icon fsr

雑誌目次

論文

臨床検査6巻7号

1962年07月発行

雑誌目次

グラフ

pHメーターによるpHの測定

著者: 茂手木皓喜

ページ範囲:P.435 - P.438

臨床検査室でpHを測る場合,精度と簡便さの兼ね合いからいってガラス電極pHメーターを用いる方法がよいようです。今回はその操作法を解説し,また血液のpHなど特に精度が要求されるものにILメーターを紹介しました。座談会とあわせてお読みください

ILメーターによる血液pHの測定

著者: 小池繁夫

ページ範囲:P.439 - P.440

 1.ILメーターはアメリカのInstrumentation LaLoratory社(ILはその頭文字)の製品で,血液pH,炭酸ガス分圧(Pco2),酸素分圧(Po2)を37℃で少量の血液サンプルで測定する装置である。

調布医師会臨床検査センター

ページ範囲:P.441 - P.442

 最近各地区の医師会で臨床検査センターをつくる機運が盛んになった。すでに神戸,浜松,氷見市などでは実現して着々その効果をあげている。そこでここに東京都大田区調布医師会の検査センターを紹介して,ご参考に供することとした。

技術解説

アセチルセルローズ濾紙による血清電気泳動

著者: 春日誠次 ,   青砥玉江

ページ範囲:P.443 - P.447

 電気泳動(Electrophoresis)とは電流によって荷電をもった物質が溶液中で移動する現象で,この用語を用い始めたのは1909年Michailis, L.であるというからもう大分古い話である。その後Tiselius,A.が1937年独特の電気泳動装置を考案発表してから,特に血漿タンパク質分画の定量に広く利用されるようになった。また生化学,生理学の研究領域のみでなく,疾病時の血漿についても観察されるようになり,疾病の診断,経過の観察の一助としても重要視されるようになった。Tiselius装置は液槽中で電気泳動を行なわせるもので,その測定は光学系の測定装置によっている。今日では小型化され,検体も少量化(約1mlは必要)されてはいるものの装置そのものがかなり高価で,あまり一般的でないうらみがある。一方1948年ごろから一定のpHの緩衝液でぬらした濾紙に混合アミノ酸をつけ,それに電流を流すとそのアミノ酸が濾紙上でよく分離されることが観察され,その後無機物とか特殊なタンパク質の分離にもつかわれていたが,1950年に至り血清タンパク質の濾紙電気泳動が行なわれるようになったものである。
 濾紙電気泳動で血清タンパク質の分画分離を行なうのは,Tiseliusの電気泳動装置で行なうのと比べて,血清量がはるかに微量ですむこと,多くの検体を並行していくつも泳動を行なわせることができること,分離した各分画の抽出が簡便に行なわれ得ること,装置が簡便ですむこと等が特徴で,多くの人々の努力でわが国でも研究用に,また臨床検査にかなり広く用いられるようになった。血清については濾紙上で分離したタンパク質各分画は濾紙ごとBPB,アミド黒などの染色液につけてタンパク質にこれらの色素を吸着させ,この吸着した色素量の大小をそのままデンシトメーターにかけ,あるいはその部分を切りとって後水溶液に抽出して比色計にかけて測定することが一般に行なわれる。すなわち,吸着色素量をもってタンパク質量に見合うものとしてこれを測定し,各分画のしめる相関量をパーセントとして算出するものである。したがって液漕内で分離した各分画を屈折率の差の大小によって相関量を出すTiseliusの方法とはその分離法においても,またその測定法においても,異なるものである。

クロールの測定法

著者: 前田貞亮

ページ範囲:P.449 - P.454

はじめに
(クロール測定の意義)
 リン酸イオンが細胞内液の主要陰イオンであるのに対し,クロール(以下C1)イオンは細胞外液(血液,リンパ液,組織間液)の主要陰イオンであり,細胞外液相にほとんど同じ濃度で分布している。細胞内液とはDonnanの膜平衡の関係で異なった濃度で相対している。

毛細血管抵抗試験

著者: 山中学

ページ範囲:P.457 - P.461

 毛細血管抵抗とは,毛細血管の中を流れている顕微鏡下に見ることができる血球成分を血管外に出ないように維持するための毛細血管壁の抵抗力と考えてよいであろう。そして,ある一定の陽圧あるいは陰圧を加えている間の赤血球に対する毛細血管壁の透過性を測定することにより,毛細血管抵抗の状態を知ることができる。
 また毛細血管脆弱性という言葉がよく使われるが,これは毛細血管抵抗が減弱している場合に,毛細血管壁の"もろさ"についての表現である。

検査室紹介

調布医師会臨床検査センター

著者: 原仁

ページ範囲:P.463 - P.467

 近年公的病院では福祉年金による病院近代化にともない,中央検査室制度が通常化し,臨床検査は著しく増加しつつある。これに反し診療所においては必要性を認めながらも,設備・人手・時間の不足ゆえに検査が少ないことは想像できよう。
 われわれ調布医師会が35年5月に行なった調査によれば両者の検査実施率の比は10:1で,著しい格差が生じていることを認めざるを得なかった。

座談会

緩衝液とpH

著者: 吉村寿人 ,   筒井清二 ,   高橋昭三 ,   鳥海純 ,   日野志郎 ,   樫田良精 ,   小池繁夫 ,   松村義寛

ページ範囲:P.468 - P.481

 松村 お忙しいところをお集まりいただきありがとうございます。検査室で非常にしばしば使われているいろいろな緩衝液についてお話し願い,それに付随してpHあるいはpHメーターについても伺おうということになりました。その道の権威であられる京都府立医大の吉村先生,東亜電波の筒井さんにお出で願いまして,それをおききしようという企てでございます。最初に吉村先生から,緩衝液について概論的なお話を一つお願いします。

用語解説

pH

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.472 - P.475

 ピーエイチと読みます。近ごろでは英語読みが一般的だと思いますが医学方面ではドイツ語読みでペーハーと読むのが従来の例でした。pを小文字でHを頭文字で書くのがアメリカ流で日本でもこれに統一されましたが,ヨーロッパではPh,PH,PHと書いたりしているようです。
 水素イオン濃度の表現法です。主として水溶液について用いられていますが,検査室関係では水溶液だけと考えても差しつかえないようです。
 濃度の表わし方にはパーセント,モル濃度,当量濃度などがありますが,理論的取り扱いには後二者が適しています。

統計

「同一試料による臨床化学検査データの発表会」第1次報告

ページ範囲:P.485 - P.489

 本誌では本年2月号誌上に広告して上記の会を主催しましたが,このほどそのデータの集計がまとまりましたので発表いたします。
 会に参加された検査室は全国180件に及び,各検査室にはそれぞれ同一試料(下記)1体を5月21日に送付しました。検査は5月下旬になされ,そのうち141検査室がデータ報告書を提出,回収率は78%強でした。データのうち今号では各項目のバラツキを棒グラフで示し分析値の一覧を表として示します。

研究

結核菌寒天培地の使用について

著者: 高橋昭三 ,   一言広

ページ範囲:P.491 - P.495

 結核菌の分離培養に用いられる培地として最も安定した成績を示すものが,凝固卵培地,特に3%小川培地であることは論をまたない。そうはいいながら,卵培地の性能はこの辺が限界である。それで,更にすぐれた培地を得るためには,現在,小川培地と同程度の域に達している寒天培地を更に改良するのが一つの方法であるが,現在の培地をどのように使えば最もよい成績を示すか,また,そのときの性能がどの程度かを検討しなければならない。
 現在までに発表された多くの寒天培地は,その原著者が,小川培地と同程度またはそれよりもすぐれた性能を持っていると言っているか,特定の菌種,たとえばIN—AH耐性菌のためにすぐれた培地であるといっているかのいずれか,または両方である。それが,追試されると多くの場合それほどの成績は得られないことが多いようである。その原因として,培地を作る際に,原著者の指示が充分に守られない可能性がある。再現性の高い培地を得る方法も困難なので,いろいろの方法が考案されているが,その一つの方法は,培地の単一粉末化である。

尿中ウロビリノーゲン定量検査成績の比較

著者: 陳敏馨

ページ範囲:P.497 - P.499

I.緒言
 尿中ウロビリノーゲン(Ug)検査はEhrlichアルデヒド反応が最も普通に行なわれている。しかしUg排出量は日中の変動,季節的変動1)2)がある上に種々の薬物により陽性となること,あるいは影響を受けることが報告されている3)4)5)。従って一回尿のみのアルデヒド反応ではその成績もすこぶる曖昧で,臨床的意義を求め難く,Ugが確実に増量しているかどうかを知るためにはUg定量を実施せねばならない。
 私はこれらのUgの定量法のうち比較的操作の容易なWatson法(簡易法)および佐藤法を同一尿について比較したのでその成績を報告する。

私の工夫

結核菌培養における喀痰の混和および接種法の新案について

著者: 松下亀能

ページ範囲:P.495 - P.495

 喀痰の結核菌培養(小川培地使用)を行なう場合,所定量の4〜8%水酸化ナトリウムを加え,充分混和均等化したる後接種することが大切である。この際,普通検査室ではコマゴメピペットを使用しているのが慣例であるが,粘稠の喀痰,特に痰コップ,シャーレ等の口の広い容器にいれてある場合,時間をかける割には混和均等化することが比較的少ない。
 私は新しい試みとして次のようなことを行なっている。まず5mlの注射器(臨床で使用不能になったもののうち吸引可能のものを使用)を用意し,その外筒とピストンを縫合糸(手術場よりの廃品利用)で結んでおく次いで喀痰培養を行なうとき,水酸化ナトリウムを加え前記注射器で攪拌と吸引を数回繰り返して後培養に移している。このようにすればかなり粘稠なものでも直ちに均等化されるので,コマゴメピペット使用の場合よりもはるかに有効である。更に初心者が培養を行なう場合には,あらかじめ喀痰量をこの注射器で測り,水酸化ナトリウムを加える量を知ることができるため,非常に好都合であると思う。培地へ接種する場合にも,そのまま使用せる注射器で吸引し接種すれば,コマゴメピペットで行なう揚合よりも操作が大変容易である。また定量的に培養する必要があるときは同注射器で2滴落とせば約0.1ml接種することができる(この場合は念のためコマゴメピペットを使用してもよろしい)。なお岡・片倉培地等を使用するとぎも同じ方法で行なうことができる。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?