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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査14巻6号

1970年06月発行

雑誌目次

カラーグラフ

風土病の検査(2)—レプトスピラ病—凝集反応

著者: 小林譲

ページ範囲:P.518 - P.519

 レプトスピラ病の確定診断は,病原レプトスピラの分離同定や血清反応によらねばならないが,病気の時期によって検査材料および検査方法が異なるので,これらの点を注意して検査を進めることがたいせつである.
 わが国には,黄疸出血性レプトスピラ病の病原としてLeptospira icterohaemorrhagiae,秋季レプトスピラ病の病原としてL.autumnalis, L.hebdomadis, L.auastralis,イヌ型レプトスピラ病の病原としてL.canicolaがあり,沖縄ではL.pyrogenesやL.javanicaも見いだされている.

グラフ

性染色体の検査法

著者: 松永英 ,   菊池康基 ,   大石英恒

ページ範囲:P.521 - P.524

 性染色体の検査は,種々の性染色体異常個体の検出ならびに診断,および性の分化異常を示す患者の正しい性の判定に欠くことのできない検査である.検査方法としては,染色体検査,性染色質およびドラムスティックによる判定,およびオートラジオグラフィーに基づく染色体の同定があり,これらすべての検査を並行して行なうことが望ましい.

組織と病変の見方 肉眼像と組織像の対比—中枢神経とその病変(1)

著者: 金子仁

ページ範囲:P.525 - P.528

中枢神経系は脳と脊髄である.脳病変として最も多いものは脳出血,脳軟化であり,脊髄疾患として最も注目したいのはスモンとポリオであろう.中枢神経系は,病理解剖に従事した衛生検査技師でないとお目にかかることができないが,病気としては重要な,致命的なものを含むことが多い.したがって十分に理解することが必要である.
本編では脳出血,脳軟化,脳膜炎,脳腫瘍,ポリオ,スモンなどを選んだ.脳腫瘍では髄膜腫,アストロサイトーマを紹介する.ポリオ(脊髄性小児麻痺)は有名な病気であるが現在は非常に少なく,ここに載せたのは1960年に剖検した東大病院例で,きわめて珍しい病変の激しいものである(写真中,臓器のLは左側,Rは右側を示す.この号以後についても同様である).

病理組織のための電顕試料作製法Ⅲ—支持膜とガラスナイフ

著者: 三友善夫 ,   宮本博泰

ページ範囲:P.565 - P.568

試料支持膜作製法
光顕観察時のスライドガラスに相当する電顕試料を載せる膜は,細かい格子状や細隙状の多数の小孔のある円形金属板(シートメッシュ)に張られる.この膜は厚さが100-200A,電子線に強い抵抗性を有し,内部は無構造,電子線を散乱しない透明なもので,ホルムバールやセロイジンが用いられる.また膜の強化の目的でカーボン,シリカ,一酸化ケイ素などを真空蒸着する.支持膜の作製にあたって電顕試料の観察では微細な塵埃も障害となるので,薬品は精製した特級品を,器具はよく洗浄したのちに十分に蒸留水を通し,塵埃をさけて乾燥させたものを使用する.(→左)

抗原抗体反応・6

免疫グロブリンの各クラスと補体結合性

著者: 松橋直

ページ範囲:P.530 - P.531

 現在知られている免疫グロブリンには5種類ある.Immunoglobulinを意味するIgに,それぞれのクラスを意味するローマ字の大文字をつけたIgG, IgM, IgA, IgD, IgEである.またガンマー(γ)ということばが免疫に関係あるものとして普及しているので,Igの替わりにγを用いてγGγM,γA,γD,γEと呼んでもよいことになっている.これらの各クラスの免疫グロブリンは,γGグロブリンの基本構造(本誌14巻1号)と相似の構造をもつものが1分子単独のもの,あるいは数分子が重合しているものであると考えられている.たとえば,γAについてみると,L鎖とH鎖の1対ずつからなり,L鎖とH鎖がSS結合で結びついたLHに,同じLHの型のペプチドのH鎖がSS結合で結びつきあい,LHHLの型になっている.このL鎖はBence-Jonesタンパクと相似の化学構造をもったものであり,これにもK型とL型がある.
 Bence-Jonesタンパクの場合も,ペプチド鎖を呼ぶときはκ鎖,λ鎖と呼んでおり,これには二重合体のものと単一のものがあるので,ペプチド鎖で略記すれば,κ2,κとλ2,λとがあることになる.γAの場合もこのκまたはλが2つある.そして,H鎖にγAの特徴があり,これはギリシア文学でα鎖と書くことになっている.したがって,γAのペプチドで略記するときはα2κ2またはα2λ2と書くことができる.また,γAには重合しているものもあるので,このときは(α2κ2)2とか(α2λ2)3といったぐあいに表現されている.なお,γAは唾液,乳汁などの分泌液中にもあるが,これは構造がやや異なっており,分泌と関係があるらしいT分屑を介して(α2κ2)T(α2κ2),(α2λ2)T(α2λ2)のような分子構成をもつものと考えられている.

ノモグラム・6

コレステロールエステル比の求め方

著者: 水野映二 ,   青木志津子

ページ範囲:P.533 - P.533

求め方 ジギトニソー塩化鉄法(北村元仕他:臨床化学分析III,東京化学同人)で求めた総コレステロール(T.C)および遊離型コレステロール(F.C)(総コレステロールの2.5倍の抽出液を用いる)の吸光度をおのおのの目盛りにそって移行し,その交点を得,それをさかのぼると求めるエステル比となる.エステル比=T×2.5-F/T×2.5×100(%)
 注意 エステル比60%以下,80%以上の値は求められない.単位のとり方を変えるこによってはTC, FCの濃度からでも求められる.なお,吸光度の交点の角度は一定であるから,図に示す印太線の角度をもった定規を透明なセルロイドで作って,T, CとF.Cの吸光度の交点にあてて使用するとさらに便利になる.

検査室の便利表・6

常用pH緩衝液の作り方

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.535 - P.535

リン酸塩緩衝液Sφrensen,Michaelis,Hastings原液A 0.2Mリン酸一カリウム

総説

臨床検査のための試薬とその純度

著者: 坂岸良克

ページ範囲:P.537 - P.542

 99.9999%の時代—正確度,精度の高いデータを追うことは検査の究極目標といってもよい.化学分析の測定誤差を生じる原因の1つに試薬の純度の問題がある.ここでは単純試薬,調製試薬,標準液の性質・取り扱い方,不純物の試験法などについて解説する.

技術解説

レプトスピラ病の検査室内診断

著者: 小林譲

ページ範囲:P.543 - P.547

 黄疸出血性レプトスピラ病(ワイル病)の病原体が,稲田と井戸(1915)によって発見されて以来,世界各地で多数のレプトスピラが人や動物から分離され,現在その数は60種余りにも及んでいる.これらのうち,わが国にはLeptospiraicterohaemorrhagiae(黄疸出血性レプトスピラ),L. canicola(イヌ型レプトスピラ),L. autumnalis(L. hebdomadis A,秋季レプトスピラA),L. hebdomadis(L. hebdomadis B,七日熱レプトスピラ,秋季レプトスピラB),L. australis(L. hebdomadis C,秋季レプトスピラC)があり,L. bataviaeおよびL. pyrogenesの存在も疑われている.また,沖縄ではL. javamicaも分離されている.これらのうち,黄疸出血性レプトスピラ病は,黄疸と出血ならびに腎炎を主徴とし,経過が早く,早期に適切な治療が行なわれない場合には,死亡率が30%前後にも及ぶ危険な疾患である.
 レプトスピラ病の確定診断には,患者からのレプトスピラの分離同定と特異免疫抗体の証明とがあるが,疾患の時期によって検査材料および検査方法が異なるので,これらを表に要約した.

末梢血単核細胞の鑑別

著者: 新谷和夫

ページ範囲:P.548 - P.553

 単核細胞ということばは主として病理学の分野で用いられてきたが,その意味するところは核が分葉傾向を示すことなく,円形の細胞というようなものであった.したがって,細胞の種類という観点からすると骨髄芽球,リンパ芽球,赤芽球骨髄球,単球,リンパ球などかなり広範なものが包含されることになる.ところが細胞個々というより細胞相互間の有機的連関,すなわち構造の変化を主として探究してゆく病理学にあっては,このような広い概念をもつことがきわめて有用なことは容易に推定しうるであろう.しかし不思議なことに,単核細胞ということばは個々の細胞を扱う血液学の分野でも盛んに用いられている.そこで本文では末梢血中の単核細胞の問題を取り上げ,その鑑別法についてふれてみたい.

私のくふう

RA試薬セットを応用した血液型判定

著者: 横山協生

ページ範囲:P.553 - P.553

目的
 血液型(ABO式)判定は,成書によると熟練者3%,未熟者10%の誤りがあるといわれています.私自身のにがい経験を生かして,初心者にもよくわかるようにと思いついた方法です.

臨床検査の問題点・18

細菌と塗抹検査

著者: 高橋昭三 ,   舘野捷子

ページ範囲:P.554 - P.559

 細菌の塗抹検査の目標はいうまでなく菌の形態学的な同定である.よりよい検査結果を出すためにはどの染色法がよいのか,鏡検時の背景をどこまで見るか,検体の均等化は必要なのか,そしてデータの報告のしかたなどを検討し,あわせて塗抹検査の将来も展望する.

主要疾患と臨床検査・18

急性意識障害と臨床検査

著者: 稲垣克彦

ページ範囲:P.560 - P.564

 各種の脳疾患,代謝障害,外因性中毒などの際に意識障害が起こる.
 意識障害の基本型を次の4つに分類する.

1ページの知識 生化学

臨床化学検査室と直視分光器

著者: 降矢熒

ページ範囲:P.569 - P.569

1.直視分光器とは
 分散した光(スペクトル)を綿密に調べるために分光器が使われる.図1のように屈折率の異なる2種類の三角プリズムを数個組み合わせて鏡筒の中央部に置き,その前方には"スリット"と"コリメーターレンズ"を置き,後方には小形の望遠鏡接眼部を置くと入射光と射出光とはほとんど一直線になる.そして入射光線の方向にほぼ直交した焦点面に分散されたスペクトルを観察することにより,着色した試料の検査分析を行なうことができる.400-800mμの波長目盛りの像が同時に焦点面に現われるようにした形式のものが便利である.

血液

出血時間・凝固時間の測定について

著者: 糸賀敬

ページ範囲:P.570 - P.570

出血時間の測定
 出血時間は血小板数,血小板の機能,組織ならびに毛細管の収縮力などに左右され,血液ならびに組織凝固因子などとも多少関係がある.
 皮膚に小切創を作り,湧出する血液を30秒ごとに濾紙に吸い取り,自然に止血するまでの時間を測定するのであるが,デューク法(Duke法)とアイビイ法(Ivy法)とがある.前者の正常範囲は1分から5分まで,後者の正常範囲は1分から7分までである.出血時間が延長するときには,毛細血管の異常か血小板の異常を考える.その場合には血小板数の算定や,毛細血管抵抗試験を同時に実施しなければならない。

血清

リウマチ因子とRA-テスト

著者: 水谷昭夫

ページ範囲:P.571 - P.571

Rheumatoid factor-RF
 RFは関節リウマチ患者のおおくにみられるMW約100万の特異なマクログロブリンで,電気泳動ではβ-γ領域に出現する.免疫グロブリンクラスとしてはIg-Mに属するものとされるが,Ig-G class,Ig-A classのものもあるらしい.尿素処理,または加熱による変性を受けたIg-Gと沈降物を作り,aggregatedの哺乳類のIg-Gとはよく反応するが,鳥類のものとは反応しがたいということである.
 RFが,このようにヒトγ-グロブリンと反応することから,これをγ-グロブリンに対する自己抗体と考える人は多い.しかし,このように抗体とは考えない意見もある(Aho, K., 1961).

細菌

検体別細菌検査(2)

著者: 土屋俊夫

ページ範囲:P.572 - P.572

3.尿
 尿の細菌検査は腎盂腎炎,腎盂炎,尿路結核(腎結核,膀胱結核),膀胱炎,尿道炎などの尿路感染症,および腸チフス,パラチフスなどのサルモネラ症,ワイル病などのレプトスピラの場合に,病原菌検索の目的で行なわれる.
 腎盂腎炎,膀胱炎の原因菌は大腸菌その他の腸内細菌,緑膿菌,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌・腸球菌などで,いずれも尿道あるいは外陰部に常在しうる菌である.したがってこの場合,菌の種類だけから原因菌か混入した常在菌かの区別は不可能であり,採尿のし方が大いに問題となる.常在菌として存在しない淋菌,結核菌,サルモネラ,レプトスピラなどが検出された場合は,採尿法が多少まずくて常在菌が混入しても,疾病がこれらの菌によることは明らかである.このように淋菌性尿道炎,尿路結核,サルモネラ症,レプトスピラ症と,腎盂腎炎,腎盂炎,膀胱炎の場合とでは,尿の採り方,検査の進め方にかなりの相違がある.

病理

薄切への準備

著者: 和田昭

ページ範囲:P.573 - P.573

1.台木への接着
 前回,板チョコを割る要領で個々のパラフィンブロックに分けると述べたが,この際プロッグの形をできるかぎり面が長方形になるようにしておくと,連続切片を作るときに,切片同志が密接してきれいにできあがる.台木に接着させるにはまずパラフィンの小片を台木表面にのせ,熱したスパーテルで溶かしてブロックをとりつけるが,その場合スパーテルの上にブロックを軽く置き,スパーテルを抜きとると同時にブロックを押しつけるようにすると固く接着できる.ブロックの周囲をなでつけてパラフィンを溶かしておくと一層はがれにくいうえ,形を整えることもできるのでよい.台木の新しいのを使うときは,十分なパラフィンでつけるようにしないと,薄切中にポロリとはがれてしまうことがある.
 台木には木,金属,エボナイト製のものなどがあるが,パラフィンブロックには木を用いるのが普通である.朴,樫など硬い材質のものがよい.新しい台木は使用前に炭酸ソーダ液で数時間煮て樹脂をとり去って,よく洗ったのち乾燥して用いるのがよい.

生理

—正常波形や記録のなりたちと生理的基礎知識—心電図

著者: 春見建一

ページ範囲:P.574 - P.574

 正常心電図といっても,正常範囲が比較的広く,種々なパターンがあるので,ここでは平均的正常心電図と電気生理学的事実を結びつけてみたい.洞結節から出た刺激は心房に伝えられ,洞結節の周囲がまず興奮し,興奮は波紋のように右心房から左心房へ伝わる.興奮部と未興奮部の境に起電力を生じ,その方向は未興奮部の方向に向かう.起電力は,洞結節周辺からまず左前下方に向かい,次いで左後方下に向かうので,P波は図1のように正面ではⅠ,Ⅱともに上向きとなり,Ⅲでは上向きまたは2相性となる.胸部誘導では,V1は2相性,V6では上向きとなる.P波の幅は約0.1秒で,心房の興奮開始から終了までの時間を示す.心房の興奮は,房室結節に伝えられる.房室結節では興奮の伝導は遅く,これがP-Q時間が0.12-0.20秒ある理由である.
 興奮による心室起電力の軌跡は,図2のようにまず左室前乳頭筋起始部と中隔の興奮を反映し,右前横または上に向かい,次いで右前より左前下を回りながら左室側壁の興奮時,最大となって左後下に向かう.左室後壁,中隔上部と興奮するに従って,左後下より左後方,右後上方に達し原点に戻る.QRSはⅠ,Ⅱ,Ⅲとも上向きになり,ⅡのRが最大となる.心室興奮のはじめの起電力は右前上に向かうので,この部分がⅠ,Ⅱの小さなqとなる.また,終わりのcrista supra ventricularisの興奮は右上後に向かうので,Ⅰ,Ⅱ,Ⅲの小さなSとなる.胸部誘導では平均的な起電力は右前より左後方に向かうため,右胸部誘導V1,V2ではSが深くなり,左胸部誘導V5,V6ではRが高くなる.その中間V3,V4ではRとSがほとんど同じになる.すなわち移行帯である,右前に向かうはじめの起電力は小さく,これがV1,V2の小さなrおよびV5,V6の小さなqを形成する.終わりの右上に向かう起電力により,V5,V6の小さなSが形成される.したがってQRSの形は基本的にV1,V2はrS,V3,V4はRS,V5,V6,はqRsとなる.

寄生虫・原虫

寄生虫の検査法(6)—免疫血清学的検査(2)

著者: 久津見晴彦

ページ範囲:P.575 - P.575

補体結合反応と血球凝集反応
 補体結合反応 肺吸虫症,糸状虫症,包虫症,住血吸虫症,肝吸虫症の診断に用いられているが,一般的には皮内反応に比べると特異性の点で劣るようである.
 肺吸虫症では虫卵陽性者の85-95%が陽性となるが,健康人でも10%が陽性となる.しかし肺臓内の虫嚢を外科的に切除した例では1か月後に抗体価が急激に低下し,4か月後には完全に陰転しており,また薬剤投与で完全治癒したときは1年以内に陰転するが,不完全治癒では抗体価は低下せず1-3か月後に虫卵が陽性となった報告があるので,補体結合反応は治癒の判定に用いられる.

論壇

思いつくままに

著者: 清水文彦

ページ範囲:P.578 - P.579

 急に変わらなければならなかった大学の中での仕事のつごうから,創設以来たずさわってきた医学部付属衛生検査技師学校の校長をやめたのは昨秋のことである.文京学園医学技術科での講義を頼まれたのが先であったから,この教育課程での医学概論の講義を10年もやってきたことになる.
 医学概論といっても,医学部の教育課程にある本格的な医学の哲学ともいうべきものとはちがっているから,適不適は別としてやってきたわけであるが,今まで直接関連のなかった医学の専門科目を突然にぎゅうぎゅうつめこまれて,おそらく多少は覚悟はしていてもそれ以上にめんくらっているであろう高校を出たばかりの人たちに,医学というものを一番てっとり早く理解してもらう手段としてまず医学の歴史のお話をした.現代の科学的医学の主流をなしている西洋の医学がどのようにして起こり,どのような流れかたをして,現在どんな様相を呈しているか,そしてまたこれからのいく末はどちらに向くであろうかをかいつまんで話せば,きっと医学というもの,そしてその分科の各専門科目の修得に役だつだろうと思ったからである.

座談会

超微量化学検査への道

著者: 嵯峨美枝子 ,   大場康寛 ,   丹羽正治 ,   橋本久子 ,   斎藤正行

ページ範囲:P.580 - P.589

 超微量定量のメリットは能率・経済・精度の各面で大なるものがある.しかし,臨床検査室では,現実面でなかなか導入できない問題点や不安が潜在している.体内の豊富な化学的情報を的確にとらえ,臨床に生かすにはどうしても,その"つっかえ棒"を取り除かねばならない.

海外だより

フィンランドの臨床検査室—メーラハチ病院の勤務を終えて

著者: 川村秀子

ページ範囲:P.590 - P.593

 以前に,国際臨床検査技師会議(IAMLT)に参加したことについて紹介させていただきましたが(本誌,13,4),今回は,北欧の小国フィンランドの衛生検査技師(ラボラトリーナース)と,私自身その仕事について1年間いっしょに働いた経験をもとに,私の目に写った印象などを紹介したいと思います.

ひろば

病院実習を考える

著者: 大林弘幸

ページ範囲:P.593 - P.593

インターンとは,道は開いてくれるが1人で歩くものである
 私の病院にも,地方の病院としては珍しく,ある学校の実習生が来ます。しかし,私たちは教育の専門家でもなければ,臨床検査の学者でもありません.普通の検査技師です.学生の教育などと大それた考えはもっておりません.教育とは私のような,"やすっぽい人間"のやることではないと考えます.
 指導(さして道をしめす)はするが,教育(教え育てる)はしない方針です.

研究

Immunocrit法によるβ-リポタンパク測定法の検討

著者: 坂野重子

ページ範囲:P.594 - P.598

はじめに
 1961年,Heiskellら1)によって提唱された,免疫血清反応を応用したβ-リポタンパク測定法は,β-リポタンパクに対する特異性が高く,しかも測定操作法が簡単であるところから,疾病と脂質代謝の論議のやかましい最近の趨勢において,急速の普及をみた.そして,なおこの普及は,米国のハイランド社から,いち早く測定キットβ-Lテストが市販されたことに負うところが大きい.
 このβ-Lテストについては,測定操作法,正常値,疾病との関係,他の脂質測定法との相関など,すでに多くの報告があり,測定にあたっては,厳しい操作条件を規定しないと,よい再現性が得られないことなどは,今日ではよく知られているところである2-6,9-13)

肝吸虫卵排出から見たその生存期間

著者: 長谷川幸一 ,   藤間明美

ページ範囲:P.599 - P.600

はじめに
 肝吸虫の生存期間は一般には数か年以上と考えられており,最も長いので小林(1910)は自分で肝吸虫メタセルカリヤを試食し,1か月後に虫卵の排出を見て,その後排出を見つづけて,満8年以上は生存しうるものと報告している1)
 私たちも1患者の虫卵の排出を観察し,より長い生存期間の成績を得たので報告する.

新しいキットの紹介

感染性単核球症の診断試薬Mono-Testの使用経験

著者: 伊藤忠一

ページ範囲:P.601 - P.603

はじめに
 感染性単核球症はリンパ腺腫,脾腫および発熱などを主訴とする熱性疾患で,現在ウィルスによる感染症と考えられている.本症は,欧米各国においてかなり高頻度にみられる疾患であるが,本邦においても鏡熱・日向熱・土佐熱などと呼ばれてきた風土病,小児のリンパ腺腫を伴う熱性疾患などと臨床症状がきわめて類似しており,その鑑別は必ずしも容易ではない.
 従来,本症の診断には血清中の異好性抗体を検出するPaul-Bunnell反応1)(P-B反応)および,これら異好性抗体のウシ血球およびモルモット腎による吸収試験(Davidsohn)2)が用いられてきたが,本反応は血清病,肺炎,マラリア,溶血性黄疸,はしか,流行性耳下腺炎,猩紅熱,herpes,白血病,泉熱,リウマチ様関節炎,多血症,急性肝炎,各種リンパ腺腫などでも高値を示すし,またDavidsohn吸収試験は必ずしも典型的なパターンを示さないことがあるため,特異性という点では問題がある.一方,Henleら3,4),日沼ら5)によって感染性単核球症の病原ウイルスがEBウイルスであろうという血清学的証拠が提出されており,EBウイルス抗体価を測定することによってその病原診断,経過の判定が可能になりつつある.しかしながら,本抗体の定性,定量には螢光抗体法という繁雑で高度の技術が必要であり,日常検査として採用するには多くの困難を伴う.また,感染性単核球症のすべてがEBウイルス感染によって起こるものではないと同時に,感染性単核球症以外の疾患でもEBウイルスが病原となっている場合も多く考えられている5,6)

質疑応答

カルチャボトルの血液培養について

著者: K生 ,   小沢敦

ページ範囲:P.613 - P.613


1)24-48時間培養で混濁を認めたが,それ以後培養を続けるとむしろ混濁度が少なくなるようなものを経験するのですが,いかなる理由なのですか.
2)混濁はかなり認めるが,菌陰性の場合があるのですが……

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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