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雑誌目次

論文

臨床検査45巻4号

2001年04月発行

雑誌目次

今月の主題 高齢化 巻頭言

高齢者の臨床検査値

著者: 折茂肇

ページ範囲:P.351 - P.352

 臨床検査値を評価する際の基準として最近では正常値という言葉は使わずに基準値,あるいは基準範囲という言葉が使われている.従来は正常人の集団について得られた平均値±2標準偏差,または95%の人が含まれる範囲を正常値としてきたが,高齢者の場合には正常者の定義が難しいので,より実用的な考え方として,健康生活者に最も多く認められる測定値が基準値として用いられている.
 さらにまた血圧,血清脂質,血糖などの生命の予後に関係が深い検査値については,自立して長生きが可能な理想的な測定値を基準値とする考え方もある.

総説

臨床検査値の加齢変化

著者: 西田敏信

ページ範囲:P.353 - P.358

 性,年齢別に計算した基準範囲を基にし,臨床検査数十項目の加齢変化について記述した.上昇,低下あるいはこれらを組み合わせた変化など男女間の差異を含め,加齢変化は多種多様であった.女性では,月経を繰り返す期間とそれが終了した期間との移行時期である更年期に,女性特有の加齢変化が認められた.また,高齢者の基準範囲は個人差が大きいこと,および基準範囲計算法で削除される異常者の標本が多くなり,疾病を内在する高齢者ではここに示した加齢変化がさらに増幅(言い換えるならば加齢の速度が速くなる)されることが考えられる.臨床検査値を有効に利用するためには,基準範囲だけでなく,ここに示した加齢変化図を理解することが重要である.

老化に関連する遺伝子

著者: 鍋島陽一

ページ範囲:P.359 - P.364

 老化に伴う疾患を克服することは人類の有史以来の願望であり,多くの試みが続けられており,老化現象の理解は急速に深まっている.その成果として,①テロメア長を伸長させるテロメラーゼが同定され,テロメア長が閾値以下になると染色体の不安定性,細胞分裂の停止が誘導されること,②早期老化症の原因遺伝子はRecQ型DNAヘリカーゼファミリーに属しており,その欠損により染色体が不安定化し,老化症状や癌を引き起こされること,③早期老化症状を呈するklothoマウスが樹立され,β-グルコシダーゼファミリーに属する原因遺伝子が同定された.

分子遺伝学的な老化のメカニズム

著者: 名倉潤 ,   三木哲郎

ページ範囲:P.365 - P.370

 近年,テロメアの異常,加齢に伴う遺伝子の発現変化,細胞間質の変性と減少,酸化ストレスなどの相互のつながりと個体老化への関与が盛んに研究され,それらの知見に基づいて老化の分子遺伝学的なメカニズムを考えられるようになってきている.

技術解説

高齢者のストレス応答

著者: 東監

ページ範囲:P.371 - P.376

 加齢に伴う老化現象の1つとして外部環境の変化に適応する能力が低下することが挙げられる.ヒト,ラット,およびヒト正常培養細胞などで,熱ショックに対してHeat shock protein(HSP)とそのmRNAの発現,あるいはHSP遺伝子の転写因子(HSF)の活性化などが加齢とともに徐々に低下することが示された.加齢につれてHSFが減少するのではなく,その活性化の段階が年齢とともに低下する.加齢とともに細胞内のレドックス状態が変化すること,あるいは異常蛋白質の増加などがHSFの活性化低下に関連した因子である可能性が示摘されている.高齢者におけるストレス応答とアポトーシス,および老年期に起こる神経退行変性疾患の発症におけるHSPの功罪についても言及した.

腎血管抵抗度と加齢

著者: 細島弘行

ページ範囲:P.377 - P.382

 加齢に伴い動脈硬化は進展する.動脈硬化の程度を知る方法として,動脈壁肥厚度測定が用いられてきた.超音波診断法である腎カラードプラ法はこれまで,生体移植腎の状態把握に使用されてきたが,本法が腎内動脈血管抵抗度を反映することから,腎実質性疾患の病態把握にも利用されるようになってきた.本稿では,腎ドプラ法を使って,腎小動脈血管抵抗度への加齢の影響や,高血圧,糖尿病腎症における変化について述べた.さらに,ドプラ機器の進歩に伴い,より詳細な情報が得られるものと期待される.

血圧の感受性と加齢

著者: 安東克之 ,   藤田敏郎

ページ範囲:P.383 - P.387

 加齢とともにわれわれの文明社会では高血圧の頻度は高くなる.これには食塩の過剰摂取が重要な因子である.すなわち,加齢に伴い腎機能をはじめとする水電解質代謝に重要な諸機能の低下を認め,そのために血圧の食塩感受性が亢進することが,加齢による血圧上昇に関与しているものと考えられる.また,味覚の低下に基づく食塩摂取量の増加もこれに拍車をかけていると推測される.

話題

老化と造血機能

著者: 森眞由美

ページ範囲:P.389 - P.393

1.はじめに
 人の加齢に伴う変化を論じることはなかなか困難である.調査した集団が真の高齢健常者であるかどうかを厳密に検討することが難しいからである.一般的な検査で正常であっても,隠れた疾患があるかもしれないし,環境的な問題で特殊な異常を示しているかもしれない.血液細胞は日々新生されているため,体内のわずかの変化によっても異常が出てくる可能性が高い.こういった理由により,血液系の加齢に伴う変化は,報告により結果が異なり,結論が出されていないものが多い.

老化と腎機能

著者: 堀尾勝 ,   折田義正

ページ範囲:P.395 - P.397

1.糸球体硬化
 糸球体硬化は加齢に特徴的な腎病変として知られており,個人差はあるが硬化糸球体の割合は加齢に伴い増加する(図1)1).尿細管の萎縮,間質の線維化を伴いながら腎硬化症へと進行すると考えられる.
 腎硬化症は高齢者で急増し,70歳以上では透析導入原疾患の17%を占めている(図2)2)

老化とチロシン水酸化酵素

著者: 永津郁子

ページ範囲:P.399 - P.403

 チロシン水酸化酵素(TH)はカテコールアミン生合成の第一段階の律速酵素であり老化に伴って変化する.
 4つのカテコールアミン生合成酵索〔TH,芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(AADC),ドーパミンβ水酸化酵素(DBH),フェニールエタノールアミンNメチル転移酵素(PNMT)〕と神経伝達物質〔ドーパミン(DA),ノルアドレナリン(NA),アドレナリン(AD)〕につき,脳の発達から老化までを正常と異常とで比較した.

内因性NO合成酵素阻害物質と老化

著者: 松岡秀洋 ,   今泉勉

ページ範囲:P.405 - P.411

1.はじめに
 17世紀に英国の医師Thomas Sydenhamが"ヒトは血管とともに老いる"と示唆したように,血管の形態的・機能的変化は老化のプロセスにおいて極めて重要な役割を果たしている.すなわち,老化に伴い,大小動脈においてカルシウムが沈着し間質の変性や血管平滑筋の増加による血管コンプライアンスの低下がみられ,細小動脈においてヒアリン―フィブリノイド蓄積と安静時末梢血管抵抗上昇が生ずるために心負荷が増加する.さらに,血管拡張反応低下/収縮反応亢進という血管反応性の異常が加わり,これらが錯綜することで,高齢者にみられる心血管病の病態が形成される.
 一酸化窒素(NO)は,ガスであることに由来する受容体を介さない迅速な信号伝達と,ラジカルであることに由来した産生局所での不活化のため主にパラクリン―オートクリンとして作用するという特性を有し,極めて多彩な生物学的活性を呈する.すなわち血管内皮から産生されたNOは,血管トーンの調節・血小板凝集粘着抑制・細胞接着分子発現抑制・血管平滑筋増殖抑制などを介して血管保護作用を有するのみならず,その合成酵素の局在部位により,中枢および末梢の交感神経活性や,腎におけるナトリウム利尿を通じて循環調節に大きく関与する.

老人施設での皮膚疾患

著者: 山田悟

ページ範囲:P.413 - P.415

1.はじめに
 近年,介護保険の問題をはじめ老人の医療に関してさまざまな議論がなされている.老人の皮膚疾患に関しても,皮膚悪性腫瘍の増加など種々の問題点が指摘されているところである.特にいわゆる老人施設においては,疥癬の集団発生など,その対策は急務と考えられている.
 さて,広島県地域保健対策協議会皮膚疾患委員会は,その対策の第一歩として1996年より広島県における老人の皮膚疾患に関する調査を開始している.1997年3月には広島県の皮膚科医に対して老人の皮膚疾患に関するアンケート調査を行い1),また,同年10月には老人施設に対してアンケート調査を施行している2)

加齢と脳の形態学的変化

著者: 福谷祐賢 ,   杉本貴人 ,   伊崎公徳

ページ範囲:P.417 - P.421

 加齢に伴って,脳は形態学的ならびに機能的変化をきたす.その形態学的変化は臨床的には画像所見で脳の萎縮が確認され,顕微鏡レベルでは神経細胞の脱落,神経原線維変化や老人斑などの老年性変化として捉えられる.
 ここではまず最初に加齢に伴う脳の肉眼的変化を,次いで顕微鏡的変化について,最後に頭部MRI (magnetic resonance imaging)画像による変化について概説する.

今月の表紙 帰ってきた寄生虫シリーズ・16

住血吸虫類

著者: 藤田紘一郎

ページ範囲:P.348 - P.349

 ヒトに寄生する住血吸虫類には日本住血吸虫(Schistosoma japonicum),ビルハルツ住血吸虫(S.haematobium),マンソン住血吸虫(S.mansoni),メコン住血吸虫(S.mekongi)およびS.intercalatumの5種が知られている.日本住血吸虫は中国・揚子江流域,フィリピン・レイテ島など,メコン住血吸虫はメコン川流域に,ビルハルツ住血吸虫は中近東,アフリカに,マンソン住血吸虫はアフリカ,南米,中近東で流行している.日本ではかつて甲府盆地,広島県福山市神辺地方,筑後川流域,利根川流域に日本住血吸虫の流行地があったが,現在は新しい感染はなく,慢性の患者がみられるだけである.最近は,熱帯地を旅行中に川や湖で泳いで感染する,いわゆる輸入感染症として重要である.
 成虫は雌雄異体で,雄は約体長12~20mm,体幅0.5mmで体前部は円筒状,体後部は鞘状で雌を包み込む抱雌管になっている.雌は体長約25mmで,抱雌管内にいる(図1).虫卵内には既に幼虫ミラシジウムが形成されている.日本住血吸虫卵は約70μmで卵殻の一方に小棘が突出している.ビルハルツ住血吸虫卵は長径180~190μmで大きな棘が後方に,マンソン住血吸虫卵は110~180μmで側後方に棘があり鑑別に役立っている(図2).

コーヒーブレイク

唾液と腫瘍マーカー

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.422 - P.422

 昔から胃腸の丈夫な人は唾液が多く,また空腹時に美味しい食物を見ると,口の中に唾液が出てくると言われている.
 唾液は消化液のなかでも胃液に次いで多く分泌され,1日の平均量は1,500mlになる.高齢者になると唾液の出方が少なくなり,夜中に口が乾くためコップに水を入れて枕もとに置く人も珍しくないことはよく知られている.

信州の秋

著者: 屋形稔

ページ範囲:P.428 - P.428

 20世紀末の秋も深まった2000年11月中頃,松本で信州大学中央検査部の創設40周年記念会があった.地元関係者が中心であったが,各地から斯学関係の錚々たる現役メンバーも十数名顔をみせ賑やかであった.先代教授の金井正光氏との関係から私も招かれて彼氏の退官記念以来初めて信州大学を訪れた.あの時は4月の大雪が印象的であったが,11月の信州の空は晴れ渡って紅葉が美しかった.
 40年前新潟大学中央検査部も同時に発足し,両校は国立の歩みとともに歩いて来た.東京大学の樫田良精氏を中心として年2回の中央検査部会議は希望と失望の中で議論も白熱化したが,振り返ってみると当時の仲間は皆懐かしい.とりわけ金井氏のご尊父の泉先生は新潟大学の大先輩で親しくご指導いただいた.自然に両大学中央検査部で毎年中間地点にある妙高山麓で合同して一泊のセミナーを開くことになり,お互い学問的交流にひたるのが楽しい行事となった.記念会には当時の信州大学中央検査部の技師の方々も顔をみせ懐かしがってくれた.

シリーズ最新医学講座―免疫機能検査・4

肥満と免疫機能

著者: 小野寺秀記 ,   坂根直樹 ,   吉田俊秀 ,   吉川敏一 ,   近藤元治

ページ範囲:P.423 - P.428

はじめに
 栄養と内分泌,そして免疫は生体の恒常性を保つ機能的な環の中にあって,相互に深く関連し合っている.そして,新世紀を迎えた今日,日本人の誰もが"肥満"を不健康で好ましくない身体状況と考えて,ダイエットや運動に励むようになってきた.「豊かに,そして健やかに生きて行きたい」という万人の願望は,"肥満"にかかわる経済や研究をますます盛んにしてきているのである.
 まず初めに,「肥満は悪しきこと」と考えられるに至った経緯を,その100年にも満たない歴史を少しだけ振り返ってみたい.

トピックス

微量CRPと冠動脈疾患

著者: 藤田誠一 ,   角谷勇実 ,   片山善章

ページ範囲:P.429 - P.431

1.はじめに
 ヒトC反応性蛋白(CRP:C-reactive protein)は,1930年にTilletとFrancisによって肺炎患者血清から発見され,Ca2+存在下で肺炎球菌のC多糖体中のホスフォリルコリンと複合体を形成することからCRPと命名された.
 CRPは肺炎球菌菌体の多糖体と沈降反応を示す5個のサブユニットが環状に結合した分子量105,000の蛋白であり,アミロイドのp-compo-nentやpentraxinと類似した構造を有している.

人工血液

著者: 池淵研二 ,   池田久實

ページ範囲:P.431 - P.435

1.はじめに
 人工血液が開発され臨床に利用できるようになったら,医療はどんなに変わってくるだろうか,と考えられている方が多いと思う.阪神大震災の際にも被災者への輸血に献血由来の血液だけで間に合うか,危機意識を持たれた方も多かったと予想される.
 そこで人工血液の開発状況を紹介させていただき,現時点の到達点を知っていただき,興味を持たれた方々がそれぞれの専門領域で開発をサポートしていただけるようにと期待を込めて話を進めたい.

前立腺癌のGleason分類

著者: 小西登

ページ範囲:P.435 - P.437

1.はじめに
 前立腺癌から発生する悪性腫瘍はほとんどが上皮性の癌であり,そのうち95%以上は腺房上皮由来の腺癌である.移行上皮癌や扁平上皮癌が発生することもあるがまれで,腺癌のうちの一部としてみられることもある.また特殊な腺癌として類内膜腺癌,嚢胞腺癌,粘液癌,腺様嚢胞癌などがあるが,これらも極めてまれである.
 前立腺癌の組織分類は現在までに約40種類に及ぶ分類法が提唱されており,いまだ国際的に統一されていない1).1994年に開かれたUICC (国際癌会議)においても,3段階のgrade分類が望ましいとされたものの,特定の分類法は規定されなかった2)

隔壁性細胞質内空胞

著者: 廣川満良

ページ範囲:P.437 - P.439

 隔壁性細胞質内空胞(septate cytoplasmic vacuoles)とは甲状腺の穿刺吸引細胞診で乳頭癌細胞の細胞質内に存在するブドウの房状に集合した空胞のことである(図1).この空胞の存在は1985年,AbeleとMiller1)によって最初に報告され,甲状腺乳頭癌を示唆する重要な細胞所見の1つとして知られている.最近まで隔壁性細胞質内空胞の本態が何であるかは解明されていなかったが,昨年,電顕的観察により粗面小胞体の拡張であることが明らかにされた(図2)2)
 隔壁性細胞質内空胞は,塗抹標本上,細胞質がライトグリーンに好染し,細胞境界が明瞭ないわゆる化生細胞(metaplastic cell)と呼ばれているタイプの乳頭癌細胞が集合重積性に出現する場合に観察されやすい.個々の空胞は小型で,ほぼ同じ大きさを呈し,ブドウの房あるいはシャボン玉の泡のように見え,空胞間には明瞭な細胞質が隔壁状に存在する.この空胞は乳頭癌の52.6~64.0%に出現すると報告されている3,4)が,特に嚢胞型乳頭癌での出現率は高く,われわれの経験では嚢胞型乳頭癌9例中6例に観察された5)

HCV抗原検査の展望

著者: 森勝志 ,   米田孝司 ,   片山善章

ページ範囲:P.439 - P.441

1.C型肝炎
 C型肝炎はC型肝炎ウイルス(HCV:Hepati-tis C Virus)の感染により成立し,その成立は,大部分がHCVを含んだ血液の輸血や血液製剤の使用などの医療行為にあると考えられている.感染後は,2週間から6か月の潜伏期を経て,食欲不振,全身倦怠感,腹部不快感,悪心嘔吐などの症状が出現する.一般的には軽症例が多く,60%以上が慢性化(キャリア)し,10~20年以上の経過で肝硬変1)から肝癌2)に移行するケースが非常に多い.

質疑応答 その他

検査の有効桁数の決め方

著者: N生 ,   三宅一徳

ページ範囲:P.443 - P.445

 Q 新しい機械では,検査結果のデータが何桁も出力されてきます.当検査室では有効桁は3桁ぐらいで報告しておりますが,どのくらいの桁まで有効なのでしょうか.有効桁の決め方についての方法があればお教えください.

米国の臨床検査室

著者: K生 ,   坂本秀生 ,   坂本美佐

ページ範囲:P.445 - P.446

 Q 医療先進国と言われる米国では,臨床検査室はどのような体制で運用され,機能しているのかなど,わが国との違いも含めて教えてください.

私のくふう

採痰容器の改良―喀痰の均質化を目指して

著者: 富田元久 ,   木下幸保 ,   新田忠善 ,   木村伸生 ,   入江章子

ページ範囲:P.447 - P.448

1.はじめに
 最近,抗酸菌検査として集菌塗抹法,PCR検査,液体培養などの新しい検査方法がルーチンとして稼動している.これらの方法は,集菌のために3,000×g,20分間の冷却遠心工程が不可欠である.従来使用していた喀痰容器では高速遠心ができない形状,素材であるので,喀痰採取容器の変更が必要になった.当院では1か月の検体数は約1,200件あるので,①一度にできるだけ多く遠心したい,②新しい検査のポイントになる喀痰を均質にする,の2点に重点を置き既製品を探したが,ニーズに合ったものがなかった.そこで種々検討し,アジア器材株式会社に協力をお願いし,喀痰容器を完成したので紹介する.
 図1に仕上がったサイズ25φ×110.5mm (35ml)の採痰管を示す.

学会だより 第51回日本電気泳動学会総会

ポストゲノム時代への橋渡し

著者: 戸田年総

ページ範囲:P.449 - P.449

 11月9日(木),10日(金)の両日,松山市民会館において第51回日本電気泳動学会総会が開催された.Tiselius電気泳動による血清蛋白分画法の開発とともにスタートした日本電気泳動学会も一昨年創立50周年を迎え,20世紀最後となった今総会は,くしくも新たなる50年への第一歩を踏み出すものとなった.ヒトゲノム解読計画がほぼ終焉し,本格的な"ポストゲノム時代"を迎えようとしている中にあって,臨床検査の領域においても電気泳動の位置づけが変わらざるを得ない状況になってきているが,今総会はきたる21世紀の新しい臨床検査の方向性を暗示する重要なものとなった.
 今総会のプログラムは真鍋敬総会長(愛媛大学理学部物質理学科・教授)のアイディアで,これまでない画期的な構成が取り入れられた.例年の総会では特別講演,教育講演,シンポジウムなどを一般演題から切り離し,催しものとして企画されていたが,今回はプログラム全体をテーマごとに分割し,世界の最先端で活躍している第一線の研究者を基調講演者として招き,その中に一般演題から重要と判断された発表を取り混ぜて1つのセッションを組み上げるという国際会議でよく行われるプログラム構成が取り入れられた.

第39回日本臨床細胞学会秋期大会

世紀にかける橋Millennium brige―臨床細胞学の今世紀の到達点を示し,21世紀の展望へつなぐ

著者: 都竹正文

ページ範囲:P.451 - P.451

 第39回日本臨床細胞学会秋期大会は,埼玉医科大学病理学教授高濱素秀会長のもとで,2000年11月17日,18日の2日間,埼玉県大宮市の大宮ソニックシティにおいて開催された.大会のスローガンとして"世紀にかける橋Millennium bridge―臨床細胞学の今世紀の到達点を示し,21世紀の展望へつなぐ"を掲げ,特別講演3題,要望講演2題,教育講演,会長講演,シンポジウム2題,教育シンポジウム1題,ワークショップ9題,一般演題323題,スライドセミナーおよびランチョンセミナーと20世紀最後を飾る盛りだくさんの内容でした.各講演とも形態を中心とした細胞診断学の20世紀の総まとめと21世紀への取り組み方の提言でした。個々の腫瘍の遺伝子発現パターンが把握できるようになった現在,その情報に基づき,個々の患者・腫瘍に最適の治療法が選択できるようになってきました.これは臨床にとって最も重要な情報となり得るものです.また,悪性度判断もある程度可能となり,形態診断は不要になるだろうと唱える人もいます.しかし,形態の中にこそ細胞や組織の本態が最もよく表現されることもあり,形態診断学は将来とも必要と考えている人が大半でしょう.細胞診は迅速性,簡便性,経済性に優れた検査法であり,さらに正確性,安定性,再現性を実現させるには遺伝子発現レベルの情報を参考にした新しい診断基準を確立してそれを細胞診にフィードバックすることが必要です.

第23回日本血栓止血学会学術集会

幅広い分野の参加者が集う学際的学術集会

著者: 小嶋哲人

ページ範囲:P.453 - P.453

 第23回日本血栓止血学会学術集会は,去る2000年11月21日(火)と22日(水)の2日間にわたり,名古屋国際会議場において会長・名古屋大学医学部内科学第一講座齋藤英彦教授のもとに開催された.その内容は,一般発表演題166題(口演108題,ポスター58題)のほか,特別講演2題,日本血栓止血学会学術奨励賞2題の講演がなされた.
 本学会学術集会は,心筋梗塞や脳梗塞などの原因である血栓症と生体防御の一環として重要な止血機構を基礎から臨床まで幅広く研究することを目的とし,内科学,外科学,小児科学,産婦人科学,生化学,生理学,分子生物学の研究者から成る横断的,学際的な学術集会である.わが国では,食生活の欧米化や高齢社会を迎えて虚血性心疾患や脳血管障害などの血栓性疾患の著しい増加がみられており,その病因・病態の解明,診断,治療,予防などを日的とする本学会学術集会の果たす役割は極めて大きい.今回の参加者は600名を越え,そのうち非会員の占める割合が3割を越えたことにもその注目度の高さが伺える.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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