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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査60巻5号

2016年05月発行

雑誌目次

今月の特集1 体腔液の臨床検査

著者: 佐藤尚武

ページ範囲:P.469 - P.469

 病院で実施される臨床検査の検体は主に血液と尿であり,次いで糞便が多いと思われます.体腔液の検査も実施されることがありますが,日常的に検査に携わっている人間にとっても,なじみのある検体ではありません.

 本特集では,この体腔液を検体とする検査にスポットを当ててみました.なお,体腔液とは,厳密には左右の胸腔,腹腔,心膜腔に存在する液体ですが,脳脊髄液や気管支肺胞洗浄液も取り上げました.体腔液を検査するうえでの基本的な事項や注意点が丁寧に解説されています.また,普段はあまり接する機会のない体腔液について,より適切に検査を実施するためのポイントが散りばめられています.

 読者の皆さまには,本特集をご活用いただき,より信頼性が高く,有用な検査情報を提供していただきたいと願う次第です.

脳脊髄液

著者: 大田喜孝

ページ範囲:P.470 - P.476

Point

●髄液の解剖生理や機能などの基礎的事項を学ぶことで,なぜ髄液検査所見が中枢神経系のさまざまな病態を反映するのかを理解できる.

●髄液は極めてデリケートな検査材料である.髄液一般検査の精度を維持するためには,検査を行う前に入手すべき情報や,検査を進めるうえで順守すべき手法について熟知しておく必要がある.

●臨床医はどのようなときに髄液を採取し,どのような情報を検査室に求めるのかを把握するとともに,臨床検査技師としてその要求に的確に応えるためにはどのような到達目標を設定すべきかについて考えていく必要がある.

●髄液検査は血液検査や尿検査のように頻回に実施される検査ではないだけに,陥りやすいピットフォールについて十分に理解を深めるとともに,集合教育や個人教育を実施しスキルを維持していく必要がある.

胸水・腹水・心囊液

著者: 石山雅大

ページ範囲:P.478 - P.489

Point

●肉眼的所見での色調,混濁の判断が検査のスタートとして重要である.

●漿液性の体腔液を濾出液と滲出液に分類する意義を理解する.

●細胞数の算定は炎症性の判断のため白血球とする.

●体腔液の染色方法の特性と鏡検像を理解する.

関節液

著者: 横山貴

ページ範囲:P.490 - P.496

Point

●関節液の貯留量を確認し,検査項目に応じて前処理を行う.

●関節液の色調や混濁,粘稠度などの一般的性状を十分に確認する.

●関節液の細胞数や細胞分類によって,非炎症性,炎症性,化膿性,出血性の鑑別ができる.

●関節液の結晶を鋭敏色偏光顕微鏡装置で観察することで関節炎の原因を特定できる.

気管支肺胞洗浄液

著者: 鈴木淳 ,   近藤康博

ページ範囲:P.498 - P.502

Point

●気管支肺胞洗浄検査(BAL)は比較的小さい侵襲で肺局所に関する情報収集を行うことが可能である.

●気管支肺胞洗浄液(BALF)では,細胞成分,液性成分,病原微生物などの検査を行う.

●検体処理や検査過程で結果に影響することがあるので,注意が必要である.

体腔液の細胞診・病理検査

著者: 濱川真治 ,   清水誠一郎

ページ範囲:P.504 - P.511

Point

●体腔液にはさまざまな細胞が出現するため,浮遊細胞の多彩な形態変化を理解しておかなくてはならない.

●体腔液に出現する悪性細胞の多くは,本来,体腔には存在しない“外来性細胞”であり,背景に出現する良性の細胞との形態相違が良悪の判定に役立つことが多い.

●体腔液細胞診が最終診断になることもある.初回検体の取り扱いと標本作製技術が細胞診断を左右する.

●セルブロックによる免疫組織化学染色や遺伝子検索などの補助的検査法を加えることによって,体腔液細胞診材料は分子標的治療の適応判定にも貢献する.

自動血球計数機を用いた体腔液検査

著者: 田部陽子

ページ範囲:P.512 - P.516

Point

●国際血液学標準化委員会(ICSH)は,2014年に「体腔液細胞数自動算定ガイドライン」を作成した.

●自動血液分析装置を用いた体腔液細胞数自動算定では,測定値の精度を検証・保証するうえで導入前性能試験が重要である.

●自動分析装置の使用状況に関するアンケート調査では,わが国の自動化導入率は米国に次いで高かったが,性能試験の実施体制が十分ではないことが示唆された.

●今後,検体の取り扱い,再検基準,精度管理体制を整備していく必要がある.

今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

著者: 山内一由

ページ範囲:P.517 - P.517

 知識は実践に活かされてこそ意味があります.私たちが専門とする臨床検査ではなおさらです.言うまでもなく,臨床検査は実学だからです.しかし,実際には,誰にでも埋もれさせてしまっている知識が1つや2つはあります.教科書的には知っているけど活用しきれていない知識です.難しい知識に限ったことではありません.むしろ,基本的な知識のほうが陥りやすいのかもしれません.当たり前だと高をくくってしまいがちになるからです.

 臨床検査学にもそんな知識がいくつかあります.“感度”もその1つです.“感度”は検査法の臨床的有用性を決定付ける重要な特性ですが,検査を利用する側の医師はもちろん,検査を実施している技師も十分に把握していないのではないか,と疑問に感じることが多々あります.感度をしっかりと理解したうえで検査データを利用しなければその価値は半減してしまいますし,場合によっては重大な医療事故を招きかねません.また,感度の改良を図るためのヒントを検査の現場から見いだし,改良策を提案・実践できる能力を涵養することは,検査室の付加価値を高める意味からも極めて重要です.本特集では,各検査領域のエキスパートたちに“感度”についてとことん掘り下げていただきました.埋もれかけていた知識に磨きをかけ直す絶好の機会になるに違いありません.

—臨床化学検査編—分光光度分析法の可能性と限界

著者: 松下誠 ,   亀沢幸雄

ページ範囲:P.518 - P.525

Point

●臨床化学検査における分光光度分析法は,血清中の目的成分濃度が10−6mol/L(μmol/L)以上の成分が対象となる.

●吸光度は,目的成分濃度,モル吸光係数,および血清量/最終液量比の積に比例する.

●検量線は相対誤差の小さい吸光度範囲を使用することが好ましい.

●2ポイント法や二波長法は吸光度の相対誤差を小さくすることが可能となる.

—免疫学検査編—イムノアッセイの可能性と限界

著者: 出口松夫 ,   鍵田正智 ,   吉岡範

ページ範囲:P.526 - P.534

Point

●抗原は1種類の抗体と,抗体は1種類の抗原と反応するわけではない.

●感染症抗原検査の真の基準値は,“0”のみであることから,感度の追求に終わりはない.また,偽陽性や偽陰性がなくなることもない.

●イムノアッセイの感度を決める最も大きな要因は,検出対象と捕捉抗体の反応条件(第一次反応)である.

●感染症抗原検査では,検出対象が複数種類(ジェノタイプや変異株など)にも及ぶため,捕捉物の選定が極めて複雑である.

—血球検査編—血球計数の可能性と限界

著者: 池田千秋

ページ範囲:P.535 - P.539

Point

●現在の自動血球計数装置による血球計数(CBC)の精度は,臨床的許容限界や生理的変動幅から求めた許容誤差限界について満足のいくレベルとなっている.

●自動血球計数装置によるCBCにはさまざまな誤差要因が存在し,適切な対処が求められる.特に血小板数測定は遭遇頻度が高い.

●白血球分画では,異常細胞を見逃さず業務の効率化を図るために,適切な目視再検基準の設定が重要である.

●目視による白血球分類では,疾患によって観察の方法も変わってくるため,細胞形態だけでなく病型についても理解を深める必要がある.

—細菌検査編—細菌同定法の可能性と限界

著者: 松本竹久

ページ範囲:P.540 - P.545

Point

●細菌同定法には主に,顕微鏡検査による同定や生化学的性状検査による同定法,質量分析計による同定法,遺伝子検査による同定法がある.

●質量分析計による同定法は迅速で,かつ遺伝子検査による同定法と同等の同定精度を有するとして注目されている.

●同定検査を行ううえで,各同定検査法における感度や長所短所を理解することが必要である.

—病理検査編—組織化学検査法の可能性と限界

著者: 廣井禎之 ,   佐々木あゆみ

ページ範囲:P.546 - P.553

Point

●組織化学とは,化学物質の局在を明らかにすることによって,構造と機能を関連させる学問,または化学物質の局在を証明する組織・細胞学的技術と定義される.

●組織化学の反応は基本的に“沈殿”である点が分析化学と決定的に異なる.

●in situ hybridizationと免疫組織化学で検出に使用される標識物質は酵素と蛍光である.酵素は反応産物の蓄積が起こるため感度がよい.蛍光は標識した蛍光の分しか光らないが,蛍光色素を標識した抗体を重ねることによって感度を上げることができる.

●組織化学検査法の特性と限界を知り,再現性のよい技術を確立することが大切である.

心臓物語・2

心臓に2種類の心筋細胞がある

著者: 島田達生

ページ範囲:P.468 - P.468

 図[1]は,ヘマトキシリン・エオジン染色したヒト心臓心室の心内膜側の光学顕微鏡写真である.心内膜側に,作業心筋とは様相を異にした細胞群がある.これらは一般にPurkinje線維と呼ばれ,心室筋細胞よりもやや大型で,エオジンで赤く染まる筋原線維に乏しい細胞である.1845年,J. E. Purkinje(チェコ)は 最初に肉眼で羊心臓の心室内壁に灰白色の網状構造をみつけ,続いて,顕微鏡観察で心筋線維と同様の横紋をもつ特殊心筋線維を発見した.ちなみに,小脳の神経細胞を“Purkinje細胞”といっている.その後の研究ではPurkinje線維の機能的意義は不明とされ,心内膜側の動き,心筋細胞の幼弱形,または病的状態などとさまざまな諸説が唱えられていた.

 1906年に田原淳は,ヒトを含む哺乳動物心臓の肉眼観察と連続切片の光学顕微鏡観察を行い,長年の謎であったPurkinje線維が刺激伝導系(房室連結筋束)の終末展開枝であることを突き止めた.田原は,刺激伝導系特殊心筋の特徴の1つに結合組織(膠原線維)が豊富であることから,ヘマトキシリン・ワンギーソン染色を行った(図[2]).膠原線維を酸性フクシンで赤く,筋原線維をピクリン酸で黄色に染めると,羊Purkinje線維の筋束は心室筋(作業心筋)と結合組織によって隔てられていることが一目瞭然である.

INFORMATION

UBOM(簡易客観的精神指標検査)技術講習会・2016

ページ範囲:P.489 - P.489

日本臨床検査同学院の講習会・勉強会

ページ範囲:P.502 - P.502

検査レポート作成指南・9

筋電図検査編

著者: 山内孝治

ページ範囲:P.554 - P.571

 誘発筋電図検査の1つである神経伝導検査(nerve conduction studies:NCS)は,原則として末梢神経を電気刺激することによって,筋あるいは神経線維から誘発される活動電位を評価する電気生理学的検査である.

 活動電位の評価は,導出された電位波形の潜時(latency),振幅(amplitude),持続時間(duration)を基本とした計測値とその形状が中心となる.ただし,病的要因以外にもいくつかの要因(皮膚温,導出電極の位置,導出電極間距離,刺激強度,刺激の波及,接触抵抗,フィルタ設定など)によっても電位波形はさまざまに変化する.そのなかには検査担当者(検者)のみが知り得る情報もあることから,本来,診療に携わった医師が自ら検査することが最もよいことになる.しかし,全ての医師が神経伝導検査に関する知識や技術面において精通しているわけではなく,さらに日々の業務を考慮すると時間的にも難しいのが現実である.そのため検者には,高度な検査技術とその評価に必要な解剖学,電気生理学,臨床工学,病理学的な知識に基づいて,電気生理学的な妥当性あるいは矛盾を速やかに判断する能力が要求される.そして,障害の検出,分布状態の評価,病態の鑑別,予後の推定に必要な客観的情報,臨床症状からは推測不能であった所見,検者のみが知り得た情報などが記載された診療に活用できる信頼性の高い報告書(レポート)を作成することが必要となる.

 以上から,神経伝導検査におけるレポートは,検者が依頼医師の検査目的に応じて,電気生理学的理論と高度な検査技術に裏付けされた検査結果から導き出される,正確かつ診療に有用な情報を伝えることを目的として作成することがポイントとなる.

元外科医のつぶやき・17

病理結果を知る

著者: 中川国利

ページ範囲:P.572 - P.572

 前立腺癌切除術後41日目の外来では病理結果が未報告であり,術後4カ月の再診日をじっと待っていた.しかしながら,ことが自分の生命予後を左右するため不安に駆られて,焦る気持ちを抑えがたかった.現代は電子カルテが導入されており,病院の職員であれば容易に閲覧することができる.そこで,犯罪行為にはなるが,友人を介して病理結果を知りたいとさえ思っていた.しかし,思わぬ所から知ることになった.

 子どもらが小さい頃は,多額の掛け捨て保険に加入していた(実際の所は,妻に強制的に加入させられていた).しかし,子どもらが独立した現在は,職場の団体生命保険にのみ加入していた.今回,少額ながらも入院・手術給付金を受け取れることを知り,病院に医療証明書の作成を依頼した.手術から2カ月後に,病院から証明書ができたとの連絡を受けた.受け取った証明書には,病名欄に前立腺癌,そして病理診断欄にはpT2c, pN0, cM0, stageⅡと明確に記載されていた.すなわち,病理学的には,前立腺癌は前立腺にのみ限局し,被膜浸潤やリンパ節転移は認めなかったのである.想定していた病期のうちでは最も望ましい段階に,心から喝采した.

検査説明Q&A・16

甲状腺関連項目の測定における自己抗体の影響を教えてください

著者: 村上正巳

ページ範囲:P.573 - P.575

■血中甲状腺ホルモン濃度の調節機構

 甲状腺ホルモンは甲状腺組織中のサイログロブリン(thyroglobulin:Tg)の分子のなかで合成される.その合成と分泌は,下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(thyroid-stimulating hormone:TSH)によって調節されており,視床下部-下垂体-甲状腺系にはネガティブフィードバック機構が存在する(図1).すなわち,一般にTSHの上昇は原発性甲状腺機能低下症を,TSHの低下は甲状腺中毒症を示す.

 甲状腺から分泌される主な甲状腺ホルモンはサイロキシン(thyroxine:T4)であり,甲状腺機能低下症の治療に用いられるのは主にT4製剤であるが,生理活性は3,5,3′-トリヨードサイロニン(triiodothyronine:T3)が強い.甲状腺ホルモン脱ヨード酵素の働きによってT4は脱ヨードを受けてT3に変換され,生理作用を発揮する.

寄生虫屋が語るよもやま話・5

執念の寄生虫捜索—肝蛭症

著者: 太田伸生

ページ範囲:P.576 - P.577

 私が大学を卒業した1977年の時点でも,一般の病院外来で寄生虫疾患は多くはなかった.私の専門である日本住血吸虫の国内感染が最後に報告されたのが1977年で,自分の医学生時代はまだ流行が残っていたが,それでも何となしに“昔の病気”という思いはあった.今の日本国内で,寄生虫病がどれくらいあるのか誰も知らない.日本臨床寄生虫学会という同好の集まりがあり,年次大会では40例程の症例報告がなされているが,当然ながらその数十倍は発生が実際には起こっているのだろう.寄生虫疾患の大半は感染症法で捕捉されず,定点観測の対象疾患でもないので,実態は闇である.

 私が岡山大学に勤務していた頃のことである.たまたま肝蛭症の例に接する機会があった.肝蛭という寄生虫は巨大な吸虫で,体長が3cmに及ぶ.分類が似ている巨大肝蛭になると6cmの大きさである.それが肝臓実質を食い散らかして肝臓をボロボロにしてしまう,意外と凶暴な虫である.吸虫であるから,中間宿主は淡水産の巻き貝で,ヒメモノアラガイという小さな巻貝が肝蛭の中間宿主である.肝蛭は本来,ウシの寄生虫であり,貝から泳ぎだしたセルカリアが水辺の草の茎に付着してメタセルカリアとなり,それをウシが草と一緒に食べて感染する.したがって,肝蛭症は畜産地域にみられる寄生虫で,さらに中間宿主貝からセルカリアが泳ぎだすのは低温刺激であるので,冷涼な山間地域で発生することが多い.但馬牛,飛騨牛,米沢牛などからわかるように,畜産業は山間部で盛んである.この寄生虫は肝臓を食い破るので,超音波検査をやると肝細胞癌の所見に似るのである.しかし,肝蛭症ならば手術は適応にならないし,駆虫剤の服用で回復する.癌を宣告される患者にも気の毒であり,要は鑑別診断に肝蛭を考えるかどうかということになる.岡山大学は伝統的に寄生虫学の教育に熱心な医大であったので,肝機能異常がある方の肝蛭症の診断がついたことは幸いであった.

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書評 組織病理カラーアトラス 第2版

著者: 伊東恭子

ページ範囲:P.477 - P.477

病理学教育への情熱が結集された優れたカラーアトラス

 病理学とは,①病気の原因を探り,②生体内に生じる病態の実情を究明し,③そのことを通じて病気の診断,さらに治療・予防に寄与することを目的とする学問分野である(p.2).病理学の壮大なミッションが三か条にして冒頭に提示されている.

 さて,Rudolf Virchowによって提唱された細胞病理学Cellular Pathologieの概念は,近代医学の中で病理学の地歩を築き上げる上で著しい貢献をしたことは言を俟たないが,今や遺伝医学・分子生物学の長足の進歩を反映して,分子の言葉で病気が語られる新しい時代を迎えている.しかしながら,今日にあっても病理学の基本は,光学顕微鏡レベルでの形態学に基づいた病変の理解や診断にある.

「検査と技術」5月号のお知らせ

ページ範囲:P.497 - P.497

バックナンバー一覧

ページ範囲:P.525 - P.525

次号予告

ページ範囲:P.579 - P.579

あとがき

著者: 山田俊幸

ページ範囲:P.580 - P.580

 本稿の執筆を依頼されたのは,私の勤務先の大学の入学試験の面接日でした.事前に準備しているとはいえ,受験生の皆さんは立派なもので,いつものことですが,評価をつけるのに苦吟しました.残念だった諸君には,今頃,どこか別のところで学生生活をスタートしていることを願います.本学に入学した諸君には,面接で述べた初志を貫いていただきたいものです.

 ところで,私などは若いころは,(今でもそうですが)人前でうまく話せず,そういう世代でもあったと思うのですが,今の若者の多くは受け答えがなめらかな印象を受けます.スポーツ選手のインタビューなどでもそうお感じの方は多いのではないでしょうか.E-mailやSNSなどの顔の見えないコミュニケーションツールが普及するなかで,不思議ですが,褒めるべきことです.一方,医療系の大学に入ってくる新人の学力(おそらく基礎科学の理解力のことでしょう)の低下を懸念する声を聞きますし,現場でも実感することがあります.私は教育の専門家ではないので,その実態や理由についてはわかりませんが,学校での成績や就職直後の印象よりは,社会に出ての5〜10年が,その人にとって大きな評価の時期であると考えています.若い方々は目の前の仕事で精いっぱいで,本誌をじっくりと読む余裕はないかもしれませんが,先輩の方々は,彼らの“のびしろ”の時期を大切に過ごさせてあげてください.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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