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雑誌目次

論文

臨床検査46巻3号

2002年03月発行

雑誌目次

今月の主題 HBV・HCV検査法の新しい動向―標準化に向けて 巻頭言

HBV・HCV検査法の新しい動向―標準化に向けて

著者: 伊藤喜久

ページ範囲:P.231 - P.232

 検査領域における標準化とは,すべての施設において,同一検体の測定結果が測定システム間を超えて一致あるいは近似し,相互間の互換性が得られることである.標準化活動は,total quality assurance systemの論理に従い測定値の正確性,精度の向上を目ざす国の枠を超えた共同作業であり,その中心課題は,いうまでもなく測定の標準化にある.さらに検査前検査,検査後検査の充実も相まって,あらゆる領域で検査値の臨床的価値が確実に高められてきた.
 最も成功を収めているのは酵素測定法で,nativeな成分と機能,構造的に近似した遺伝子産物を標準物質とし,解析分析能に優れた測定法に一定の水準,hierarchyを定めることにより,標準物質の表示値を正確にサンプルに伝達するレファランスシステムを確立し,わが国における標準化の実現の扉を開いた.

総説

HBV検査の進歩と今後

著者: 溝上雅史 ,   飯田隆康

ページ範囲:P.233 - P.242

 B型肝炎ウイルス(HBV)の遺伝子構造とその臨床経過について述べ,臨床経過における各種HBVマーカーの推移とその臨床的意義,それらの測定法について述べた.さらに,最近の測定法の進歩について説明した.また,最近のHBVの研究の進歩を概説し,それに伴う今後の新しい測定系,特にHBVのおけるgenotype測定やHBe抗原産生にかかわるcore promoter変異測定の臨床的必要性につき説明した.

HCV関連マーカー測定法の進歩

著者: 田中榮司

ページ範囲:P.243 - P.250

 1989年にHCVが発見されてから,HCV関連マーカーの検査は長足の進歩を遂げた.HCV抗体は主にHCV感染のスクリーニングに用いられる.第一世代での検出率は不十分であったが,第二世代,第三世代では特異性,感度ともに満足できるものとなった.HCV遺伝子型とウイルス量は主にインターフェロン治療効果の予測に用いられる.それぞれ,優れた検査方法が開発されており,特徴を理解した使い分けが必要である.これらHCV関連マーカーの開発によりC型肝炎の臨床は大きく進歩した.

技術解説―測定法の限界と検査の進め方

HBV検査―半定量法と定量法の扱い方

著者: 米田孝司 ,   片山善章

ページ範囲:P.251 - P.257

 半定量法が汎用されているのはRPHA法であり,目視法であるため,凝集像の読み方や術式も個人差が生じやすく,非特異反応を認める問題点がある.問題点を回避するためには,操作法や判定像を統一させたり,吸収試験により非特異物質を除去し凝集抑制試験を実施する.定量法で汎用されているのは高感度EIA法であり,卓上型から大型全自動装置まで種々あるが,標準化されていないので単位なども異なる.それら機器および試薬の特性を理解し施設に合った運用をすることが重要である.さらに,HBV関連の疾患別診断マーカーの使い方を十分理解して検査マニュアルを作成する.その結果,不明な異常データが生じたときは臨床医と相談して解析する必要がある.今回,これらを進めるために必要な内容を概説する.

HCV抗体検査のカットオフ値―各試薬間の乖離の背景

著者: 西川洋子 ,   片山善章

ページ範囲:P.259 - P.264

 HCV抗体は,EIA・CLEIAが開発され自動分析機を用いての迅速簡便な測定法が普及しつつある.古来の肉眼判定による半定量に比較して,カットオフ値を判定基準として測定値はCOIで表される.同一方法内では測定範囲は広く再現性が良く客観的データが得られるようになったが,方法間ではカットオフ設定法やCOI,使用したリコンビナント抗原の違いなどがある.これらはカットオフ近辺の微量抗体検出時や非特異反応として,試薬間の判定差となる.多様性を示すHCV抗体価測定に際し,各試薬の特徴と限界を知ることが標準化の一歩となる.

イムノクロマトグラフィー法の特徴と問題点

著者: 北橋繁 ,   巽典之

ページ範囲:P.265 - P.272

 臨床検査の分野では,種々の検査法を用いてより精度よく臨床に即した検査結果を迅速に報告することが求められている.近年,感染症検査をはじめとするイムノクロマトグラフィー(IC)法は,試料が毛細管現象中に生じる抗原抗体反応を利用した測定法であり,簡便で短時間に測定可能である.そのIC法は,特殊な機器を使用することなく目視による定性判定のため誰でも測定が可能な点から日常および緊急検査に導入されている.

PCR法の現状と利用法―HCV-RNA定量測定/定性測定とHBV-DNA定量測定

著者: 松山和弘 ,   三浦俊昭 ,   林邦彦

ページ範囲:P.273 - P.280

 HCV-RNA定量測定/定性測定は,臨床の場で「C型肝炎の診断」,「治療方針の選択」,「IFN治療における経過観察・効果判定」などの目的で測定される.一方,HBV-DNA定量測定は,複雑な臨床経過を示すB型慢性肝炎患者の「病態把握・経過観察」や「抗ウイルス治療のモニタリングなどの目的で測定される.これらの検査が持つ臨床的有用性について解説を加え,併せて,PCR法が抱える問題点とその対策について触れる.

話題

HBV抗原・抗体の保有状況

著者: 青木芳和

ページ範囲:P.281 - P.284

1.はじめに
 B型肝炎ウイルス(HBV)保有者には肝疾患で通院または入院治療を受けている患者集団と,自覚症状のないまま健常者として社会生活を送っている無症候性HBV保有者(HBVキャリア)集団とがある.前者については慢性肝疾患患者登録制度の整備されていないわが国ではその実態を把握することは非常に困難である.一方,日本人のHBVキャリア率はおよそ1%強,150万人程度といわれている1).しかし,全国11か所の血液センターにおける初回供血者約15万人の資料の解析では,日本における20~64歳の健常者集団に潜在するHBVキャリア数は約75万人と推定されている2).これは65歳以上のHBVキャリアを除外していることと,肝炎を発症し,通院または入院中のB型慢性肝炎患者も除外してあるためと考えられる.
 HBVキャリアの原因となる感染は2~3歳までの感染で,それ以後に感染してキャリアになるのは稀であるとされている1).また,現在30歳以上の世代では母子感染のほかに不潔な医療行為などによる水平感染もみられキャリア率は1~3%といわれている1)

HCV抗原検査

著者: 藤原稔也 ,   木次克彦 ,   杉田悟 ,   矢萩則夫

ページ範囲:P.285 - P.290

1.HCVコア抗原(コア蛋白)
 C型肝炎ウイルス(HCV)は,構造蛋白であるコア,E1,E2,非構造蛋白であるNS2,3,4,5蛋白を5'側から順にコードする一本鎖Positive RNAをゲノムとするRNAウイルスである.ウイルスの外殻はE1およびE2の2種の糖蛋白によって構成されるエンベロープに被覆され,その内側に1組のゲノムを包む形でヌクレオカプシドが存在する.
 NS2以下は,酵素などウイルスの増殖に必要な蛋白をコードするが,HCV粒子中には存在しないことからHCV抗原検査のターゲット蛋白としてはエンベロープかコアのいずれかが想定される.しかしながらエンベロープ蛋白は超可変領域(HVR)に代表されるように免疫システムからのエスケープ機構にかかわることが知られており,アミノ酸配列の変異が著しいという特徴をもつ.さらにEl/E2の複合体を形成していること,エンベロープ領域の有効抗原が主として糖鎖抗原であることなどから,ターゲット蛋白としては取り扱いが困難であると予想される.一方,コア蛋白はアミノ酸配列の変異が少なくgenotype間においてもよく保存され,抗原性も高いことが知られている.したがって,現在開発されているHCVの蛋白検出系にはコア蛋白をターゲットとしたシステムが用いられている.

インターフェロン効果の感受性―患者側肝臓状態のDNAチップによる解析

著者: 伊藤哲 ,   窪田規一

ページ範囲:P.291 - P.297

1.はじめに
 C型肝炎ウイルス感染は慢性化を引き起こしやすく,肝硬変からさらには肝臓癌へと進展する重篤な疾患を生じるとして知られており,さらに悪いことにはわが国の感染者の数は200万人以上という数字が報告されている.患者自体にとっても医療機関・医療制度にとってもその対策上重大な問題である.インターフェロン(IFN)がこれまで知られている唯一の治療薬であったが,かなりの努力にもかかわらず,治療効果が認められた症例数はまだ満足の行くレベルではない.
 これまでの研究結果から血清中のウイルス量とともにウイルス遺伝子側の情報(ウイルスゲノタイプ)でIFN効果予測が議論されてきたが,治療効果が期待できる症例として分類されるにもかかわらず期待している成績が得られない症例が多い1).そこで,患者が有している種々のホスト側の情報をもっと積極的に解析・応用することで,治療効果を高めたいとの視点から種々の臨床応用を目ざした研究が進められてきた2~7).さらにはホスト側究極の遺伝情報であるSNP(single nucleotide polymorphism)でIFN治療効果を議論できるとするデータも発表される8,9)に至っているが,まだまだ隠れている情報が存在すると期待されるところである.

日本医師会の精度管理調査の現状―HBs抗原とHCV抗体

著者: 高木康 ,   河合忠

ページ範囲:P.299 - P.302

1.はじめに
 日本医師会での精度管理調査は,2001年で35回を数える.初回に70施設で始まった本調査も2000年には2,713施設とわが国では最大規模の精度管理調査となった.
 HBs抗原とHCV抗体については前者は第11回(1978年)~第26回(1992年)と第34回(2000年)の16回,HCV抗体は第28回(1994年)~第31回(1997年)と第34回の5回調査されている.本稿では,第34回の調査結果1)を中心に,過去の調査結果との比較も含めて解説したい.

今月の表紙 電気泳動異常パターンの解析シリーズ・3

異常アミラーゼアイソザイムの解析・その1

著者: 堀井康司

ページ範囲:P.228 - P.229

 P型アミラーゼ(膵由来アミラーゼ)の測定法として阻害抗体法が用いられるようになって,すっかり影が薄くなった電気泳動によるアミラーゼアイソザイム測定であるが,異常なアミラーゼは電気泳動法によって初めて検出でき,そのなかには臨床的に重要なものも含まれている.
 今回表紙には電気泳動によるアミラーゼアイソザイム分析日常検査のなかで認められる異常アミラーゼについて,かなり珍しいものも含め,ほぼすべての像を示した.異常アミラーゼには,①遺伝的に易動度異常を示すアミラーゼ,②糖鎖異常を示す腫瘍産生アミラーゼ,③マクロアミラーゼに大別される.またマクロアミラーゼはIgA結合型とIgG結合型があり異常像がかなり異なっている.

コーヒーブレイク

秋の逍遙

著者: 屋形稔

ページ範囲:P.242 - P.242

 昨年は5月に京都の街を俳徊したが,4か月後の10月また用事を作って上洛した.ちょうど京都市美術館でレオナルド・ダ・ビンチの「白貂を抱く貴婦人」の日本初公開があり,この観賞の機会ももった.
 ダ・ビンチには女性画が3つあり,有名なモナ・リザはかつてルーブル美術館でお目にかかった.その永遠の謎を秘めた微笑は彼の円熟期に画かれ,ルネサンスでも最高傑作と讃えられている.この「白貂を抱く貴婦人」はそれより前の中期の作であるが,ポーランドの古都クラクフにあるチャルトリスキ美術館に所蔵されておりお目にかかりにくかった.

精度管理認定機構と日常診療

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.303 - P.303

 近年臨床検査の分野における進歩は大きく,患者さんに痛みを与えないでできる無侵襲検査(近赤外分光器を用いる血糖,中性脂肪,ヘモグロビン濃度など)の開発普及とSNP (single mu-cleotide polymorphism)やDNAチップなどの遺伝子関連の検査などが広く応用されつつある.
 また臨床検査の精度も測定法,測定機器の開発標準物質の供給などにより,個々の検査施設内での検査精度は著しく向上し,内部精度管理(inter-nal quality control)も十分行われている.しかし各検査機関で行われた検査結果に必ずしも互換性が常にあるとは限らず,精度管理(quality con-trol;QC)の重要性は臨床検査の分野では永遠に欠かせない問題であり,臨床検査の国際標準化の動きも進められている.

シリーズ最新医学講座―免疫機能検査・15

ウイルス感染における免疫応答と検査―EBウイルス感染症を中心に

著者: 岡野素彦

ページ範囲:P.305 - P.312

はじめに
 ウイルス感染症は,一般に宿主への感染,増殖,それに対する免疫応答などに基づき特有の疾患発症形態を呈する.また,その感染時期に応じて,初感染と既感染に分けられる.既感染で問題となるのは,再活性化と遅発型感染に伴う顕性感染症の発症である.初感染では相応する疾患の発症がほぼ全例でみられる場合と,必ずしも感染即発症とはならない例がある.前者には,既存の多くのウイルスが挙げられる.後者には水痘帯状疱疹ウイルスは例外ではあるが(初感染のほとんどが水痘となる)ヒトヘルペスウイルス属が代表的である.また,ヒト免疫不全ウイルス(human immu-nodeficiency virus:HIV)は,主にヒト免疫担当細胞に感染することにより免疫不全を引き起こし,その結果通常は病原性のない感染因子の活性化感染である日和見感染症が発症し,宿主に重篤な影響を与えるという特異な感染症である.すなわち,個々のウイルスにおけるそれぞれの感染病態の把握が,疾患を理解するうえで非常に大切となる.
 本稿では,ヒトヘルペスウイルス属のなかで,無症状から悪性リンパ腫にいたる多彩な感染形態が注目されるEBウイルス(EBV)感染症を中心に取り上げる.まず,EBVの性状および個体の免疫応答について言及する.次に,その特異な発症形態を理解するためにEBVの関与する代表的疾患を概説する.それらをふまえて,現在どのような検査が行われているのかを紹介する.

トピックス

マンノース結合レクチンの測定と意義

著者: 大石勉 ,   山本英明 ,   山口明

ページ範囲:P.313 - P.316

1.はじめに
 マンノース結合レクチン(mannose bindinglectin;MBL)は肝で産生される血清蛋白である.人口の5~7%にみられるオプソニン欠損症は血清MBLの欠損が原因である1).オプソニン欠損症の血清はイースト(Saccharomyces cereuisiae)と反応させても食細胞のイースト貪食能を充進しない.最近,MBLの構造と機能が次第に明らかになり,簡便な測定法(ELISA法)が普及してきたので疾患との関連や測定の意義について概説する.

橋本脳症―見過ごされている治療可能な疾患

著者: 米田誠 ,   藤井明弘 ,   栗山勝

ページ範囲:P.317 - P.319

1.はじめに
 橋本甲状腺炎は,日常診療で遭遇する機会の多い自己免疫疾患の1つである.抗サイログロブリン抗体(TGAb)や抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)などの抗甲状腺抗体が患者血清で陽性となる.病状の進行とともに甲状腺濾胞細胞が変性・破壊され,本症患者の約1割が甲状腺機能低下症をきたす.甲状腺機能の低下は,新陳代謝の低下によってムコ多糖類の組織間隙への沈着をきたし,いわゆる"粘液水腫"を引き起こす.無治療の患者では,さらに,記銘力低下,精神症状から意識障害まできたすことがあり,粘液水腫脳症として広く知られている.甲状腺刺激ホルモン(TSH)や甲状腺ホルモン(遊離T3,T4)の測定が粘液水腫脳症の診断・治療と経過観察に有用である.
 ところが,橋本慢性甲状腺炎患者のなかには,甲状腺ホルモン値は正常であるにもかかわらず,自己免疫機序によって精神神経症状をきたす一群が存在し,橋本脳症という疾患概念が提唱されている.また,橋本脳症の臨床像は多彩であり,一部は,最近,狂牛病問題で注目されているクロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob dis-ease;CJD)と極めて類似した臨床像を呈する1)

LAMP法―新しい遺伝子増幅技術

著者: 納富継宣

ページ範囲:P.320 - P.323

1.はじめに
 遺伝子検査は既にウイルスや細菌の検出をはじめ,ヒトの遺伝子病の変異検出などに応用されている.遺伝子検査を実施するうえで最も重要なポイントは遺伝子の増幅である.polymerasechain reaction(PCR)法1)は現在最も広く普及している遺伝子増幅法であるが,反応にはサーマルサイクラーが必要であり,また,遺伝子検査に用いる場合,2つの領域の認識で反応を行うので特異性の保証が難しく,信頼性の確保のため,検出には別途プローブ等を用いた検出反応を行わなければならないなど工程数が多い.最近では増幅からブローブを用いた検出までをホモジニアスな系で行える方法もあるが2,3),高価な蛍光標識プローブ試薬ならびに検出装置が必要であり,安価で簡易であることが要求される分野には適していない.また,一定温度で行う遺伝子増幅法もいくつか考案および開発されてきたが4~6),これらの方法は,複数の酵素が必要であり,また特異性,簡易性,操作性においても大きな改善はないことから,PCR法の代替の域を出ていない.そこで,合成されたDNAの3'末端が常にループを形成して次のDNAの合成起点となるようプライマーの設計を工夫し,一定温度かつ,1種類の酵素で反応可能な,診断技術として特に重要視される特異性と増幅効率が高い新規遺伝子増幅法Loopmediated isothermal amplification(LAMP)法を考案した7)

質疑応答 その他

コンピュータを利用した論文のまとめかた

著者: K生 ,   幸村近

ページ範囲:P.324 - P.326

 Q 論文をコンピュータでまとめたいと思っておりますが,それに先立ちMac,Windows98などを用いた図表の作り方,スライド作成・取込みの仕方,インターネット(ネットスケープ)を利用した文献検索の仕方,インターネットを利用した英訳・和訳などを知りたいと思い気す.分かりやすく解説をお願いします.

研究

AIDS患者から分離したMycobacterium haemophilumの細菌学的性状

著者: 鈴木正人 ,   源不二彦 ,   柴田浩子 ,   小柳津直樹 ,   高橋孝 ,   遠藤宗臣 ,   後藤美江子 ,   中村哲也 ,   岩本愛吉

ページ範囲:P.327 - P.330

 われわれは,AIDS患者の皮膚潰瘍からMycobacterium haemophilumを分離した.この菌は小川培地に発育せず血液寒天培地で30℃前後での長期培養によって分離された.同定は,M.haemophilumATCC29548との生化学的性状およびDNAハイブリダイゼーション法で実施した.海外では,免疫不全患者や臓器移植患者から分離されているが,日本においては本例が最初の分離例と思われる.免疫不全患者の皮膚潰瘍部からの検体が塗抹陽性,培養陰性の場合,この菌を含めた抗酸菌の可能性も念頭に置く必要があると考えられた.

資料

迅速血沈測定新装置(長瀬)の基礎的・臨床的評価

著者: 冨永博 ,   風呂田晃 ,   津田泉 ,   巽典之 ,   田渕倫美

ページ範囲:P.331 - P.336

 赤血球沈降速度は炎症マーカーの1つであり,日本では古くより慢性炎症性疾患,リウマチなど膠原病疾患,結核などの診断に用いられている.赤沈は赤血球の濃度や形態,フィブリノゲンやγグロブリンなどの血漿蛋白の影響を受け,疾病におけるそれら影響因子の増減を間接的に表現する.この検査は操作法が非常に簡便で,安価である.しかし,多量の血液を必要とし,測定時間が1,2時間と長く,血液に触れることより感染の危険性があるなどの欠点もある.また赤沈管の垂直固定や,測定温度などの環境因子にも左右される.これらの欠点を是正し,沈降状態をグラフで表現するという新たな機能を検討評価した.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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