3といったぐあいに表現されている.なお,γAは唾液,乳汁などの分泌液中にもあるが,これは構造がやや異なっており,分泌と関係があるらしいT分屑を介して(α2κ2)T(α2κ2),(α2λ2)T(α2λ2)のような分子構成をもつものと考えられている.